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奇妙なラブレター  作者: 山本正純
前編 Who is the sender of a love letter?
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金髪碧眼の少女は春上の顔を見ると笑顔になった。

 昼休み。弁当を食べ終わった春上は図書室に向かった。二時限目終了後の休憩時間で謎の少女の身元が二年四組の漆谷梅子であることを江角は春上に教えた。ここは容疑者である彼女に探りを入れたいが、その彼女とは接触しないようにと江角は警告した。

 春上は二時限目終了後の休憩時間に江角が話した言葉を思い出す。

「漆谷梅子さんとは接触しないでください。多くの生徒たちが春上と彼女の会話を聞いていたとしたら、会いに行かない方がいいと思います。今彼女に会いに行けば公式のカップルとして野次馬たちは認知するでしょう。そうなれば今後の捜査に支障が出ます」

 

 江角の言葉を思い出していると、彼は図書室に辿り着いた。

 月守学園の図書室は校舎の外に建てられているため、一度靴を履き替えなくてはならない。

 1000冊を軽く超えるほどの本があるので、図書館という表現の方が正しいかもしれない。そしてこの場所は唯一月守学園の生徒たちが学籍を問わず集まることができる場所だ。もちろん許可証は発行する必要はない。

 この学園に通う年下カップルは、許可証を発行することが煩わしいため、この図書室で会う。

 この日も年下カップルたちが図書室に集まっている。春上は推理小説家二階堂晴男の推理小説を借りに来た。春上はこの小説家の書く小説が好きだ。

 彼は二階堂晴男作品の並ぶ本棚に近づいた。見る所春上が読んだことがない小説が二冊だけ並んでいる。

 春上が本に手を差し伸べようとした時、肩と肩がぶつかった。

「ごめん。本探してて」

 

 春上の肩にぶつかった少女の顔を彼は凝視する。金髪碧眼に肩にかからない程度のロングヘアー。身長は須藤涼風と同じ。歳は春上と同じくらいに見える。この少女は月守学園高等部の制服を着ている。帰国子女の同級生という印象を春上は受けた。

「大丈夫か」

 

 金髪碧眼の少女は春上の顔を見ると笑顔になった。そうして彼女は二階堂晴男の推理小説を手に取る。その少女はこの本の他にも三冊の小説を抱えていた。その三冊はどれもミステリファンなら誰でも知っているような作品ばかりだ。

 

 彼女は四冊の推理小説を抱えると貸出カウンターに向かった。


 本棚に残った最後の二階堂晴男の推理小説を手に取った春上は疑問を抱いた。彼女が借りた推理小説は一か月以内に二時間ドラマとして実写化するものばかりだった。だが春上が今持っている推理小説『紺碧の雨』は映画となり、9月14日に公開される。その作品をなぜあの少女はスルーしたのか。

 そんなことを考えていても無駄だということに春上は気が付いている。もしかしたら映画化される原作本を彼女は買っているとしたら推理は無意味になる。

「どうでもいいことか」


 春上は貸出カウンターで推理小説を一冊だけ借りると高等部の校舎へと戻った。


 その帰り道春上は二年二組の教室の前で学級委員の須藤涼風に出会った。

「探していました。数学の北田先生から伝言です。補講のプリントを増やすから今度の中間テストでは絶対に赤点をとるな」

 須藤から受け取った数学のプリントを見た春上はため息を吐いた。そのプリントには二次方程式の問題が50問ほど書いてある。

「提出期限は聞いていないのか」

「明後日の朝までに提出です」

 この言葉を聞き春上の肩はさらに重くなった。須藤はそんな彼の右肩を叩く。

「大丈夫です。いざとなったら私が・・」

 須藤の言葉を聞き春上は目を点にする。

「いざとなったら須藤さんが助けてくれるということか」

 春上の言葉を聞き須藤は顔を赤くする。

「助けるから」

 そう一言言うと彼女は顔を赤くして教室へと戻って行った。そんな彼女の後ろ姿を見ながら春上は独り言のように呟く。

「ラブレターが届いてからラブコメ展開増えたな」

 

 午後10時。ラブレターの差出人の少女ははさみを手にしている。髪をタオルで覆っている少女の机の上には大量の新聞記事と雑誌に山がある。

(春上博也。今日のお詫びとしてヒントを与えよう)

 差出人の少女は目的の文字を探すため何度も大量に積まれた新聞や雑誌を読む。

 深夜2時。4時間に及ぶ第二のラブレターの制作は終了した。


これで一応メインヒロインは出そろった。というか、須藤涼風の扱いがひどくないか。

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