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第17話 金儲けは爆発だ

今日のツェンタリアさん

「ジャージというのは良いものですね。ご主人様も『イメクラみたい』と褒めてくださいました! イメクラ? なんでしょうねエロイ単語のような気はするのですが。きっとクラクラするくらいイメージ通りとそんな感じなのでしょう! しかし、失敗しました。まさかゲッツェライの糸がカスっていなんて……」


「コッホ村の料理学校では食戟と呼ばれる料理対決が盛んに行われているそうですよ。なにやら美味しい料理を食べると服が破けるとか……私もご主人様の美味しい料理を食べたら真似してみましょうそうしましょう」

●依頼内容「アップルグンドにあるヴルカン鉱山の爆破」

●依頼主「エアルレーザー国王リヒテール」

●報酬「20万W」


「ほれ修理完了」


 そう言って俺はツェンタリアにジャージを投げて渡す。受け取ったツェンタリアはそれをしげしげと見たあとやがて「ああ良かった」と抱きしめた。


 なぜここまでツェンタリアがホッとしているのかといえば2つの理由がある。①ジャージは俺がむこうの世界から持ってきた数少ない物であるということ。②そのジャージの一部がゲッツェライの糸によって溶かされてしまったことをかなり気にしていたのである。


「さってっと、次はジーパンだ」


 俺はそう言って今度はいつも着ているジーパンの修理に取りかかった。こちらもゲッツェライの糸によって少し溶けている。


 ただ、このジーパンは別に向こうの世界から持ってきたものではなく、単純に俺のお気に入りである。


「ジャージはともかくジーパンは少しくらいのほつれなら味になるように思えるのですが?」


「いや、そういうのを上手く着こなせるほど俺はオシャレじゃねえから」


 戦闘のセンスは世界一あると自負している俺だが、服のセンスについてはからっきしだという自覚がある。そもそも高校入るまでユニフォームが普段着だった人間に服のセンスなんて求めてはいけない。それは贅沢ってもんだ。良いじゃないか『足るを知る』ってんだから。


