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第40話 覚えのない貸しはもはや瑕疵

今日のツェンタリアさん

「フッフッフご主人様は私が普通の文章をさっちゃんに送ったと思っているのでしょうが私の作ったプリンのように甘いですね。あれは古来より伝わる暗号、縦読みです!」


「失礼かもしれませんがご主人様が金銭計算や情報整理等の細かい作業が得意というのは結構意外ですよね。それだけでなく、相手の戦力分析も伸びしろを考えた上で計算していくので戦闘で狼狽えることもないですし、本当に頼もしくてカッコいいと思います」

●依頼内容「格付けの続きと当分の食料の確保」

●依頼主「ツェンタリア」

●報酬「-必要経費」


「これがご主人様の格付けですか?」


「あぁ、とりあえずツェンタリア含めた25位までが載ってるぞ」


 朝食の後、俺がツェンタリアに渡したリストには、この世界で俺が実力を知っている人物並びに団体の名前と順位が書かれている。1位から5位については以前紹介したので今回は6位から25位までだ。ちなみに、今日も引き続き傭兵業はお休みである。


 6位聖王ヴァリスハルト

 7位海竜王

 8位ノイ

 9位バンドゥンデン

 10位ジーンバーン

 11位賢人シュテンゲ

 12位雪の巨人ジュネール

 13位味方喰らいのゲッツェライ

 14位ツェンタリア

 15位空襲部隊ヴィンド

 16位フリーレン

 17位メイサ

 18位フロライン

 19位地上部隊ヴェルグ

 20位森の守り主

 21位海戦部隊ヴェレイグ

 22位三馬鹿

 23位死霊騎士団ベンジョブ

 24位ジュバイ

 25位カーカラック


「何か質問あるか?」


 ツェンタリアは「うーん」と唸った後、俺に真面目な顔で質問してくる。


「賢人シュテンゲ様というのは、確かご主人様が来てすぐの時に世界図書館ヴェンタルブーボで脅威の詰め込み教育を行った方でしたよね?」


「ああ、今でもその時の事を夢に見るぜ」


「ご主人様の夢に出れるなんてなんて羨まし……あ、いえ、強いのですか?」


「強いというかエグいな。何しろ世界中の書物を集めた図書館の本すべてを暗記していて知識は世界に並ぶものなし。敵の弱点を突くのは朝飯前で魔力も充分に高いからツェンタリアも含めた12位から16位の明確な弱点がある奴よりは上にした」


 俺の説明を聞いてツェンタリアは「なるほど」と納得したようだ。その後「弱点克服も課題の一つですね……」と呟き、もう一つ質問を投げかけてきた。


「それとフロラインさんの順位なのですが、随分と高いような気がするのですが?」


「ああそれな」


 フロラインの順位ついては確かにツェンタリアが疑問を持つだろうと思っていた。しかし、当然俺がしっかりと調べた結果の順位である。


「地震が頻発していた時期があったろ?」


「えぇっと確か度重なる地震によってご主人様の秘密の倉庫がゴチャゴチャになっていた頃ですね?」


 ツェンタリアが言っているのはアップルグンドのグリッペ洞窟に隠れていたカーカラック達を大量の水を使って押しつぶして『グリッペトンネル』にした頃のことである。


「その原因がフロラインだ」


「えぇ!?」


「そのちょっと前にフェイグファイアのネルン村の警備が手薄になってた時期があって、エアルレーザーの危機察知能力が希薄な騎士に襲われたことがあったろ?」


「はい、フェイグファイアの王都で特別な任務に人員が割かれていたとか」


「後で聞いたんだがその時『ノイの嫁決定トーナメントの開会式』をやっていたらしい」


「なるほど、それは確かに重要な任務ですね」


 口では「重要な任務ですね」などと言っているがツェンタリアは苦笑している。まあ俺もノイから聞いた時は笑った。


「んでフロラインが圧倒的なパワーで、蜘蛛女だの龍の化身だのを次々破って優勝。ここまではいい。問題はそのあとだ」


「何かあったのですか?」


「ノイがフロラインにノリノリで勝負を挑んだ」


「えぇー……」


 このあたりは好戦的な竜人の性なのだろう。ジーンバーンほど極端でもないが、ノイもしっかりその特性は受け継いでいるようである。


「ただし風弓グリュンリヒトが封印して素手ゴロの勝負だったらしい。その時の衝撃波が地面を揺らしてたってわけだ」


「なんというか、スケールが大きい話ですね」


「まあそれでお互いの腕を認め合いラブラブになったんだから良いんじゃねえの? トレイランツも大絶賛だったらしいしな」


「い、色んな愛の育み方があるものなのですね……」


 その後、『三馬鹿が結構上の方にいる』等々話し合ったところでお昼の時間になったので、格付けについての話はそれで終了とした。


◆◆◆◆◆◆


 昼食を終えた俺とツェンタリアは膨大な荷物を抱えてブリッツ村の市場を歩いている。


「戦争中でもブリッツ村の市場は盛況だな」


「それはそうですよ。何しろ世界で一番安全な市場ですからね」


「そうなのか?」


「『そうなのか?』って……ご主人様のおかげなんですよ?」


 ツェンタリアがキョトンとした顔でコチラを見ている。それを聞いて俺は「?」と首を傾げた。どう記憶を辿っても俺がブリッツ村に貢献したという記憶が思い出せないのだが……とりあえず「なんでだ?」とツェンタリアに説明を求めた。


「それはですね、ここがご主人様の家の近くだからですよ」


 ツェンタリアの言葉で俺はだいたいの事情を推察した。


「あーつまり俺がブリッツ村に住んでいるから各国の王が遠慮してここでは戦いを避けてるってことか?」


「おおまかに言うとそうですね。近くにご主人様名義の干物工場もありますし」


「どおりで市場の人が皆優しいと思ったぜ」


 先ほどから、俺たちは買い物をする際にWを払っていない。というか払おうとする度に「いいんだよ!」「お二人からお代は受け取れません」と断られていた。


「小麦粉のお礼か、ツェンタリアがメッチャ慕われてるのかと思ったぜ」


「まあ良くはしてもらってますけどね」


「だが、買い物ってのは品物を貰う代わりに対価を払う契約だ。傭兵を生業にする身としては『はいそうですかありがとうございます』って訳にもいかねぇよなぁ」


「先ほども結構粘りましたが受け流されましたよね?」


「……しょうがねぇなぁ」


 そう言って俺はツェンタリアに「ちょっと持っててくれ」と荷物を渡す。


「実力行使ですね?」


「あぁ」


 そして右手をスナップ。先ほどの買い物の代金を握りしめた後、トップスピードにギアを入れた。静かに高速で動くのは結構コツがいる。それも人に見えないレベルの速度で動くのは至難の業だ……俺以外ならな。


「おかえりなさいませご主人様」


「おうただいま」


 俺が消えていたのは瞬き程の時間だったのだが、ツェンタリアには俺が先ほど買い物してきた店の全てにお金を置いてくる姿が見えていたのだろう。預けていた荷物を俺に渡してくる。その後ふと思いついたように口を開く。


「ご主人様の行いは悪いことではないと思うのですが、店じまいする時に計算が合わなくなったりしないのでしょうか?」


「大丈夫だ。今の間にちゃんとメモも書いてきた」


「え……?」


 こともなげに言ってのける俺を見て、そこまでは目で追えていなかったのかツェンタリアが絶句していた。


■依頼内容「格付けの続きと当分の食料の確保」

■結果「充分な食料を確保、そして借りを精算しておいた」

■報酬「-1万W」

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40話になりました、皆さんの応援のおかげです。ありがとうございます。

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