第39話 情報を集める金持ち、捨てる貧乏人
今日のツェンタリアさん
「ご主人様には迷惑をお掛けしました。ですがうら若き乙女の体重をいきなり言い当てようとするのはダメだと思います。しかもかなり近い数字で! こういう時は年齢と同じく微妙に下の数字を言うのがモテる男性の条件……あ、いえご主人様は私にだけモテればいいので、私以外の女性には常に「100kg?」と訊ねてください」
「またバンドゥンデンですか……なんというかジーンバーンと同じ臭いがしますね。なんというかこう、一部の方が好きそうな感じというか」
●依頼内容「現在に至るまでの情報整理と今後の予想」
●依頼主「俺」
●報酬「未来の利益」
「おや、依頼文書を確認しないのですか?」
意外そうな顔をしているツェンタリアに俺は顔を向けずに答える。
「あぁ、今日と明日は情報整理の日だからな」
朝食を終わり食器が片付けられたテーブルで、俺は大きな世界地図を広げている。その地図には今までの依頼の内容並びに世界情勢を書き加えられていた。俺はブツブツと電卓を叩く。
「えーっとまず今までの合計報酬が214万Wで……意外だなアップルグンドよりエアルレーザーを相手にしてる事のほうが多いのか。それで味方した回数もエアルレーザーが1位……と」
「整理してみないとわからない事もあるのですね」
「あぁ、こうしてみると依頼の場所が段々と各国の首都に近づいてるのがよくわかるな。他に各国の主な状況をまとめるとこんな感じか。①アップルグンド、1番のドル箱。②エアルレーザー、ジワジワと国土を拡大中。③パラディノス、大体カーカラックのせい。④フェイグファイア、味方した回数6に対して相手にした回数3と俺が最も肩入れしている国」
「こうして見ると、もう少しアップルグンドの依頼を受けても良いような気がしますね」
ツェンタリアは稼ぐという観点からそう分析した。確かにツェンタリアの言うとおりシュタルゼは金払いが良い。しかしそうは行かない理由がある。
「いや、パワーバランスを考えるとこんなもんだろ。あんまりアップルグンドに肩入れし過ぎるとすぐにアップルグンドの勝利で戦争が終わっちまう」
今後の利益を考えるとなるべく戦争は長引かせたほうがいいことは明らかである。その点から考えるとそうそうアップルグンドにだけ肩入れはしにくい。
「ちなみにご主人様はどの程度貯金したいとお考えなのですか?」
「うーん、このままだと1億Wは必要だな」
「えぇ!?」
膨大な金額にツェンタリアが驚きの声を上げる。まあそりゃそうだ。1億Wあったらそこそこ大きな島が買える。だが俺にはそれが必要なのだ。
◆◆◆◆◆◆
「さて次はこれだ」
現状の戦況分析を終えて、昼食も食べ終えた俺は懐から紙を7枚取り出す。それを見たツェンタリアが「今度は何をするのですか?」と訪ねてくる。
「外交みたいなもんだな」
そう言いながら俺は筆をサラサラと走らせる。まずはアップルグンドの魔王シュタルゼ宛の手紙だ。
「シュタルゼ様にはどういった内容のお手紙をお送りするのですか?」
ツェンタリアは少し考えた後「もっとお金よこせとかですか?」とポンを手を叩く。俺は苦笑しながら答える。
「こういうもんは別に大したことを書くもんじゃねぇのさ。『おいしい食事ありがとうございました』とか『楽しいお話ありがとうございました』とかを書くもんだ。むしろビジネスの事を書いたりするのはNGに近い」
「なるほど、ということはこの場合は以前魔王の間で開催されたパーティーのお礼でしょうか?」
「そうだな……ついでにツレが酔っ払って迷惑かけましたとでも書いておくか」
「えぇー……」
困惑しているツェンタリアに俺は笑って紙を一枚渡す。
「ハッハッハ、(半分は)冗談だ。ほれツェンタリアも友達に何か書くか?」
「あ、そうですね。さっちゃんにご主人様が私の淫夢を見る枕でも送ってもらえるように頼んでみましょう」
「やっぱり紙返してもらっていいか?」
そんなこんなで俺は4国の王に手紙を書いた。ちなみに内容としては以下のとおりである。①アップルグンド、パーティーのお礼。②エアルレーザー、リヒテールではなくエアフォルクにまた修練しましょうと送った。③パラディノス、正直迷ったがカーカラックの強さを褒めた。④フェイグファイア、ノイとフロラインへのお祝いを包んだ。
「おや、残り2枚はどうするのですか?」
4国の王とさっちゃん宛ての飛行機を窓から飛ばしたあと、テーブルに残った2枚の紙を不思議そうに見るツェンタリア。
「まず1枚は個人での最大顧客に送るのさ」
「なるほど、クオーレ様ですね?」
「ああ、干物工場を買わされたりと痛い目に遭わされてもいるが儲けさせては貰ってるからな」
