第十話の二 聖職者と冒険者
※前半後半に分かれる予定でしたが、ボリュームが大きくなり
今回は中編になりますので、
ヒロトのステータス掲載は次回になります。
ジョブが「村人」の女性は、母さんに背負われて町を歩いたときによく魅了できたが、恵体スキルが100回「採乳」をして上がるかどうかという段階にくると、機会を見て採らせてもらうだけではなかなかスキルは上がらなかった。少しずつ採らせてもらって2ほど恵体を稼いだが、12で打ち止めだ。
もう新規のスキルは取れないかな……と思っていた矢先。生後四ヶ月の頃、新しい出会いがあった。家の近くにある教会のシスターのセーラさんだ。
八人目 セーラ・シフォン ?歳
採乳開始時期 4ヶ月から
採乳回数 週に一回 合計8回
関係:あなたが気になっている
取得スキル:聖職者3 歌唱1
シスターのセーラさんは、彼女の自宅から教会に通うときに俺の家の前を必ず通るので、何度か「魅了」の効果範囲内に入り、それが初めて成功したのが4ヶ月目だった。
魅了が成功した人は家を訪ねてくるケースが多い。レミリア母さんもセーラさんとは知り合いで、それ自体にはなんら問題がなかった。知らない人を魅了して訪問してこられても、「帰ってもらう」という命令ができるので問題はないのだが。
「レミリア様、申し訳ありません。急に訪問などしてしまって」
「いいえ、いいのよ。私もいつも、あなたにはお世話になってるし……週に一度は女神の祝福を受けたパンを食べないと、落ち着かないもの」
セーラさんはずっと「聖職者のずきん」をかぶっていたため、もしかしたら剃髪してたりしないか……と思っていた。そこで彼女に頼んで(命令して)、例によってレミリア母さんが席を外しているあいだに、ずきんを脱いでもらってみたのだが……。
「っ……ふぅ。今日は少し暑いですね……」
ふぁさっ、と広がったのは、白に近いような銀色の髪だった。セーラさんは髪を撫で付けてこちらを見る……こんなきれいな人が、すぐ近くの教会で働いてたなんて。
「……ヒロトさん、赤ちゃんのあなたに教えを諭すことをお許しください。女神はいつでも、私たちを見守っておられます」
(女神……教会で、女神を崇拝してるんだな。俺を転生させた、あの女神のことなのか……?)
セーラさんは女神はこの世界を作ったもので、全ての生命を作り、魔神から世界を守る存在であると教えてくれた。常識的には赤ん坊が理解できるわけがないのだが、セーラさんは至極まじめに語り続ける……うーむ。敬虔な信者って感じがするな。良くも悪くも。
聖職者はどんなスキルの取り方をするんだろう、とふと気になる。そして、ステータスを調べてみると……。
(……えっ?)
◆ステータス◆
名前 セーラ・シフォン
人魚 女性 7歳 レベル12
ジョブ:シスター
ライフ:112/112
マナ :164/164
スキル:
歌唱 100
聖職者 50
白魔術 10
恵体 6
魔術素養 10
母性 30
料理 55
漁師 10
アクションスキル:
祈る(聖職者10)
浄化(聖職者30)
祝福(聖職者50)
治癒魔術レベル1(白魔術10)
授乳(母性20)
子守唄(母性30)
簡易料理(料理10)
料理(料理20)
野営(料理50)
釣り(漁師10)
パッシブスキル:
聖職者装備(聖職者20)
神の慈悲(聖職者40)
回復上昇(白魔術20)
料理効果上昇(料理30)
毒味(料理40)
育成(母性10)
酒に弱い
人間形態
歌うことができない
残りスキルポイント:16
(……に、人魚? どこから見ても人間なのに……しかし、歌唱100……!)
人魚なんて、ゲームには未実装だった種族だ。何か複雑な過去があるようで、歌唱100なのに、歌唱系のスキルが何一つ無い……「歌うことができない」のパッシブのせいか。
(し、しかも……見た目は高校生くらいなのに、実年齢7歳って……)
種族によっては、早く成人の体型に近づくということはあると思うが、さすがに驚きすぎて固まってしまう。ななさい……七歳……!?
