始まりは霞のように
俺の名は朝霧流次。
しがない高校3年生である。
成績、平均。
運動神経、ほどほど。
部活、サッカー部(補欠)。
特技、空気を読むこと。
趣味は特に無いが、強いて言えば読書か。
どうしようもなく無気力なことを除けば、ごくごく普通の青少年だ。
そんなかんじで受験生、初めが大事な一学期。
長きにわたる戦いの、一応の節目となる期末テスト当日。
………の、はずだったのだが。
「37度、か……」
みごとに夏風邪をひいてしまった。
一人暮らしなりに、体調には気をつかっていたはずだったんだけどなぁ……
「ま、仕方ないか」
どうせ学校には行かなければいけないのだし。
今まで周囲に流されながら生きてきたが、これからも流され続けるには、せめてテストを受けることくらいはしなければならない。
とりあえず受けてさえいれば、今までの流れで平均点はとれるはずだし。
朝食………は、食べられそうにないな。このまま着替えて学校行くか。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
うぅむ……
ふらふらする。
なんか、意識が朦朧とする。
これはちょっと、ヤバいかもしれない。
学校行く前に転ぶかもしれない。
そしてそのまま死ぬかもしれない。
……いや、死ぬは言いすぎか。
まあ、もしそうなっても……
……どうでも、いいか。
バス停が見えてきた。バスにさえ乗れば、とりあえずは大丈夫なはずだ。
そういえば今は何時だっけ。どうでもいいけど。乗り遅れたとしてもなんとかなるよ。たぶん。
「おはよー流次クン。って、どうしたの?顔真っ赤だよ、大丈夫?」
ん?ああ………隣のお姉さんか。
一人暮らしの俺をよく気遣ってくれる、面倒見のいい人だ。
そういえば、いまだにお姉さんの名前知らないな………って、そんなことより、
「いや、ちょっと風邪気味なだけですから……大丈夫ですよ」
ちょっと大丈夫じゃなくなってきたけど。
「ホントに?無理しちゃダメだよ?お姉さんが看病してあげようか?仕事休んで」
「いや、仕事は、行って、ください、よ………」
ヤバい、本格的につらくなってきた。
ああ、駄目だ、倒れる。
あ、ぶつかった。ごめんお姉さん。
ん?……なに……車………?
あ……轢かれ、る……?
………死ぬ……………?
…………し、ぬ……………。
ああ…………
でも………………………
どうでも、いい……………か………………………
感想等、お待ちしております