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自由って素晴らしい!  作者: ミカンかぜ
第一章【白蛇と黒猫編】
9/9

八話:あと3500年くらい

「さぁ、色々聞きたいことがまだあるけど、一旦この駐屯所から出ようか」


「は、はい」


「それじゃあこっち来て」


 そう言ってジェーンはリスタを窓の前まで手招きする。


「え?出るならあっちじゃ……」


「いやいや、飛んだ方が速いのに、わざわざ歩きや馬車を使うわけないよね?」


「え……」


「ほらほら、ロマちゃんとメアちゃんをちゃ~んと抱きしめておいてね」


「え?え?」


「ほいっ!!」


「きゃぁ~~!!!」


 ジェーンは窓を開け、翼をはためかせる。そして一瞬にしてロマとメアを抱えたリスタを上空まで連れて行った。この町のどの建物よりも高い場所へ、そう思ったときにはもうすでに雲の少し下くらいの位置にいた。


「このまま一気に行くよ~!」


 そういってジェーンはさらに速度を上げる。途中メアのことを落としてしまいそうだったが、何とか抱きしめてそのまま無事に目的地へと着くことができた。


「はぁ…はぁ……ご、ごめんなさい、メア……怖かったですよね」


 地上に降ろされたリスタはまずメアにそう言った。しかし、メアは気にしていないというように首をかしげて鳴いている。


「そ、それで、ここはどこですか?」


 リスタがそう言って目の前に広がる大豪邸を見た。


「ここは帝都にある私の家だよ。私、心器の研究員だけど、一応この国の宮廷魔法師も務めてるからさ。爵位をもらってて、その時に家ももらったの」


「て、帝都……」


 リスタがジェーンに連れられてやってきたところは、どうやらシルディア帝国の帝都だったらしい。さっきまで別の町にいたはず。だが、リスタの体感では大体10分くらいでこの家に着いた。


「あの…さっきの町からここまでの距離ってどれくらいなんでしょうか?」


「ん?う~ん……大体、馬車で2週間くらい?」


 その言葉にリスタは絶句する。馬車で2週間のところを体感10分ほどで移動したとなると、さっきの飛行はかなりの速度となる。


「あ、勘違いしてそうだから言うけど、あんまり飛ぶ時に速度は出してないからね?せいぜい馬が走ったときの2倍くらいの速度。それから転移魔法を使って移動距離を短くしてるだけだからね?」


「な、なるほど……」


 馬の走る2倍の速度もなかなか早いが、そう言う理由があったのか、とリスタは納得する。


「なるほど……あぁ、あともう一つ聞きたいことがありまして……」


「何?」


「私の知識だと、宮廷魔法師が王から賜る爵位は基本的に一世代なはずです……ただ、あなたは……」


「うん。私のことだから、少なくともあと3500年は生きるね」


 悪魔族の、その中の太古の悪魔の寿命の平均は約5000年であり、人間からしたらかなり長寿である。


「まぁ、普通はこんな奴に爵位を与えるなんて馬鹿なことはしないでしょうけど、私は宮廷魔法師で、心器の研究者だからね。不明なことが多い心器の研究に割と貢献してる。まぁ、そっちが認められたのかなぁ?色々心器について私が明らかにしたしね。まぁ、そんなことはどうでもいいの。それよりも、君の部屋に案内しないとね?」


「え?わ、私の部屋、ですか?」


「うん、そうだよ?カルディール君から聞いてない?」


「聞いてないです……」


「あ~、そっか。あの子口数少ないしね。いいよ、説明してあげる。今日から君には私の研究に付き合ってもらう。二個心器を持ってる人で、しかも心獣もいるとなると貴重な研究対象でしかないからね」


「え……」


「あ、でも、研究対象って言っても君は自由に生活してもらっていいよ。君たちもそれでいいかな?」


 ジェーンがロマとメアにそう話しかける。しかし、特に反応はしない。


「うんうん。許可はもらえたみたいだね」


「え?なにも反応してなかったと思いますけど……」


「うん。そうだね」


「?」


「でも、反応しなかったってことは、少なくともあなたの心の根幹には影響しないってことでしょ?」


「なるほど」


「そう言うことだから、今日からよろしくね?さ、今日は心獣ちゃんたちと触れ合えたし、実験への協力は今日はもういいよ。部屋にいったん連れて行ってあげるから、それからは好きにして」