「女神は卑しい私にさえも、慈悲をくださるお優しい方……ヒロトさんもぜひ、大きくなったら教会にいらしてください。そのときは神について大いに語りましょう」
人間形態の人魚で、信仰に入れ込んで……いや、敬虔に女神を信じていて、七歳。
この人の謎に触れる時が来るんだろうか……? もしかしたら、水に足を浸したら人魚に戻ったりするんだろうか。
「そして……今日のところは。私からあなたに、心ばかりの施しをいたしましょう……」
「っ……ま、まんま!」
機会を逃してはいけないので、俺は必死に訴える。するとセーラさんは、くすっと顔を赤らめて笑った。
し、しかし……何か、情念みたいなのを感じる。この人、あらゆる意味で只者じゃない……!
「女神よ……飢えた幼子に、この卑しき身から施しを与えること、お許しください……」
◆選択肢ダイアログ◆
・《セーラ》が「採乳」を許可しています。実行しますか? YES/NO
セーラさんが服を留めていた紐を外して、採乳の準備を始める。ほ、施しって……彼女の中ではそういうことになってるのか。「魅了」状態だから、こうなってしまうのはしょうがないんだけど……。
窓から差し込む昼の光を背中に浴びたセーラさんは、まさに聖女そのものだ。フィリアネスさんとはまた違う、完成された少女の美しさの形がここにある。
「さあ、始めましょう。女神がかつて、自らの生み出した子らに恵みを与えたように、私からもあなたに……」
(……結論からいおう。セーラさんは怖い……なんだか怖いぞ……!)
俺はセーラさんに抱っこされたまま、あらわになった均整の取れた柔らかそうな白い胸に、そっと輝く手を伸ばした。
◆ログ◆
・あなたは《セーラ》から「採乳」した。ライフが回復した。
・あなたは聖職者スキルを獲得した!
・《セーラ》はつぶやいた。「ああ……女神よ。罪深き私をお許しください」
セーラさんは俺にエネルギーを与えてくれたあとで、満たされた微笑みを浮かべる。
「……聖職者には、このようなことは許されないのですが。ヒロトさんには、ぜひ私と共に、神に至る道を……」
◆ログ◆
・《レミリア》は扉を開けた。
「ごめんなさいね、洗濯物が残ってたことを忘れてて……あら、ヒロトと遊んでくれてたの?」
セーラさんはいきなりドアが開いても慌てず騒がず、一瞬で服を羽織った。
「はい……なかなかこちらを見てくださらないのですが、レミリア様に似て、類まれな気品を持っていらっしゃいますね」
「私より、リカルドに似てるんじゃないかしら……でも、どちらの特徴も継いでくれると嬉しいわね」
セーラさんは羽織っただけの服の紐をレミリア母さんにばれないように結び直すと、脱いでいたずきんをかぶり直してにっこりと微笑んだ。
……裏表がある人なのかな? まあ、信仰が深いだけで、悪い人ではないようだしな……大きくなってから教会に行くことになるとしても、もうちょっとスキルを取っておきたい。
そんなわけで、俺はセーラさんが教会に通り掛かるたびに、採乳させてくれるようにお願いしてみたのだった。
「私などの施しでよければ、いくらでも……触れていただくだけで良いのですね……」
彼女が毎回長い説教の後に採乳させてくれるのが、俺は徐々にくせになってしまった……こうして信仰にはまっていくのか。いや、そっちに行く気はないんだけど……聖職者スキルは10まで取れなかったし。
九人目 アンナマリー・クルーエル 16歳
採乳開始時期 5ヶ月目
採乳回数 2回
関係:普通
取得スキル:冒険者1
取得アイテム:魔封じのペンダント
もうひとり、一度だけ貴重な採乳の機会があったのが、冒険者のアンナマリーさんだ。彼女はミゼールでクエストを受けに来たのだが、宿を取り忘れて路頭に迷っていたところを、一晩だけうちで宿を貸した。