「ですが、クオーレ様のお屋敷に行った時のご主人様は完璧でしたよ? 完全に私にテンプテーションがかかっていましたし」


「そんなの使った覚えねぇよ。それにあの服装は昔リヒテールのオッサンからワンセットでもらった一張羅だ」


「あ、やっぱり若々しいご主人様にはちょっと似合ってなかったかも知れないですね」


「いやそこは誉めてやれよ。いいものはいいんだから」


 ツェンタリアは服を選んだのがリヒテールと聞いたとたん露骨に手のひらを返す。そんなツェンタリアを俺は苦笑しながらいさめた。


◆◆◆◆◆◆


「はてさて、前の依頼は早朝で、今回の依頼は深夜かぁ」


「仕事に定時が無いというのは大変ですね」


「でもまぁたまにはこういうのも良いだろ?」


「そうですね。まるで世界にはご主人様と私しか存在していないような、そんな気になります」


 深夜、俺はアップルグンドの外側の海でボートを漕いでいた。


 アップルグンド特有の曇天のため星は見えない。しかし、その空の下には山があり、その山はまるで星が降り注いだかのように所々に光が灯っている。


「星のふりかけのようですね」


「ということはヴルカン鉱山はご飯か。まぁ確かにアップルグンドの国民を食わせるための重要な鉱山だしなぁ」


 なかなか面白いツェンタリアの表現に俺は乗っかった。


「今回はそれを爆破するのですよね?」


 俺は「あぁ」と頷く。ツェンタリアの言うとおり本日の依頼は星のふりかけがかかっているヴルカン鉱山の爆破である。


「もう少し進んだところに秘密の入江があるからそこから進入。中心部まで進んで爆弾を爆発させるだけの簡単な依頼だな」


「それを簡単と言えるのはご主人様くらいだと思うのですが……」


「そうかもな」


 否定はしない。アップルグンドの魔王シュタルゼもヴルカン鉱山には厳重な警備を敷いている。その厳重な警備をかいくぐっていく必要があるのだ。


 入江に到着した。確かにリヒテールの言うとおり人が一人通れるような穴がある。


「よし、それじゃあ行ってくる」


「お気をつけて」


 ツェンタリアの操縦するボートが入江から離れる。依頼達成後にちょっと離れた場所で落ち合う約束なのだ。


 いつもよりちょっと暗めの格好、濃紺のジーパンに黒いTシャツ(灰色の文字で【カナチュウ】と書かれている)になった俺はヴルカン鉱山の中に侵入した。


◆◆◆◆◆◆


「さて、地図によると、ここから少し登った所が中心部みたいだな」


 ヴルカン鉱山の中はそこかしこに明かりが灯されておりかなり明るい。俺は忍者のように天井に逆さに立って、地図を広げている。


 地図にはご丁寧に中心部への最短かつ見張りの少ないルートが書かれていた。さらに中心部から外に脱出するためのルートも赤線でなぞられている。


「……胡散くせえなぁ」


 俺は苦笑してしまった。なにしろ今回の依頼主はあのリヒテールである。「これを使うのだ」と渡された爆弾は魔王城に俺が攻め込んだ時にかけられていたものと同じである。信頼などという感情は到底浮かんでこない。


「ま、色々調べてみるか」


 リヒテールのことだからどうせ適当な地図だったり見張りの一番多いルートに赤線ひいてんだろ。そう考えつつ俺は天井を歩き始めた。


◆◆◆◆◆◆


「おかしいな……中心部に着いちまったぞ?」


 俺は地図と目の前にある風景を交互に見ながら首を傾げる。地図通りなのである。しかも赤線でなぞられたルートは確かに最短で見張りも少なかったのである。


「リヒテールのオッサン、悪いもんでも食べたんだろうか?」


 まあ疑っても仕方ない。実際に中心部に付いたのだから素直に感謝して依頼を果たしてしまおう。あざーっす。


 俺はヴルカン鉱山中心部に設置されているエネルギーの供給装置に近づいていく。このエネルギー供給装置によってヴルカン鉱山には明かりが灯り空気が巡回しているのだ。


 エネルギー供給装置を見上げた俺は、1つだけマズいことに気づく。エネルギー供給装置には予想していた『クオーレ』ではなく『シッグ』と書かれていたのだ。


「ゲッ!? これシッグ爺さんのとこの機械かよ!?」


 シッグ爺さんとはフェイグファイアに住む商人である。金への嗅覚の優れた経営者タイプのクオーレとは違い優秀な職人で有り、仕事は堅実だと評判が高い。俺も装備品の作成をお願いするため会ったことがあるのだが、まあ非常に昔気質な爺さんである。


「うへぇナンマンダブナンマンダブ」


 俺は念仏を唱えながらエネルギー供給装置を拝む。作品が俺に爆破されたと知ったらブチ切れるんだろうなぁシッグ爺さん……。


「だけどま、仕事だから悪く思うなよ?」


 俺は恐る恐るエネルギー供給装置に爆弾を設置した。


 ビーッビーッ! と警報が鳴り響く。俺はため息を付いた。


「……まあシッグ爺さんが自分の作品をそう簡単に破壊させてくれるわけねぇわな」


 俺は苦笑しながらトップスピードにギアを入れる。そしてガラガラガラガラ! と締まり始めた隔壁を間一髪でくぐり抜けた。


 中心部から外に出ると赤いテールランプが点滅し、ヴルカン鉱山で働いているゴブリン達が避難を始めていた。非常に組織的かつ効率よく避難していくゴブリン達。それを見てしばし俺は感心してしまった。


「シュタルゼは顔は雑だけど、こういう所はしっかりしてるよなぁ」


 俺も天井を走って避難を始める。リヒテールの話だと爆発するまでの時間は3分……だが実際には1分くらいだろう。なにしろリヒテールだ。信用はできない。


 俺は「ゴブリン達に付いて行けば脱出できるかな?」などと考えていたがそう現実は甘くなかった。ゴブリン達は俺がギリギリ通れない大きさの脱出口から次々と脱出していく。


 しゃーない走りだ。俺は再びガラガラと降りてくる隔壁との競争を始めた。


 しばらく走った所で分かれ道に到着した。


「地図によればココを右に行けば最短ルートだが……」


 赤線は右の道に伸びている。しかし、俺は左の道へ進んだ。


 少し走ったところに横穴、海も見える。やっぱりこっちの方が断然早えじゃねえか。リヒテールの奴め、やっぱり最後の最後でやりやがったな!?