 そう言ってジェーンはリスタを連れて豪邸の中へと入っていく。内装は外から見た時の予想に遠くない見た目をしていた。


「テューネ」


「お呼びでしょうか?」


 ジェーンがどこかにそう呼びかけると、ジェーンの前に一人の女性が現れた。その女性はジェーンの巻かれたような角ではなく、まっすぐな角に、ドラゴンのような羽を持っていた。そして、更に目を引くのは地面に引きずるほどのしっぽだ。


「この子はテューネ。見ての通り竜人で、君のお世話をしてくれる使用人。困ったことがあったらこの子に何か言って。あと、研究に協力してほしい時にこの子に伝言を頼むから」


「わかりました。テューネさん、よろしくお願いしますね」


「ええ、よろしくお願いします」


「それじゃあテューネ。リスタちゃんを部屋に案内してあげて」


「かしこまりました。リスタ様、こちらです」


「じゃあね」


 そうしてリスタはテューネに連れられてある一室へと連れていかれる。そこも予想通りというべきか、かなり豪華な部屋だった。


「今日からここが貴女のお部屋になります。何か用があればわたくしや、他の使用人にお申し付けください」


「わかりました。あっ、それじゃあ一ついいですか?」


「はい?」


* * *


「なるほど、食堂を貸してほしいと言ったのはそう言う理由で……」


「はい。私もこの子たちもちゃんとした食事をとっていませんでしたので」


 今リスタはお風呂に入った後、食堂に来ていた。お風呂に入った理由は、リスタがあの暗い場所で目覚めてから一度もお風呂に入っていなかったからである。あの暗い場所の地面は土、そこに横たわっていたのだからリスタの体にはかなり土がついていた。さらにフローラから逃げるときに心器を顕現していない状態で走ったせいで体力がなく、汗もかなりかいていたからである。その時一緒にメアもお風呂に入れたのだが、メアはかなり嫌がり、一旦あきらめた。ロマのほうはぬるいお湯に大人しく入っていた。メアをどうにかする方法をこれから考えないといけないのかもしれない。

 そして食堂に来た理由はもちろん食事をするためである。ロマやメアの今のお腹の空き具合はわからないが、リスタはかなりおなかが空いているのだ。


「それにしてもおいしいですね」


「それなら料理長も喜ぶと思います」


「テューネさんも食べますか?」


「いいえ。料理長はその種族に合った味付けにしますので、私の口には合いません」


「あぁ、そうなんですね……」


 少し残念そうにしながら食事に戻るリスタ。テューネはただ後ろの方でじっと立っているだけだ。


(なんかずっと待ってもらってるのは罪悪感が……)


 そんなことを思いながらリスタは黙々とご飯を食べる。記憶を失う前の自分がどんなものを食べていたのかは知らないが、こんなにおいしい物は食べていなかったのではないかと直感的に思った。

 そんな時、ロマが食べ終わったのか、リスタの手のそばに寄ってくる。そんなロマを見て、リスタは明日やろうとしていたことを思い出し、テューネに話しかけた。


「明日、冒険者ギルドに行って、できれば依頼をこなしてこようと思っていたんですけど、ジェーンさんの研究はいつになりますか?」


「ジェーン様の活動時間的に、おそらく夕方くらいにはなると思いますが……」


「じゃあ、朝から冒険者ギルドに行くので、お昼に私が返ってこなかったらこの子たちにご飯を上げてください。直接触られるのは苦手らしくて、お皿の上に置いて部屋においてくれるだけでもいいですから」


「かしこまりました」


 ロマとメアから「自分たちも連れていけ」というような視線を感じるが、あまり連れて行きたくはない。最悪メアは連れて行ってもいいかもしれないが、ロマはまだやめておきたい。噂になっているような白蛇だ。何かされることはなくとも、周りの視線が痛いのは想像に難くない。


「ごちそうさまでした。それじゃあ、私はいったん部屋に戻ります。また用があれば呼びますから、テューネさんはやることがあればそっちを優先してもらっていいですよ」


「今は特にありませんが……そうですね、明日冒険者ギルドに行くと言うのでしたら、少し保存食を買っておきましょうか。お昼に帰ってこない可能性がありますので」


 そうしてリスタはジェーンが貸してくれた部屋に戻り、テューネは買い出しに行ったのだった。

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