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セクハラ上司は許さないわよ4

「マジカル戦士ちまき! 悪を見つけ、ただいま参上!」

 呼ばれてもいないのに参上と言い切り、ロッドを構えるちまき。

 戦士といいながらもロッドを持つ姿はどう見ても魔法使いであるが、名乗るのは本人の自由。

「いい年した女がマジカルだってぷ、ぶはははは」

 我慢の限界を越えたのか、山下は椅子から転げ落ち、なおも腹を抱えて笑っていた。

 他の社員達は見てみないふりを決め込み、各々が昼食を楽しんでいる。

 ヤバイ奴には触れるな! という、大人の対応が滲み出ている。

 ヤバイ奴とは、山下、そして、マジカルちまきである。

「悪人め、いつまで笑っているの!」

 マジカルちまきはロッドを振り上げた。

「マジカル・カーペット!」

 マジカルちまきの叫びに応じ、ロッドの水晶が金色に光る。

 その光は山下の転げ回る床を直撃した。瞬間、床が金色に変わった。

「ぐ、ぐわぁぁぁ!」

 山下の笑い声は一瞬で悲鳴に変わった。

 黄金のカーペットのごとく床に敷き詰められた物――それは夥しい数の画鋲だった。

「女性社員の敵! 許しません!」

 駆け寄った正義の戦士は、山下の髪の毛を掴むと、画鋲の床に山下の顔を叩きつけた。

「うう……ああ……」

 頭を上げた山下の顔面の右半分には、無数の画鋲が刺さっていた。

 四つん這いで顔面を押さえ、苦痛に悶える山下。

「敵は怯んだ! チャンス!」

 デスクに置かれたボールペンを掴み、突き出たお尻に力いっぱい突き立てる。

「えい!」

「おう!?」

 ボールペンは吸い込まれるように、山下のお尻の中に姿を消した。

 これを見ても戦士の腕力は凄まじいほどのパワーであることがわかるだろう。

「く、お前、こんなことをして、ただで済むと思うなよ」

 マジカルブーツを掴みながら、凄む山下であるが、その目には涙がにじんでいる。

 敵はもう虫の息だ。

 最後の仕上げに取り掛かるべく、マジカルちまきはロッドを振り上げた。

「マジカルフォーム、オープン!」

 マジカルちまきが叫んだ瞬間、山下のデスクに置かれていた鉛筆削りが巨大化した。

「な、何をする!」

 マジカルちまきは山下を片手で掴み上げると、頭から鉛筆削りの穴へと放り込んだ。

「ぐぅうううぎゃぁぁあああああ――」

 甲高い悲鳴が静かな昼食の一時を支配した。

 それは紛れも無く断末魔の悲鳴だった。

 バリバリという激しい音と共に、赤い削り滓がみるみるボックスに溜まっていく。

 削り滓が増えるにしたがって、悲鳴は徐々に掠れていき、足がびくん、びくんと痙攣を始める。

「えい!」

 マジカルちまきは、かわいらしい気合いと共に、山下を引っこ抜き、それを直立させる。

 山下の腰から上の部位は跡形もなく消えうせ、削り爛れた部分から噴水のように鮮血が吹き出した。

 それは白い天井を真紅に染めるほどの勢いだった。

 このような状況にも関わらず、他の社員達は昼食を楽しんでいる。

 大人の対応を通り越してもはや記憶からの削除をしているのであろう。

 そのような周りには目もくれず、マジカルちまきは最後の仕上げに取り掛かった。

「マジカル・リカバー!」

 山下であったであろう物体に向かってロッドを振ると、ピンク色の柔らかい光が山下の下半身を包み込んだ。

 すると、腰から吹き出す鮮血が何かを形作っていき、一瞬にして山下の上半身は元通り再生された。

「あ、れ? 俺は一体?」

 今までの記憶を探り、そうだと思い出す。

「笹野、愛妻弁当はまだか! それとも俺を飢え死にさせる気か?」

 その言葉にマジカルちまきは笑顔で頷いた。

「悪人のくせに、生意気にもお腹がお空きですか……それなら!」

 山下の首根っこをわしっと掴むと、巨大鉛筆削りの削り滓箱を開く。

 もちろん、その間もかわいらしい笑顔は絶やさない。

「あなたの肉のミンチでもたっぷり召し上がりなさいませ」

 スーツの繊維が混じった、ミンチ状の肉塊――その中に、山下の顔を埋める。

「あなたの腹黒な臓物のお味はいかがかしら?」

 どす黒く染まった臓物の色は、山下の心をそのまま映すかのようだった。

「う、ごおおおお」

 フィニッシュとばかりに、目玉や臓物を山下の口の中に押し込むと、山下は白目を剥き、口から白い泡を吐きだした。

 ボックスの中で昏倒する山下を見定め、マジカルちまきは鉛筆削りに背を向けた。

「成敗……完了!」

 かわいらしくウインクをし、左目の前でブイサインをつくる。

 マジカルちまきの眩しい笑顔と共に、白い八重歯がきらんと光った。


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