「謎が多ければ多いほど謎解きは面白くなる」
江角千穂ヒロイン回ですが、ラブコメ展開なし。
謎解きの問題提起をする話のため、つまらない話になっています。
作者がこんなことを言ったらいけないと思いますが、今回は読み飛ばしても構いません。
午後1時30分。春上と江角は月守学園に戻ってきた。春上たちの自宅から月守学園の距離は2キロメートル。自転車なら15分もあれば移動できるだろう。
幸いなのは、許可証を発行する事務局は、自転車小屋から東に200メートル歩いた位置にあることだ。これで態々高等部の校舎に向かう必要がない。
事務局に立ち寄った春上たちは事務局員の女性に許可証発行記録を見せてもらった。
だが本日の午前8時以前に許可証を発行した生徒は誰一人いなかった。
2学期の始業式がある日の午前中に高等部の校舎に潜入する人物はいないだろう。普通は時間に余裕がある午後以降に行くはずである。
一通りの捜査が終わった春上は江角と帰り道を歩いた。自転車を押しながら春上は江角の顔を見る。
「これであのラブレターの差出人は月守学園高等部の人間の中にいることがはっきりしたな」
「はい。ですが本番はこれからです。月守学園高等部の総生徒数は500人。容疑者を女子生徒に限定したとしても250人。まだ容疑者が8分の1程度まで減っただけです。それに月守学園高等部の中にいるのは共犯者の可能性もあります。高等学校内にいる共犯者に頼めば、許可証を発行しなくても春上の下駄箱にあのラブレターを入れることも可能ですから。共犯者がいるとしたら、容疑者を女子生徒には限定できません」
「差出人を特定する手段がないということか」
江角は春上の問いに頷いた。
「はい。そうです。今の段階では単独犯なのか複数犯なのかさえも判断が不可能。差出人はまるで筆跡を隠すように、新聞を切り抜いて文字を並び替えるという形でラブレターを作成しました。なぜ差出人が一見脅迫状のように見えるラブレターを春上に送ったのか。差出人の真意が分からなければ、誰が差出人なのかを特定できないでしょう」
手がかりが少なすぎる。容疑者が多すぎる。今の段階では差出人を特定することは不可能だろう。一応ラブレターに付着した指紋から差出人を特定するという方法もあるが、江角は鑑識作業を遂行する技術がない。
もちろん江角と春上には鑑識の知り合いがいない。ある程度の手がかりを集めることができれば、江角千穂の推理力で差出人を特定することもできる。
悪戯を考慮して様子を見るしかない。これが帰り道で二人が話し合った結論だ。
500人以上の容疑者。単独犯か複数犯は不明。過酷な状況だと江角は思った。
その時江角の脳裏にある男の言葉が浮かんだ。
「謎が多ければ多いほど謎解きは面白くなる」
江角は頬を緩ませると、差出人の正体を暴くため、捜査を全力で行うことを心に誓った。
つまらない第三話を読んでいただきありがとうございます。
ラブコメ展開っていつやるの?明日でしょう。
明日からおもしろくなりますよ。