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第51話 決戦で動くは兵と金

今日のツェンタリアさん

「シュタルゼ様が逆狼男さんのようになっていますね。ご主人様も1時間くらい欲望に素直になる時間があってもいいと思うのですがね。あ、でも誰彼なく襲うのはマズいですね……ムムム」


「オルデン様っていましたねぇ……うーん……それにしてもなぜアップルグンドのウルカン鉱山にゴーレムがいたのでしょうか?」

●依頼内容「エアルレーザー軍に奇襲を仕掛けよ」

●依頼主「アップルグンド国王シュタルゼ」

●報酬「50万W」


「ご主人様! 誕生日おめでとうございますっ!」


 朝、裸リボンという出で立ちで部屋のドアを開けたツェンタリアが、俺のベッドにダイブしてきた。普通の人間ならツェンタリアのフライングボディプレスをモロにくらったあとイチャイチャタイムに入ってしまうだろう。しかし、俺は寝ぼけていても危険を察知すれば勝手に体が動くように鍛え上げている。


「……なにやってんだ?」


 次第に頭が覚醒してきたので、俺は頭からベッド突き刺さっているツェンタリアに質問を投げかける。この状況から察するに、俺はどうやら飛んできたツェンタリアを投げたらしい。


「いえ、ご主人様の誕生日が『暑くなり始めた時期』だと聞いていたので」


 尻に向かって話すのもマヌケこの上ないので俺はツェンタリアをベッドから引っこ抜く。


「それでなんで裸リボンなんて格好になる必要があるんだ?」


「そりゃあ勿論『私がプレゼント』ですよ!」


「……切っていいか?」


 俺は右手をスナップして死剣アーレを取り出した。しかし、ツェンタリアは死剣アーレを見ても「フッフッフ」と不敵に笑っている。


「甘いですねご主人様、私は既に死剣アーレへの恐怖心の大部分を克服したのです!」


「少しは怖いのか」


「そりゃあまぁ……」


「……そうかい」


 素直に認めたツェンタリアに毒気が抜かれた俺は頭をポリポリと掻く。


「それじゃまあ……貰ってやるから、とりあえずエプロンに着替えて朝食を準備してくれ」


 それを聞いたツェンタリアの表情が明るくなる。そして大きな声で「かしこまりました」と答えたあと階段を転がるように駆け下りていく。俺の「転ぶなよー?」という声は聞こえたかどうか……。


 当然、その日の朝食は手の込んだ豪華なものとなった。………………まあ依頼の内容考えるとこれくらい豪華でもバチは当たらねぇか。


◆◆◆◆◆◆


「カタカタカタ」


「まさかあんたらと一緒に組むことになるとはなぁ」


「カタカタカタ」


「ハッハッハ、意外とエアルレーザーに苦戦してんのか。まぁだから俺が呼ばれてんだろうしな」


 以前俺の言った『今度はあいつらと共闘するかもしれない』という言葉が現実のモノとなって横で笑っている。


 俺は死霊騎士団の長であるベンジョブと肩を並べて森を歩いていた。そして笑っている俺の背中をツェンタリアの声がつつく。


「ご主人様はベンジョブ様の言葉が理解できるのですか?」


 俺が振り返って笑う。


「ある程度はな。ま、高名な騎士同士に細かい言葉のやり取りなんてのはいらねぇもんさ」


 こうやって何だかんで意思の疎通ができるのはベンジョブがズイデンを使っていないためだ。これは『高潔な魂があるからこそのベンジョブである』ことを魔王シュタルゼが理解しているためである。


「それにしてもこの戦争が始まってから随分と頑張ってんじゃねぇか」


「カッカタカッカタ」


「コレが本当の粉骨砕身って面白いこと言うじゃねぇかハッハッハ」


「カタカタカタカタ……」


「完全に理解しているように見えるのですが……」


 納得しかねているツェンタリアの声が後ろから聞こえてきた。俺は前を向いたまま口を開く。


「ツェンタリア、今日の作戦の方も理解してくれたかぁ?」


「え? は、はい、勿論です。なにしろエアフォルク様達との勝負ですからね」


「ああ、ベンジョブは左翼のジュバイの足止め、ツェンタリアは右翼のマルモル・クラニート・パサルトの三人を相手してくれ」


「カタカタカタ?」


「勿論だ。別に倒してしまっても構わねぇぞ」


 そんな事を言っているうちに森の出口が見えてきた。その向こうにはエアルレーザーの水色の旗が揺れている。


◆◆◆◆◆◆


 エアルレーザー軍は鮮緑の竜ナトゥーアの活躍によってジュラム平原から退いた。そして今は食人植物を警戒しているのか少し高い岩場に陣を張っている。


 ここでシュタルゼが空帝カイザールを召喚して追撃していれば、この戦争はアップルグンドの勝利で終わっただろう。しかし、カイザールは俺に重症を負わされており追撃することは出来なかった。


 シュタルゼは「ならば」と別の強力な魔物を召喚しようとしたのだが、元々限界を超えていた体に更に負荷をかけてしまったためついに倒れてしまった。召喚している側の魔力が無くなれば召喚されている側はこの世界から消える。


 そんな事態を見逃すエアフォルクではない。すぐに総攻勢を仕掛けるべく準備をし始めた。


 そこにカウンターで奇襲をかけて欲しいというのが今日の依頼である。


「良い作戦ですね」


 ツェンタリアの言葉に俺も頷く。


「あぁ、エアフォルクもまさかアップルグンド側から奇襲を仕掛けてくるとは思わないだろうよ」


 しかも、その奇襲部隊の編成がツェンタリアにベンジョブに俺である。人数こそ少ない(ベンジョブもガイコツの数が30程度に減っている)が充分に打撃を与えることができる戦力だ。


 ……いや、もちろん俺が本気で戦えばエアルレーザー軍の被害100%かつこちらの被害0%のパーフェクトゲームにすることも可能だ。


 しかし、そんな事をすればエアルレーザーに残る戦力はリヒテールだけとなりアップルグンドの勝ちが確定するだろう。まあそもそもそんな依頼受けてねぇし、受けねぇけどな。


「天気は、そろそろ一雨来るか?」


 俺は空を見上げる。曇天が常のアップルグンドだが、本日はいつも以上に雲が厚い。もう少し待てば雨が降るだろう。


 ツェンタリアとベンジョブには俺が仕掛けるまで動くなと言い含めてある。俺は雨に紛れて奇襲を仕掛ける算段を始めたのだが……そうは問屋が卸さなかった。


「……チッ、さすがエアフォルクだぜ。そんな状況にはさせちゃくれないか」


 俺は陣地の様子を見て舌打ちをする。エアフォルクが陣の真正面に立ち集中、そして危剣フォルコンを空に向かって振ったのである。


 雲が裂け、エアルレーザー軍の陣地にに太陽の光が降り注ぐ。それを見た兵士たちが歓声を上げている。エアフォルクは危険な天気の回避と士気の口上を一挙に行ったのだ。


 俺は頭を掻いて呟いた。


「しゃあねぇ、普通に奇襲するか」


 不確定要素の多い天気を当てにする策が使えなくなったからといって落ち込むのはアホのすることだ。っというわけで俺は俺の肉体のみを頼るシンプルかつ確実な策を取ることにした。


 つまり、力押しである。


■依頼内容「エアルレーザー軍に奇襲を仕掛けよ」

■経過「ああ、仕掛けるぞ」

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