セクハラ上司は許さないわよ2
「ちまき、また課長に何か言われたの?」
給湯室でお茶を用意していたところに、ちまきは不意に声をかけられた。
核心をピンポイントに突かれ、驚いた拍子に、危うく急須からお茶が零れそうになる。
一体だれかと、ちまきは声の方に目を向けた。その先に立つのは茶褐色の髪をアップに留め、メイクは少々控えめな美人といった風貌の女性。
ちまきと同期でここに配属された同僚、松下 怜香だ。
彼女とは同じ派遣会社で、仲が良い。
「うん、ちょっと、書類のコピーが遅いって、怒られて」
例の企画のやつだと、粽が付け加えると、怜香は驚いた様子で話し出した。
「それならあたしがさっきコピーをとって、課長に渡したはずだけど……」
「え!?」
ちまきは驚きのあまり、言葉を失っていた。
待ちきれずに怜香にコピーを頼んだようだった。
そもそもコピーの途中でお茶を入れろなんていうのは理不尽の極みに思えた。
「松ちゃんごめん」
そう言いながら、ちまきは自分の仕事を肩代わりしてくれた同僚に頭を下げた。
怜香は苦笑しながらいいのよと答えるが、すぐに真顔になる。
「あいつ、気をつけたほうがいいよ。ちまき……目を付けられているかも」
ちょっと、松ちゃん脅かさないでよといいながらも、ちまきの全身から血の気がひいてくる。
「あいつの性格かなり歪んでいるらしいから。気に入った女性社員がいると、とことん意地悪をするみたいだよ」
「そ、そんなぁー」
彼女の追い撃ちに、今にも泣きそうな悲鳴が出てしまった。