「す、すみません、ボク、ミゼールには初めて来たので……」
アンナマリーさんは肩にかかるくらいで切りそろえた髪の片側だけを、細い三つ編みに編みこんでいる。鉢巻を巻いていて、装備は全てレザー系で揃え、大容量のバックパックを背負っていた。まさに冒険者という風体だ。装備している武器は槍で、見るからにかなり使い込まれていた。
「いいのよ、困ったときはお互い様だから。お腹がすいてるでしょう? ちょっと待っててちょうだいね」
「あの、ボクにも手伝えることってありますかっ!?」
「ええと……私の息子のヒロトと遊んであげて、と言いたいんだけど。あなたは大丈夫?」
「だ、大丈夫ってなんですか!? ボク、変な趣味とかないですよ!」
「それならいいんだけど……ヒロト、おいたしちゃだめよ」
釘を刺すレミリア母さん。しかし俺が、「冒険者」なんて素敵なジョブを見逃すわけもない。
(……それにしても、今までにないタイプの女の子だな。16歳で冒険者か……どういう事情なんだろう)
考えていると、アンナマリーさんは俺の近くにやってきて、恐る恐る覗きこんできた。大きな瞳に、俺の顔が映し出されている……や、やめてくれ、そんなに見られたら……。
「赤ちゃん……ボクもいつか、子供ができたりするのかな……」
アンナマリーさんは目をそらす俺にも好意的だ。な、なんとか印象を良くしないと……。
「あ、あんあ……あいー」
「えっ……も、もうしゃべれるの? すごいねキミ、ボクの名前がわかるんだね!」
アンナマリーさんは感激している。赤ん坊がしゃべるって、それだけで喜んでもらえる場合が多いんだよな。
◆ログ◆
・「魅了」が発動! 《アンナマリー》は魔封じのペンダントの効果で魅了を防いだ。
・《アンナマリー》は警戒している。
「っ……な、なに……!?」
(うわっ……ま、まさか……俺のパッシブが発動したことに気づいて、警戒してる……!?)
アンナマリーさんは、魅了に対抗する装備を持っている……パーティを組まないと装備が見られないから、こうなるとは読めなかった……!
「はぁ……びっくりした。ときどきこの石、勝手にバチってなるんだよね。ごめんね、驚かせちゃって」
アンナマリーさんが、服の胸元に入れていたペンダントを引っ張りだす。そこには魔石がつけられている……そうか。アンナマリーさんは、これが魅了に抵抗する効果を知らずに装備してるんだ。
彼女が見せてくれてるから、簡単なアイテムの情報はわかる。ここは遠慮せずに見せてもらおう。
◆アイテム◆
名前:魔封じのペンダント
種類:ペンダント
レアリティ:スーパーユニーク
防御力:3
・未鑑定。
・「緑魔石」がはめこまれている。
・「魅了」を少し防ぐ。
(魅了効果を防ぐってわかってるのに、まだ未鑑定……?)
鑑定には三段階あり、「鑑定」「詳細鑑定」「真眼」の三つのスキルに対応している。おそらくこのペンダントの情報を全て知るには、詳細鑑定、あるいは真眼スキルが必要なわけだ。
「そのペンダント、気に入ったみたいだね。キミにあげようか? 今日泊まっていくお礼をしようと思ってたんだ」
「……あー、うー」
「あはは、そっか、まだ難しいことはわかんないよね。これはね、すごくいいものだと思うんだけど、ボクには価値がわからないんだ。でも、持ってればきっといいことがあるよ」
◆選択肢ダイアログ◆
・《アンナマリー》があなたに「魔封じのペンダント」を渡そうとしています。許可しますか? YES/NO
(いきなりスーパーユニークアイテムが手に入るなんて……この人、実はすごくいい人なんじゃ……?)