っというか干物工場の利益が凄い。経営はネイドアと愉快な仲間たちに任せきっているのだが、俺の個人的な好みで作ってもらったスルメイカが保存食として大ヒット、特に各国の軍から注文が殺到して目の回るような忙しさらしい。まあ出た利益は全て工場用のプール金にしてあるので俺の利益にはなっていないんだがな。
「おや、では最後の1枚はどちらへ……新聞社ですか?」
「いやそんなことをしてしまえば高潔な新聞社の皆様方は嫌がるからな」
「えーとではあとは……」
「これはただの嫌がらせだ」
考えこむツェンタリアをよそに俺は悪い笑みをこぼしながら紙に文章を書き込んでいく。内容は以下のとおりだ。
『これは、不幸の手紙です。この手紙を8人に送らないとあなたには、想像を絶する不幸が訪れることになります。昔この手紙を止めた人物が、原因不明の死を遂げました。他にも同様の現象が生じています。なのでこの手紙を止めないでいただきたいとおもいます。最後になりますが、あなたに不幸が訪れないことを、心よりお祈り申し上げます』
そして宛先に『ジーンバーン様へ』と書いたあと飛行機の形に折って空に飛ばした。
◆◆◆◆◆◆
「さて、もう一頑張りするか!」
夕食を終えてフロも入った後、再び俺は世界地図をテーブルに広げる。
「現状を分析して外交をして、あとは何をなさるんですか?」
「今までのは時間軸で言えば過去から現在までの話だったが、これから考えるのは現在から未来に向けての話だな」
「えーとつまり現況から各国の未来の動きを予測するわけですね?」
「その通り、特に重要なのは各陣営が今後どういった伸びしろを備えているかだな。まずはアップグルンドとからいってみるか」
「魔王シュタルゼ様のワンマンのように見えますが主力3部隊の実力も高いですよね」
「ああ、これで更にスイデンの出力が2倍になったってんだから手がつけらんねぇな。あんまり考えたくねぇが伸びしろとしては今回の戦争ではまだ使っていないシュタルゼの召喚術があるか」
俺はため息をつく。
「そんなアップルグンドの対抗馬としてはエアルレーザーが本命でしょうか?」
「まあそうなるな。ここはとにかく剣王リヒテールとエアフォルクの親子が強い」
「ご主人様の格付けで言う4位と5位ですね」
「まあ単体の戦闘力ではそうだが指揮能力も考えると結構な脅威だぞ。それに三馬鹿もアップルグンドの主力部隊に負けず劣らずで、使い勝手の良いジュバイもいるからな。そして伸びしろの話なんだが……エアルレーザーは戦力面では成熟しててあんま無いんだが、あえて伸びしろを上げるとすればエアフォルクの成長だな」
「先日おっしゃっていた常に最適解を目指してしまう思考回路の話ですね?」
「あぁ、それが戦い方や用兵の幅を狭くしてるからちょっと心配なところだな」
「次は……パラディノスですね」
「ここは意味わからん。あれだけ損害出してもカーカラックを使い続けてるからな」
「そうですね。よく操縦不能になっているようですし」
ツェンタリアの言うとおり、最近良く新聞にカーカラックが暴走したという記事が載っている。その度に結構なお金がパラディノスから飛んでいっているらしいのだが……
「まあ伸びしろという点では一番可能性が高いか。カーカラックの成長限界がどの程度か不明だし更に何か隠し能力もあるみたいだからな。ただ現段階じゃ正確な予想が難しすぎる」
「最後はフェイグファイアですね」
「個人では魔王シュタルゼに対抗しうる竜王トレイランツがいるが、ノイが若すぎてエアフォルクほどは活躍できてないんだよなぁ」
「ノイ様とフロラインさんとの婚約によって国内の結束は強くなりましたがどうなるかというところですね」
「まあ伸びしろはそこそこあるか」
◆◆◆◆◆◆
「だあっしゃぁー終わったぁー」
その他、いま来ている依頼の選定等を終えた俺はテーブルに突っ伏す。
するとスッと俺の前にプリンが差し出された。顔を上げるとツェンタリアが微笑んでいる。
「今日一日お疲れ様ですご主人様」
「いつの間に」
「おや、昼食と一緒に作っていたんですよ?」
「あ、そうなのか……そういえば甘い匂いがしていた……ような?」
集中して作業していたためか全然気づかなかった。俺は照れ隠しにおどける。
「ありがとうお母さん!」
「違いますお嫁さんです!」
■依頼内容「現在に至るまでの情報整理と今後の予想」
■結果「とりあえず情報整理・外交・今後の戦況予測を立てた」
■報酬「未来の利益が上がると良いなぁ」
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