「だがこれで脱出、俺の勝ち……だ?」


 俺が穴を抜けたあたりでヴルカン鉱山全体が振動、後ろから爆風が襲ってきた。「……マジかよ」と俺はつぶやく。まだ30秒しか立ってねえぞ? 


◆◆◆◆◆◆


「ご、ご主人様、その格好は!?」


 待ち合わせ場所で待っていたツェンタリアが俺の姿を見て目を丸くする。


「いや大丈夫、燃えたのは服だけだ」


 俺は爆風に飲み込まれそうになった瞬間、右手をスナップし風呂敷を取り出した。その風呂敷で爆風を受け止め、海に飛んだのである。しかし、やはり爆風によっていくらか服は燃えてしまった。


「そ、そうですか良かった。それにしてもなぜご主人様ともあろう方がこのような目に?」


「リヒテールの野郎さ。あの野郎からもらった爆弾が30秒で爆発しやがった」


「さ、30秒ってよく脱出できましたね」


「ほんとギリギリだったぜ」


 そう言いながら俺はギリリっと奥歯を噛み締めた。


◆◆◆◆◆◆


「クオオオオラアアアアア! リヒテエエエエエエル!」


 翌日、エアルレーザーの剣王の間の扉を蹴破って俺は叫んだ。


「な、何だどうしたジーガー!?」


 リヒテールの野郎すっとぼけて驚いた演技をしてやがる。ふざけやがって。


「どうしたもこうたもねえよ、てめぇ30秒で爆発する爆弾渡しやがって! 地図はまだ許すが爆弾については許さねえ! 今すぐ城の屋上から飛び降りるか、さもなくば湖の中を一生の住処にしてやる!」


「ちょ、ちょっと待てジーガー! 地図については確かにミスだったが、爆弾については全く知らぬことだ!」


 慌てて首を振るリヒテール。


「嘘をつくなハゲコラァ! こちとら3分で爆発すると聞いたから早くても1分で爆発すると思って脱出してたら死にかけたんだぞ!」


「爆弾についてこのオレがミスるわけなかろう……しかし、30秒……」


 怒り狂っている俺を見てリヒテールは逆に冷静になったのかしばらく考え込んでいたが、何かを思いついたのか突然声を上げる。


「まさかヴルカン鉱山のエネルギー供給装置はクオーレ製ではなかったのか!?」


「アァン!? シッグ製だよ!」


 俺も怒鳴るように答える。その答えを聞いて「あぁ……」リヒテールが頭を抱えた。そして珍しく本当に申し訳無さそうな顔をしている。それを見て幾分怒りの収まった俺が「どうした?」と尋ねる。


「シッグの道連れシステムだ」


「道連れシステム?」


 聞いたこと無い単語に俺は首を傾げる。


「シッグは自分の作った機械を我が子のように愛している。そのために機械を守る道連れシステムというものを必ず組み込んでいるのだ」


「どういうシステムなんだ……まさか!?」


「ああ、ジーガーの考えている通り……道連れシステムが爆弾を察知するとカウントダウンを二倍に早めるのだ!」


「な、なんだって!!!???」


 そう言って驚いた所でふと俺は考える。ん? 今のリヒテールの話なんかおかしくないか?


「それにしても良かったぞ、ジーガーが生きていて」


 ウンウンと頷いているリヒテールに俺は一言疑問を投げかける。


「おい、道連れシステムで30秒で爆発したっとことは、やっぱり爆発までは1分だったってことだよなぁ?」


「うむ、そうだな……あっ」


「………………」


 その後、俺はリヒテールに報酬倍増かケツ百叩きかを選ばせ、40万Wを手に入れることができた。


■依頼内容「アップルグンドにあるヴルカン鉱山の爆破」

■結果「爆破には成功、更に依頼主の瑕疵を責めて報酬を二倍せしめた」

■報酬「40万W」

ブックマークありがとうございます。にくみになりま……励みになります。

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