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奇妙なラブレター  作者: 山本正純
後編 I know it is not a date any more.
31/34

「やっぱり。ラブレターの差出人はあの人かあの人のどちらかです」

江角千穂回。

 午後7時。春上は江角千穂の自宅を訪ねた。彼は江角千穂の自宅に呼び出された。その理由は分からないが、春上は三連休が始まってから彼女に会っていない。それまで春上と江角は最低でも一日一回顔を合わせていた。それが三連休中にないということは、彼女は三連休中にどこかに出かけていたということなのだろうか。

 

 春上は漆谷梅子とのデート時に買ったプレゼントを抱えて彼女がいるリビングに足を踏み入れる。

「江角。三日ぶりだな。三連休はどこかに行っていたのか」

「はい。汐宮勉さんと一緒にラブレター事件の捜査をしていました。とは言っても彼の家に泊まり込みでこれまで届いた3枚の奇妙なラブレターを読んだだけですが」

「それで二泊三日の捜査で分かったことでもあるのか」

「成果は容疑者が三人から二人に絞り込まれたことのみ。汐宮勉さんに指摘されるまで気が付きませんでした。あのラブレターの中に差出人を特定する手がかりが隠されていたなんて」

 何のことなのか。春上は理解できなかった。

「詳しく聞かせろ。残った容疑者は誰と誰なんだ」

「その前に聞かせてくれる。あの3人とのデートの内容を」

 春上は江角に説明した。


 漆谷梅子。私服。デパート。ファッション店。プリクラ。


 テレサ・テリー。コスプレ。映画館。カレー。書店。


 須藤涼風。制服。図書館。勉強。ラーメン屋。

 これらのキーワードを聞いた江角は頬を緩ませた。

「やっぱり。ラブレターの差出人はあの人かあの人のどちらかです」

「だから、一人で納得するな。誰と誰だよ。ラブレターに隠された差出人を特定する証拠っていうのは指紋か」

「いいえ。汐宮勉さんも鑑識技術はありません。それに私が言う証拠が指紋だったら態々容疑者を2人に絞り込んだとは言いません。指紋というのは千差万別。同じ形の人はいませんから、指紋では差出人を特定することはできても、容疑者を2人に絞り込むことはできません。そう。容疑者をさらに絞り込むヒントはルビンの壺。残る容疑者は・・」

 

 春上は江角の推理を聞く。

「分かった。それでこれからどうする」

「明日の早朝、ラブレターの差出人さんをおびき出します。それでどちらがラブレターの差出人なのかが分かるはずです」


 三連休で行ったデート三連戦は決して無駄ではなかった。江角と汐宮の推理の裏付けになったのだから。

 ここで春上は持参した紙袋を江角に渡す。

「江角。悪かったな。ラブレター事件の捜査なんてくだらない事件の捜査を任せて。ありがとう。これは俺からの誕生日プレゼントだ。漆谷梅子と一緒に買ったものだ」

 江角は紙袋を開ける。その中には赤いニット帽が入っていた。

「ありがとう。私の誕生日を覚えていたんだね。珍しい。春上が文房具以外のプレゼントをするなんてさ」

「俺も文房具をプレゼントする予定だったんだけど、漆谷梅子が却下して、これになった」

 

 三連休終了が近い夜。春上と江角は久しぶりの2人きりの時間を楽しく過ごした。


次回奇妙なラブレターの差出人が明らかになります。

謎を解くキーワードはルビンの壺。

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