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第57話 知識による儲けの加速

今日のツェンタリアさん

「ご主人様に『前向き(なツェンタリアはカワイイ結婚したい)』とお褒めの言葉を頂きました! もちろん()内は私が行間を読んで付け足しました!」


「格付け4位のリヒテール様が怪我を負わせるとは、捨て身の敵とは恐ろしいですね……おや? ネットワークに繋がっておらず誰にも操られていないカーカラック達がなぜ捨て身の攻撃をしたのでしょうか? 今度ご主人様に聞いてみましょう」

●依頼内容「ちょっとそこまで調べ物と修行」

●依頼主「俺とツェンタリア」

●報酬「今後の戦いに関わる知識と自己の研鑽」


「前にご主人様から聞いたことがあったのですが、向こうの世界には嘘をついても良い日があるらしいですね?」


「ああ、エイプリルフールのことか?」


 俺は「そういえばそんな行事も合ったなぁ」等と思い出しながらアクビをする。俺とツェンタリアはフェイグファイアのとある場所を目指して道を歩いていた。空は晴れ雲はなく、いい天気にいい陽気だ。


 ズイデンによる魔力の枯渇から復活したシュタルゼ率いるアップルグンド。王族の2人が負傷しているエアルレーザー。怪しい雰囲気の漂い始めたパラディノス。そんな3国と違ってフェイグファイアはのんびりしたもんである。


「んで、エイプリルフールがどうかしたか?」


「好きって言ってください」


「……普通逆じゃないのか?」


 正直ツェンタリアがこの話題を出した時点でこういう話をしてくるだろうという予感はあった。しかし、「好きと言って欲しい」と頼まれるのはちょっと予想していなかった。ここで聞き返す俺も俺だが、ツェンタリアは意に介さずエッヘンと胸を張る。


「いえ間違いではありません。ほら『嘘もつき続ければ真実になる』と言うじゃないですか。これを続けることによってシャイなご主人様に愛の言葉を囁くことへの抵抗を下げてもらうのです」


 ツェンタリアは「さあさあ」と言いながらズズイと身を乗り出してくる。俺は苦笑しながら数秒間何を言うべきか考えた後、ゆっくりと口を開いた。


「普通・中間・そこそこ」


「ご主人様のどっちつかず!」


◆◆◆◆◆◆


「ここが世界図書館ヴェンタルブーボですか?」


「ああ、そうだ」


 俺は「へそを曲げる時間が少ないのはツェンタリアの美点だなぁ」などと考えながら頷いた。俺達の目の前にはクオーレの屋敷にも勝るとも劣らない巨大な建造物が建っている。ただし、ピカピカ光るクオーレの屋敷とは対照的に、こちらの方は白壁に木枠の窓が規則的に並んでおり落ち着いた佇まいである。そして建物の前には程々に手入れされた庭園があり、俺達はそこに立って見上げているのだ。


「そういえばツェンタリアはここに来るのは初めてか」


「はい、前から行ってみたいとは思っていたのですが……たしかこちらにご主人様のお師匠様がいらっしゃるのでしたよね?」


「………………ああ、そちらにいらっしゃるよ」


 そう言って俺がツェンタリアの後ろを指差すのと庭園の中から何者かが飛び出てきてツェンタリアに抱きついたのはほぼ同時だった。体を撫でくりまわされて「ヒャァッ!?」というツェンタリアの嬌声が響き渡る。


「キャー何この子かわいい!」


「ちょ、誰なんですか!? やめっ……!」


 ツェンタリアの放漫の体を揉みしだき始めたのは白衣を纏った一人の女性である。前髪は全て後ろに流してオデコにはサングラスをかけている。


「やめろババア加齢臭が移る」


 俺が突き刺すような声で静止する。すると女性はチラッとコチラを見た後、「やれやれ萎えちまったよ……」とぶつくさ言いながらツェンタリアから離れた。


「なんだい、かわいくない弟子じゃないか」


「若くない師匠久しぶり」


「え? え?」


 ツェンタリアは俺と女性の会話を聞いて混乱している。俺はわざと女性のことを指差して紹介してやった。


「この挙動言動どちらを取っても隙のない不審人物は賢人シュテンゲ。俺の師匠であり俺をこっちの世界に召喚した人物でもある」


「えええええええ!?」


 庭園に今度はツェンタリアの驚きの声が響いた。


◆◆◆◆◆◆


 世界図書館ヴェンタルブーボの一室に通された俺とツェンタリアはシュテンゲから出された紅茶を飲んでいた。


「まさか賢人シュテンゲ様が女性だとは思いませんでした」


「ウッフッフよく言われるわ。前に来たエアルレーザーのお坊ちゃんも言ってたわね」


「あ、そういえばエアフォルクはどうしたんだ?」


 確かエアフォルクは世界図書館ヴェンタルブーボに傷を治しに来ていたはずだ。しかし、庭園からホール、そしてここに来るまでエアフォルクの姿どころか人の気配は感じ取れなかった。


「求められたから癒やしてあげたよ」


 隣のツェンタリアが紅茶を吹き出した。


「薬を渡しただけだろうが。わざと誤解を招くような言い方すんなっての」


 俺はゲホゲホ咳き込んでいるツェンタリアの背中をさすりながらシュテンゲに注意する。シュテンゲはアッハッハと笑った。


「そうだったそうだった。もうすぐエアルレーザー国王になるエアフォルク様の風評被害を撒き散らしちゃいけないね」


「そうだぞ、エアフォルクにはカワイイ想い人がいるんだからビッチババアは図書館で春画でも見て一人で興奮してやがれ」


「……言うようになったじゃないか。自分だって108歳の子を手籠めにしてるくせにさ」


「アンタの歳に比べれば誤差みたいなもんだろうが」


「……あのー、ご主人様が紹介していただいたのですか?」


 言葉こそ丁寧だがツェンタリアが疑いの目でコチラを見ている。俺はもちろん女性の年齢を他人に勝手に教えるなんてことはしないので首を振った。すると向かいに座っているシュテンゲが手をわきわきさせながら口を開く。


「あれだけ撫でくり回せば賢人シュテンゲ様に隠し事なんてできないのさ。もちろん胸のサイズも経験人数0であることもお見通しさね」


 満面の笑みを浮かべているシュテンゲを見てツェンタリアはため息をつく。そして俺にそっと耳打ちをした。


「……ご主人様、この人いろいろと厄介です」


「そりゃ俺の師匠だからな」


 俺もつられてため息を吐いた。ちなみにエアフォルクは薬を飲むとすぐに全快しエアルレーザーに戻っていったらしい。


■依頼内容「ちょっとそこまで調べ物と修行」

■経過「目的の人物と会うことができた」

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