アンナマリーさんは人懐っこい微笑みを浮かべている。魅了が発動してかなり驚いたはずなのに……いや、俺のしたこととは分からなかったのか。
「ボクはこういうのを探す、トレジャーハンターをしてるんだよ。いくらでも見つかるから、キミに一つあげる」
そこまで言うなら……赤ん坊の俺では役に立てられないけど、いつか、何かに使える時が来るかもしれない。
◆ダイアログ◆
・あなたは「魔封じのペンダント」を手に入れた。所持できないので足元に落ちた。
揺りかごの中にペンダントが落ちる。たぶん、あとでアンナマリーさんが俺にくれたことを説明してくれるだろう。母さんがOKと言ってくれればいいのだが……って。
魅了を防ぐペンダントが外されたってことは……つ、つまり……!
「はぁ、お腹空いちゃったなぁ……すっごくいい匂いがしてる。きっとキミのお母さん、お料理上手なんだね」
母さんの料理スキルは俺が生まれたばかりの頃は10だったが、今では20を超えるところまで上昇している。そうすると「簡易料理」から「料理」にアクションスキルがランクアップするから、作れる内容が飛躍的に増えていた。リカルド父さんも毎日喜んで食べている。
今日はたぶん、肉と野菜の煮込みかな。俺の知っている「ポトフ」によく似ている。パンに関しては町で買ってきたものを、再度焼いてから出す形だ。母さんはパン釜に火を入れる手間を惜しまない――それは、リカルド父さんがいくらでも薪を取ってくるからでもあるが。
しかし、お腹が空いたとはいえ、ポトフの匂いを嗅いでも美味しそうとは思わないんだよな。たまに飲ませてもらう果汁には慣れてきたけど、まだ普通のご飯は食べられそうにない。
「まんま、まんま」
「キミもお腹すいた? まだ赤ちゃんだから、お母さんにおっぱいをもらわないとね。それとも、ボクの指でも吸ってみるとか」
「ばぶー!」
「え? あはは、ごめんごめん。指なんてなめても美味しくないよね」
まあ確かに、これくらいが普通の反応だろう。一発で魅了にかかって、進んで採乳させてくれるなんていうのが特異な例であって……。
◆ログ◆
・「魅了」が発動! 《アンナマリー》は抵抗に失敗、魅了状態になった。
(とか言ってるうちに、来てしまった……!)
「んっ……あ、あれ? おかしいな……ボク、どうしちゃったんだろう……」
さっきの判定から15分経ったから、そろそろかとは思っていた。アンナマリーさんがペンダントを外した時から、内心で期待してしまってはいたけれど。
「……まんま、って言われたからかな? 赤ちゃんにそう言われると、女の人って……こういう気持ちになるものなのかな……」
赤ちゃんの泣き声に反応して、吸わせる前から母乳が出てしまう……というのは、母さんにもあるらしい。でも俺は泣いてるわけではないので、単に赤ん坊に魅了されると、乳を与えたくなるという摂理があるのだ。
(すまない……アンナマリーさん。「冒険者」スキルがないと、俺は歩けるようになっても、ギルドでクエが受けられないんだ……!)
