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自由って素晴らしい!  作者: ミカンかぜ
第一章【白蛇と黒猫編】
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五話:黒猫と黒鎌

「戴冠の…檻?」


「知らないか~……まぁ、まだそんなに派手なことはしてないしね」


 そう言ってフローラは背の高い女性に目を向ける。すると、女性がパッと手を振るうと、あたり一帯が冷気に包まれた。


「さっきの毒。一瞬見えたけど蛇ちゃんが嚙んできたからだよね?だから今だけはちょっと大人しくしてもらおうかな」


 そう言うと、傷だらけの男性がフローラを抑え、背の高い女性がフローラのフードの中に手を突っ込んだ。


「つ、冷たっ!」


「しょうがないよ。蛇ちゃんに大人しくしててもらうため……って、お~、これって、噂の白蛇だ。まぁとりあえずいいや。今は貴女に話があるから」


 フローラがそう言うと、背の高い女性はロマを冷たい手でつかんだまま少し離れる。


「貴女。魔王って知ってる?」


「魔王……あの昔話の、ですか?」


「そう。あの魔王。それを復活させるために存在しているのが戴冠の檻って組織だよ」


「?!」


 魔王とは大昔に実際存在した魔族の王のことである。そもそも魔族とは様々な種族の総称で、心臓に魔力を蓄積する魔石という物を所有している種族を総称して魔族と言っているのである。

 魔族は膨大な魔力と、種族ごとに様々な特徴を持っており、人間よりも生命力が高く、何千年も生きる者もいるくらいだ。そんな魔族だが、ある時その中でもひときわ強い力を持った者が現れた。それが魔王。当時、魔王はその力でほとんどの魔族を従え、人間と対立したのだ。ただ、人間側も黙ってはいない。魔王に従わなかった魔族や、他種族と手を取り合い、魔王を撃ち滅ぼしたのだ。現在では人間も魔族も和解しているが、撃ち滅ぼした当初は魔王のもとについていた魔族への差別はひどい物だったという。


「ねぇ、戴冠の檻に入る?それとも、今ここで死ぬ?」


「そ、それは……」


 魔王が復活してしまえば再び人間と対立してしまう可能性がある。その時はおそらく多くの人間や、対立したその他の種族が死んでしまうことは想像に難くないだろう。


「大丈夫。貴女の働きがよかったら魔王様も認めてくれるかもよ?」


「……」


 冷たい視線がリスタを見据える。選択を間違えれば今すぐに死ぬこの状況。正直リスタとしては死にたくない。だが、ここは首を縦に振るべきではないとリスタの直感が言っている。


(従うのは、理性か、それとも直感か……)


 そんなことを考えながらリスタがちらりとロマのほうを見た時だった。


「ニャー!!!」


 1匹の黒猫が背の高い女性の手をひっかき、次に傷だらけの男性の頬をひっかいた。女性の手をひっかいたおかげで女性はロマを手放し、男性の頬をひっかいたおかげでリスタを拘束する力が緩む。そのスキにリスタは拘束から抜け出し、再び真っ黒い大鎌を振るった。その瞬間またもや影でできた鎖が背の高い女性や傷だらけの男性を拘束する。そしてリスタはロマを連れて一度フローラから距離をとった。


「ロマ!!」


 どうやらロマは先ほどの女性の魔法による冷気によって体が動かしにくくなっているらしい。そんなロマを温めるためにリスタは自らの首にロマを巻いた。


「とりあえずここにいて」


 そうしてリスタは急いでフローラが誘拐した少年の元へと向かっていく。


(首輪……早く外さないと逃げられません…)


「無駄だよ~。その首輪は奴隷用の物。ほら、横のほうに魔方陣があるでしょ?ご主人様の言うことには絶対服従だし、無理やり外そうとすれば爆発する」


 リスタが少年の首輪を外そうとすると、いつの間にかフローラがリスタのすぐそこまで迫っていた。


「っ!」


「わっ、も~、危ないな~」


 とっさにリスタは大鎌を振り、フローラを攻撃しようとするが、それをひらりとフローラはかわしてしまう。


「もうあきらめてよ。ほら、貴女には二択しかない。戴冠の檻に加入するか、今死ぬかの二択」


「……絶体絶命」


「そう!絶体絶命!」


「いいえ、まだです!!」


 リスタはそう言って、()()()()()()()()()()()


「んなっ!?何して……」


 大鎌が少年の身を切り裂くかと思われた。だが、そのフローラの予想は外れる。


「よしっ!」


 少年の身にも首輪にも傷一つない。しかし、先ほどまで首輪にあった魔法陣が消える。そして、魔方陣が消えると同時に少年は気絶した。


(早く逃げましょう!!)


 リスタは気絶している少年を担ぎ全速力で逃げる。いつものようにすぐに体力が尽きることはない。フェレンダリオスの白槍と同様に、シェリルオーラの黒鎌が顕現している間も、いつもより体力が強化されているらしかった。


(どこか人が多い場所へ!早く!)


* * *


 路地裏を抜けてからも人気の最も多い場所までリスタは走り、ひとまず休む。路地裏を抜けたあたりで住民に変な勘違いをされないよう、心器はすでに消していたので今のリスタは今にも死にそうなくらい顔が真っ青である。


「はぁはぁ、ぜぇぜぇ、ぜぇ……つ、つかれ、ました……」


 ローブを着て少年を担ぎ、外で膝と手をついて死にそうになっている人間など、体調の悪い人間と取れるが、同時に不審者とも取れる。そんな状況に陥っているリスタにかかる声があった。


「大丈夫か?」


「は、はぃ?」


 頭に送られる酸素が少ないのか、リスタの耳に入ってきた声は適切にリスタの頭の中で処理されることはない。そのせいでリスタは声をかけてきた人物が何を言っているのか一瞬理解することができなかった。


「大丈夫かと聞いている」


 もう一度リスタにかかる声。しかし、それに返事をするための気力ももう先ほど返事をしたときに尽きてしまった。そうしてリスタは声をかけてきた者に返事をすることもなく、地面に完全に倒れ伏した。

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