EX トーキング! ~帰り道
並んで帰宅する嗣郎とラテ。
そんな隙間の時間のおはなし、ただそれだけの一幕です。
「しろうさん、しろうさん」
「ん、なんだ」
「このあたりは本当に、“せんしゃ”が多いですよね」
「なにいってんだ、おまえ? ……あぁ、車のことか」
「そうですよ、そうです。超強そうです、怖いんですよぅ」
「おまえな、犬とはいえ、車すら知らんとは。ほんとは山で生活してたんじゃないか?」
「ち、ちがいますよぅ……! 車は知ってますってば。あのやたらとでっかいヤツですよ」
「……はぁ、トラックのことね……おまえはアレが戦車に見えるのな」
「はい……でもせんしゃはもっとやわらかいと聞いていましたよ」
「……そのネタ、古すぎんだよ。というか、なんでそんなどーでもいいことは知ってんだよ」
「えへへ……“ご主人さま”に色々と教えてもらいましたから……」
「天然ぼけに加えて、マイナーネタまで搭載してるとは。とんだ犬っころだ」
◇
◇
「しろうさん、しろうさん!」
「今度はなんだ?」
「なんだかおいしそうなにおいがします、です!」
「そりゃまぁ、どの家も夕飯時だしな」
「“とつげきとなりのばんごはん!”ですね!」
「しねぇよ。いちいちネタが古いって」
「そうですか……あのしゃもじを一度持ってみたかったのですが……」
「ま、今夜は桐谷家の食卓に突撃できるからいいだろ」
「わう! それは楽しみですね!」
「いや、期待はするな。今日の夕飯当番は甘姉だ。どんなバッドサプライズがあるやら」
「でもあまねぇーさんはお店の人ですよ? ミルクの」
「ミルクじゃなくて珈琲の店なんだが。とにかくあの姉は張り切るとろくなことをしない」
「ますます楽しみですよ」
「おまえはなかなか怖いもの知らずだよ。泣き虫のくせしてな」
「あ、あぐぐ……」