歩けるようになったら速攻でクエストを受けるってこともないが、もう恵体も魔術素養もかなり上がっていて、俺は赤子でありながら、身体を鍛えていない大人より強い。もちろん、身体の大きさなどに比例してダメージも変わるので、赤ん坊の俺が父さんより強くなることはありえないが、低級モンスターならパンチで倒せる。クエストを受注する準備は既にできているのだ。
恵体はすでに12取れているので、ダメージ補正はプラス36……具体的にどれぐらいかというと、ゴブリンのライフが30なので、一発で倒すことができる。赤ん坊のままゴブリンに対峙することはないから、試すことはできないが。ミゼール付近の森のモンスターだと、オーク以外は苦戦せず倒せるはずだ。
とにかく、ギルドに行けるのは早いほうがいい。クエストで手に入る経験値が多いので、ゲームと同じならば、レベル上げにはクエスト受注がもっとも効率がいいからだ。雑魚モンスター討伐、素材の納品なんかでも十分に実入りがある。
なんだかんだと言い訳をしているうちに、既にアンナマリーさんは革鎧の装備を解除し、タンクトップのような形状の肌着をたくし上げようとしているところだった。ぷるん、と勢い良く収まっていたものが飛び出したとき、鎧の上からでは分からなかった発育の良さに思わず固まってしまう。
「そんなにじっと見て……さっきまでよそ見してたのに。ヒロトくん、おっぱい好きなの?」
(……ここまで来ると好きというより、もはやライフワークだ)
◆ログ◆
・あなたは《アンナマリー》から「採乳」した。ライフが回復した。
・「冒険者」スキルが獲得できそうな気がした。
・《アンナマリー》は微笑んでいる。
「すごい……ヒロトくんの手、あったかい。こんなことができるんだね……」
優しく尋ねてくるアンナマリーさん。俺は間髪いれずに次の行動をする――もはや流れるように。
◆選択肢◆
・あなたは《アンナマリー》に依頼をした。
◆ログ◆
・あなたは《アンナマリー》から「採乳」した。ライフが回復した。
・あなたは「冒険者」スキルを獲得した!
もう一度ぺた、とアンナマリーさんの胸に触れる。すると先ほどは、エネルギーが身体に入ってきても確かな形にならなかったのが、二度目では成長したという実感を得られた。
「そんなに気に入っちゃったんだ……男の子って、みんなそうなのかな……?」
(重ね重ねすまない……でも、これでやりとげたぞ……!)
冒険者スキルが1でもあれば、「駆け出し冒険者」扱いでクエストが受けられる。レベル上げの効率を考えると、取れる段階で取っておくのが一番助かる……アンナマリーさんが来てくれて本当に良かった。
「……でも、いっか。ヒロトちゃん、私のこと嫌いじゃないみたいでよかった」
◆ログ◆
・《アンナマリー》の魅了状態が回復した。
(は、早い……こんなに早く回復することがあるのか)
耐性のある人は、魅了にかかっても自然回復する場合がある。しかしこの早さは……おそらくアンナマリーさんの魅了耐性は、モニカさんよりも高い。
そして、彼女には「カリスマ」の効果が発動していない。冒険者であることはスキルが取れたことから間違いないが、彼女がどんなステータスなのかは見えない……かなり気になるけど、それは仕方のないことだ。
服を元に着直したアンナマリーさんは、俺の鼻をちょん、とつついて笑った。
「あんまりおいたしちゃだめだよ? これからは。今日だけは、秘密にしておいてあげる」
(……やっぱり、この人は俺の能力に気づいてる……それでも、魅了にかかってくれたんだ)
ただの少女冒険者だと思っていたが、この人はセーラさんと同じく、何か大きな秘密を持っている……そんな気がした。俺がもう少し大きくなり、冒険者としても経験を積めば、彼女のことが何か分かるだろうか。
「お待たせ、準備できたわよ。アンナマリーさん、配膳を手伝ってもらえる?」
「はいっ、何でもやります!」
「あら、ヒロト……それ、何を持ってるの? ペンダント?」
「これ、お宿の代金の代わりにヒロトちゃんにあげたんです。ぜひもらってください」
「そんな……いいの? こんなに高価そうなものを」
「いいんです、ボク、泊めてもらえて本当に嬉しかったから」
レミリア母さんとアンナマリーさんのやりとりを見ていて、俺は早く喋れるようになりたいという思いを強くしていた。多くの人と話したいなんて、前世の俺なら思うことは無かっただろう……でも。
話さなければ分からないことはたくさんある。セーラさん、アンナマリーさん……彼女たちが何者なのか、関心を持つのは無粋かもしれないが。気になるものは、気になってしまう。
(転生したからには、この世界のことを少しでも多く知りたい……彼女たちはきっと、俺が驚くような世界を知ってるはずだ)
ゲームじゃ滅多にドロップしなかったスーパーユニークアイテムを、惜しみなくくれた少女冒険者。
俺は彼女の正体を、ずっと後になって知ることになる。
※次回は明日更新予定です。




