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第69話 大 バ ー ゲ ン

今日のツェンタリアさん

「最近こっそり大豆料理を増やしていた成果か、実は膨らんでいます。や り ま し た」


「拳で城を砕こうとするトレイランツ様も、遠く離れた城からでも味方を強化してくるシュタルゼシュタルゼ様、格付け上位の方々は確かに軽々と常識を凌駕してきますね。まあそれでもご主人様が色んな意味で1番なのは間違いないのですがね。もちろん格好良さも!」

●依頼内容「アップルグンド軍を止めてください!」

●依頼主「エアルレーザー国王エアフォルク」

●報酬「200万W」


「メインディッシュが到着したな」


「あ、本当ですね(エアフォルク様が)到着しました」


「……案外早かったじゃねぇか」


「急いで準備したのでしょうね、肩で息をしていますよ」


「それじゃあ始めるか」


「ええ、掃討戦ですね?」


「ほぉ、『この相手』を掃討とは勇ましいねぇ」


「へ?」


「ん?」


 ここで俺は違和感に気づいた。何かおかしいな。先程からツェンタリアとの会話が噛み合っているようで噛み合っていない。俺が後ろを振り向くと……なぜかツェンタリアが明後日の方角を向いている。俺は「何やってんだ!?」と叫びながらツェンタリアを抱えて横っ飛びをする。次の瞬間には俺達が起っていたところを黒炎が通り過ぎていった。


 そのまま俺はバックステップをして一気に後退、先ほどチラっと見えたエアフォルクの数メートル手前まで移動した。ってか来てたのか。


「ど、どういうことですか!?」


 俺の腕の中で理解の追いついていないツェンタリアが戸惑いの声を上げる。俺はその顔を覗き込む。


「それはコッチの台詞だっての、『あの相手』を見て掃討戦なんて言うからやる気満々なのかと思ったらよそ見しやがって」


「ま、まさかご主人様はエアフォルク様が到着したことについて話しているのではなかったのですか?」


「あったり前だ。なんで俺がエアフォルクをメインディッシュにして美味しくご飯をいただかないといけねぇんだよ」


「あ、確かにそうですね」


 俺はちょっと名残惜しそうなツェンタリアを地面に下ろす。そして、先ほど黒炎が飛んできた方に向き直ってバリアを張った。


「エアフォルクを言うなら主賓で……メインディッシュはアイツらだ」


 俺の目線を追ったツェンタリアの表情が固くなる。


「あれは、胃もたれがしそうですね」


「全くだ。空帝カイザール、死霊騎士団ベンジョブに加えて空襲部隊ヴィンドと地上部隊ヴェルグは更に巨大化、メインディッシュどころかフルコースじゃねぇか……そうは思わねぇかエアフォルク?」


 後ろまでカッポカッポと馬で近づいてきたエアフォルクに俺は敵を見据えたまま問いかける。フフッと笑った気配のあと、俺の背中にエアフォルクの返答が帰ってきた。


「ええ、僕1人じゃとても食べきれませんね」


「どうする、お前がやるか?」


 俺は後ろを見てニヤニヤと笑う。


「先輩にお任せしますよ」


 馬を降りたエアフォルクが簡潔かつ爽やかに答える。


「英断だ。今の判断でお前は本当の騎士王になったな」


 俺は満足そうに頷いた。騎士時代のエアフォルクだったらワクワクしながら俺の質問に「はい!」と答えていただろう。しかしエアフォルクは「俺に任せる」と言った。王になって短期間にもかかわらず個人ではなくエアルレーザーという国家の確実な勝利のために状況を判断できるようになったのは立派なもんだ。


「さーて……」


 後輩の成長には報いてやらないとな。俺はジュラム平原を見渡しながら頭のなかで彼我の戦力を分析した後、エアフォルクとツェンタリアを呼び寄せる。


「バリア張り続けるのは疲れるから簡潔に言うぞ。エアフォルクはここで待機して空襲部隊ヴィンドと地上部隊ヴェルグの迎え撃て」


「はい」


「ツェンタリアは俺と来い。とにかく相手の主力の空帝カイザールと死霊騎士団ベンジョブを倒すぞ」


「はい……ですが主力というのならベンジョブ様よりヴィンドやヴェルグの方では?」


 ツェンタリアの質問に俺はニヤリと笑う。ツェンタリアの言っていることは俺が前に教えた格付けのことだ。確かにベンジョブが23位だったのに対して、ヴィンドとヴェルグは15位と19位で格上だった。ほんとよく覚えてるな。


「確かに見た目ではそうなんだがな、よく見てみろ」


 俺がベンジョブの方を指差した。しかし、俺ほどは目が良くない2人が「はぁ……?」と首を傾げている。俺はため息を付いた後「もういい後で説明する」と言ってバリアを解除した。


「…………ッッゥ!!!!!」


 それと同時に空帝カイザールの無言の雄叫びが戦場にこだました。俺の後ろで一般の騎士が「ヒィッ!?」と声を上げる。それを聞いて内心で舌打ちしてバリア(防音機能付き)を張り戻した。……マズいな。兵ってもんは怖がりだ。これで恐怖が伝染していくとエアフォルクの指揮に影響が出ちまう。


「俺に喉を貫かれてから、良い声で鳴くようになったじゃねぇか……面白ぇっ!」


 俺は何事も無かったようにヘッヘッヘと笑いながら右手をスナップして高々と錆びた剣を掲げた。それを見たツェンタリアが首を傾げたあとオズオズと尋ねてくる。


「あのー非常に言いづらいのですが……ご主人様、出す武器間違えていらっしゃいませんか?」


 俺はポーズを取ったまま答える。


「これで良いんだよ。おいエアフォルク。なんか言うことねぇのか?」


「え?」


「『え?』じゃねぇよアホタレ。英断の後は名演説でもぶちあげて怖がってる騎士共を勇気づけてやれ」


「あ、はい」


 そう言ってシンキングタイムに入るエアフォルク。どうやらここでパッと演説が始められるほどは王という立場に慣れていないらしい。俺は剣を掲げて騎士の注目を集めながらエアフォルクを急かす。


「前にいるのは魔王の軍でこっちには騎士王に元勇者がいるんだ。演説をぶつのにこんな簡単な状況はねぇぞー」


「……はい、できました!」


 俺はエアフォルクの声を聞くやいなや空に向かって斬撃を飛ばす。斬撃は黒い雲を突き抜け、そこから日が差し込んだ。以前エアフォルクがやったことと同じだ。一応エアフォルクの顔を立てるため加減して斬撃を小さめにしておく心配りも忘れない。


 そして差し込んだ日はスポットライトのように騎士王エアフォルクを照らした。


 視線誘導された騎士たちは騎士王を見つめ言葉を待っている。


 十分に視線が集まったのを確認した後、エアフォルクが口を開いた。


■依頼内容「アップルグンド軍を止めてください!」

■経過「さて……開戦といこうじゃねぇか!」

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