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第55話 踊れバカども

今日のツェンタリアさん

「まだ日も出ていない時期に、急にご主人様が入ってきたので夜這いかと思いました。違って残念です」


「初めてラート様にお会いしました。あのーとても○○歳には見えない若々しさなのですが……え? 私は不思議な生物なので良いんですよ」

●依頼内容①「夫のヴィッツを助けて」

●依頼主「新聞記者ラート」

●報酬「20万W」

●依頼内容②「暴走したカーカラックを排除して欲しい」

●依頼主「パラディノス国王ヴァリスハルト」

●報酬「100万W」


 俺はツェンタリアの背の上で依頼文書を改めて確認している。


「それで、今日の依頼はどういったモノなのですか?」


 俺は叩き起こしたばかりのツェンタリアを少しゆっくり走らせている。急ぐことは重要だが俺達が事故を起こしては元も子もないからな。


「ラートからの依頼は簡単だ。『ヴィッツを見つけ出して無事なところまで連れて行って欲しい』報酬は20万W」


「ヴィッツ様……確か以前ゲルトの本部でお会いした情報屋の方でしたよね?」


「ああ、タイミングの悪いことにエアルレーザーで厩が爆破された件について調べていたらしい」


「なるほど、ですが犯人の特定は難しいでしょうねぇ」


 忍者の仕業だと考えているツェンタリアがウフフと笑う。俺は高くも低くもないテンションで「そうだな」と答えておいた。


「それより意味不明のはヴァリスハルトからの依頼だ」


「おや、リヒテール様では無くヴァリスハルト様の依頼なのですか?」


 首を傾げているツェンタリア。俺も「やっぱりツェンタリアも疑問に思うか」と頷く。普通はリヒテールから『守ってくれ』という依頼が来ても良いようなもんなのだが、俺の手元にある依頼文の差出人欄にはヴァリスハルトと書かれている。


「ヴァリスハルト様からの依頼はどういったモノでしょうか?」


「えーっと……ヴァリスハルトからの依頼はこうだ『カーカラックを止めてくれ。アレは危険すぎる。ネットワークは切断済みだから遠慮無くやるのじゃ!』と殴り書きされている」


「え!? ヴァリスハルト様がカーカラックを止めて欲しいという依頼をしているのですか?」


 依頼の内容を聞いてツェンタリアが素っ頓狂な声を上げる。俺は一々ツェンタリアのリアクションに同意する。


「ああ、例え自分のミスでカーカラックが暴走しても、これ幸いと『リヒテールの王冠とついでに命を取ってくるのじゃ』とかいう依頼を出しかねない『あの』ヴァリスハルトがだ!」


 ツェンタリアは苦笑している。たぶん頭のなかでそう言っているヴァリスハルトが簡単に想像できたんだろうなぁ。


「どういう心境の変化なのでしょうか?」


「さあなぁ、階段から落ちたか隕石が頭にぶち当たったか……どちらにせよ注意しておく必要があるな」


「そうですね。何しろ百戦錬磨のヴァリスハルト様が危険だと断定していらっしゃいますからね」


「ちゃんと空槍ルフトと氷杖リエレンは持ってきてるよな?」


「はい、ご主人様はいつもどおりですか?」


「当然」


 今度は俺が苦笑する番だ。カーカラックに手こずっていたのはネットワークがあったからだ。それが無ければカーカラックなどは精々エアルレーザーの重騎兵並みの戦力である。空帝カイザールの時とは違い鼻くそをほじりながらでも勝てる。


 そうこう言っているうちにエアルレーザーの王都が見えてきた。


◆◆◆◆◆◆


「あちらこちらで煙が上がっていますね」


「貧民の多い東側の方が煙が多く上がってるな……ツェンタリアは西側、俺は東側から攻略するぞ」


「はい」


「カーカラックは4割の力で片っ端から倒していけ。落ち合う場所は王都の真ん中の噴水だ」


「了解しました。良いのですか?」


 ツェンタリアの言葉の意味は「ネットワークを切っているというヴァリスハルトの言葉を信じるのか?」ということである。俺は両手と口角を上げる。


「この状態で嘘をつくようなら……この依頼の後、世界からカーカラックを全滅させるまでさ」


◆◆◆◆◆◆


「ギシャアアアアアッ!」


「これはこれは……カーカラックの皆さんお揃いで」


 俺はトップスピードから跳躍、王都を西から東に一気に飛んで。東側の門の前に着地した。


 そして、王都の様子を見て一安心した。家々の扉は固く閉ざされておりカーカラックは力ずくで押し入ろうとするが、何度も体当たりをしているうちに騎士団に見つかって討ち取られている。


 主力が外に出ているとは言え流石は王都の警備を任されている兵だけあって統率が取れている。対して家に入れずウロウロするカーカラックは数を減らしていくのみだ。


「この様子ならここは安全だな」


 しかしこの辺は貧民街ではなくそこそこの人間が住む場所である。


「それじゃあ俺は騎士様の視界に入っていない貧民街を救いに行きましょうかね」


 そう言って俺は右手をスナップ。錆びた剣を取り出した。そして再びトップスピードにギアを入れ、王都の貧民街の道という道を網羅するべく走り始めた。


◆◆◆◆◆◆


「ギシャァァアッ!?」


 通り魔さながらに、俺は目の前に現れたカーカラックは全て切り刻んでいく。今までのようにタイミングを合わせると言ったようなまどろっこしい事は無しだ。一流の調理人が魚をさばくようにサクサクと倒していく。一応倒したカーカラックと次に倒したカーカラックの強さを比較しているが、現在のところカーカラックが成長している様子はない。よしよし、流石にヴァリスハルトもこの緊急事態で嘘をつくほど外道じゃないか。


「それにしても不在中に王都が荒らされて……今頃エアフォルクは悔しがってんだろうなぁ」


 27体目のカーカラックを細切れにしたところで俺は呟いた。肩を外され精神的に陵辱されたエアフォルクは世界図書館ヴェンタルブーボにて賢人シュテンゲの治療を受けている。賢人シュテンゲは医療に関しても豊富な知識があるので体の傷は治るだろう。しかし、本人に悪気はないのだが口が悪いので、精神は……まあショック療法というのもあるしな。


「おっとヴィッツも探さないとな」


 俺は集中して近場の魔力を探る。……無しっ! 次!


 王都は広く、一度の探索では全ての範囲を確認することはできない。報酬から考えればヴィッツを探すのは後回しでも良いのだが、ラートを敵に回すことによる不利益を考えると得策ではないことは明らかだ。


 そうして俺はカーカラックを倒しつつヴィッツの探索を続け…………見つけられるぬまま王都の真ん中の噴水に到着してしまった。


■依頼内容①「夫のヴィッツを助けて」

■経過「チッ東側にはいなかったか」

■依頼内容②「暴走したカーカラックを排除して欲しい」

■経過「排除自体は難しくないな」

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