四話:ファン
チューラ駆除の依頼を受けた次の日。リスタとレピファは100匹目を駆除するために再び町中を探し回っていた。そしてチューラは案外すぐに見つかった。昨日のような異常なチューラではなかったので簡単に捕まえることはできたのだが、やはり昨日の異常なチューラのことがレピファは気になるようで……
「リスタさん。報酬金をもらった後もう一度昨日のチューラを探してみませんか?」
レピファはリスタにそう言ってきた。
「いいですよ」
リスタはこの後、特にすることもないので快諾する。
「そう言えば、あんまりちゃんと聞いてなかったんですけど、白蛇のロマさんとはどうやって出会ったんですか?」
「え?あ~、そうですね……レピファさんも知っていると思いますけど、2週間前くらいから白蛇が冒険者の間で噂になってるって話は聞いてますよね?」
「はい。というか、リスタさんが冒険者を始める少し前まで白蛇を生け捕りにするという依頼がありましたから。今は別の人がその依頼を受けてしまったようで、もうないですけど……」
「そうだったんですね。まぁ、そんな依頼を受けた人だったのか、そのうわさを聞いた賊だったのかはわかりませんが、それに追われていたロマを助けたんです。そしたらなつかれてしまって」
「そうだったんですね」
「もうさすがに誰にも渡しませんし、冒険者ギルドに持って行ったりもしません。メアと一緒で、私の家族ですから」
いまだにリスタはロマとメアが心獣だということをレピファに言っていない。それはなぜか。理由はジェーンにある。心獣の詳しいことはいまだわかっておらず、「一番先に心獣についての研究成果を発表したいからほかの人間には2匹の正体を隠しておいてほしい」と言われているからだ。
「とまぁ、出会い方はちょっと特殊でした」
「なるほど……メアさんもですか?」
「あ~……この子のほうがもっと特殊で……」
そうしてリスタはメアとの出会いを語る。それからカルディールやジェーンとの出会い。それらすべてを語っていく。もちろんロマとメアが心獣という存在だということは伏せて、だ。
「と、匿名の魔女様?!い、今リスタさんは匿名の魔女様のお屋敷に住んでるんですか?!」
話の途中。ジェーンの家に住んでいるとリスタが言った途端、レピファは目が飛び出そうなほど驚いた。
「わ、私、ファンなんです!宮廷魔導士の中でもあんまり話題に挙がったりはしないんですけど、あの方が使う魔法の中で、”アンノウン”っていうあの方が作り出した魔法があるんですけど、それがすごくてですね。その魔法をかけられた人は、周りから見ると人によって全然違う声と姿になれるんです」
「と、言うと?」
「えっとですね……例えば私にその魔法をかけられたとします。そしたら、リスタさんには私の姿が猫獣人の今の姿が見えていたとしても、他の人からは犬の獣人だったり、人間の姿だったりに見えるってわけです!」
「へぇ~……じゃあもしかしたら私が見ているジェーンさんの姿は、本来の姿じゃないってことですか?」
「もしあの方が自分にアンノウンを使っているのだとしたらそうですね!」
「じゃあ、種族はそもそも悪魔族じゃないってことも……」
「いや、あの魔法でも太古の悪魔という種族はごまかせないよ?」
「そう!太古の悪魔の象徴である角は幻影魔法などのどんな魔法でも消すことはできないんですよ!……って、だ、誰ですか?」
途中、リスタとレピファの会話に2人以外の声が入り、レピファはその人物にそう言った。
「あ、ジェーンさん」
「え゛っ?!」
リスタが声の人物にそう言うと、レピファは妙な声を上げフリーズする。
「よく知ってるね。地味だって言われてあんまり有名じゃないんだけど……って、おーい?猫獣人ちゃーん?ありゃりゃ、意識どっか行っちゃった?」
「あはは……この子、レピファさんっていうんですけど、ジェーンさんのファンみたいで……」
「なるほど。それはちょっとうれしいね。…おーい、レピファちゃーん?戻ってきてー?」
そう言ってジェーンはレピファの肩を揺らす。
「はっ?!ご、ごめんなさい、ジェーン様がいる幻覚を……」
「幻覚じゃないよ?」
「ぴぇっ?!」
「アハハッ!面白ーい!へぇ~、君がリスタちゃんの言ってる子か~」
「は、ははは、はい!レピファ・イータルと申します!えっと、猫の獣人で14歳です!」
「ふふっ、種族までは言わなくてもいいよ」
「ごごご、ごめんなさい!緊張してて……」
「まぁまぁ、ちょっと落ち着きなよ。ほら、深呼吸」
そうしてジェーンはレピファに深呼吸を促し、少し落ち着かせる。だが、憧れている人に会うことができてレピファはまだ興奮しているようだった。
「さてさて、ちょっとリスタちゃんに話したいことがあって……ちょっと休憩しながらでもいいかな?もちろんレピファちゃんも一緒に」
「えっ?!いいんですか?!」
「もちろん。あ、でも先に依頼達成のお金もらってきてもいいよ。全然急ぎじゃないし、冒険者ギルドはそろそろ着くでしょ?」
「そ、そうですね。それじゃあ先に報酬金をもらってきます。リスタさんとジェーン様はここで待っておいてください」
そう言ってレピファは冒険者ギルドの建物の中へ入っていく。その間、ジェーンはリスタ本人のローブを渡した。
「それ着てもらってもいい?」
「? わかりました……」
そうして言われるがまま、リスタはローブを着た。その後、ジェーンが自分の服の裾を少し広げる。すると、そこからロマが顔を出した。
「テューネが今いなくてね、ロマちゃんのことはいったん返しておくよ」
ジェーンがそう言い、ロマがリスタのローブの中に入っていくと同時に、報酬金を持ったレピファが出てきた。
「戻りました。あれ?リスタさんローブ着たんですね」
「ええ。まぁ……」
「うん。それじゃあ行きましょ」
そう言ってジェーンは空中に指で丸を描く。するとそこの空間にゆがみが生じた。
「転移魔法だから通っちゃって」
言われるがままリスタとレピファはその歪みに体を突っ込む。すると、さっきまでいた場所とは違い、おしゃれなお店の前に3人はいた。
「ここのお茶。すごくおいしいんだ。悪魔族の私でもおいしいって思うくらい。店主さんは人間なのにね」
そう言ってジェーンはお店の中に入っていく。それに続き、2人も入る。中はとてもおしゃれで、広い。だが、中にリスタたち以外の人はいない。
「今日は貸し切りにしてるんだ。ここは貴族がよく来る場所だから、「平民は来るな」って思う人もいるからね。それに、盗み聞きの心配も少ないし。ほら、座って座って!今日は奢ってあげるから!」
そう言ってジェーンは2人を椅子に座らせたあと、自分も2人が座ったテーブルに座る。そうしてメニューを3つ取り、2つをリスタとレピファに渡した。
「好きなの選んで。決まったら言ってね」
そうしてジェーンは2人の注文が決まるまで待っているのであった。




