九話:冒険者ギルドへ
リスタがジェーンの家に来て次の日のこと。予定通りリスタは朝、冒険者ギルドに一人で来ていた。結局ロマはともかく、メアも連れてはこなかった。特に理由はないが、少しでもあの二匹に自分以外の誰かと仲良くしてほしかった。というのがあるかもしれない。そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にかリスタは冒険者ギルドについていた。
(よし……)
少し緊張している心臓を抑え、冒険者ギルドへと足を踏み入れた。その中には多くの冒険者がおり、談笑している者や、どの依頼を受けようか見定めている者もいる。そんな者たちを横目に、リスタは受付へと足を運んだ。
「あの~すみません。冒険者として登録したいんですけど……」
「はい、わかりました。それではこちらの書類にサインをお願いします。ここのサインに使われた名前がそのまま登録の名前となります」
そう言われ、数枚の紙を渡される。そこには冒険者としての危険性が書かれていた。しかし、リスタはそれに関しての知識はあったので、自らの名前をサインとして書類に書く。
「書きました」
「ありがとうございます。次にギルドの使い方について説明させていただきます。まず、国によって違うこともございますが、基本的にどの国でも冒険者ギルドは同じ仕様になっております。依頼掲示板から受けたい依頼を受け付けまで持ってきていただいて、期限内にその依頼を達成すれば賞金をこちらから渡すことになります。魔獣討伐の場合はその魔獣の一部。魔獣の素材や薬草などの依頼は依頼品を持ってきていただければ大丈夫です。あとは……冒険者にはランクがありまして、初めはF。次にE、D、C、B、A、Sというランクになっており、Sが最高ランクになっております。そして、依頼にもランクがあるのですが、最大でも2ランク上。つまり、FランクならDランク依頼まで受けることができることになっております。ランクを上げる方法は自分と同じランクの依頼を100回。または1つ上のランクの依頼を20回。または2つ上のランクの依頼を5回達成すると一つランクが上がります。まぁ、1つ上のランクの依頼は同じランクの依頼5回分、2つ上のランクの依頼は20回分と考えた方がいいかもしれません」
そう言ってギルドの受付の人は一枚のカードをリスタの前に差し出した。
「こちらは冒険者だという証。ギルドに入っていると証明する証明書になります。こちらに手をかざしてください」
言われるがままにリスタはそのカードに手をかざす。すると、自らの名前と、ランク、そして登録した日付がそのカードに刻まれた。
「こちらのランクは上がれば勝手に変わりますので、わざわざ変える必要はございません。ただ、なくせばギルドの受付に言ってもらえれば新しい物を用意しますので。さて、ここまでで質問はありますか?」
「大丈夫です」
「わかりました。あっ!あと、誰かと一緒に依頼をこなすのなら、報酬金額の分け方はそちらにお任せしますので」
「はい、ありがとうございます」
「それでは、頑張ってくださいね」
そうして無事にリスタは冒険者へとなることができた。そんなリスタが初めにやる依頼は、薬草集めだ。そのためにリスタは帝都から少し離れた森へと移動する。
(帝都みたいな都会は森が少し遠いのが不便なんですよね……)
そんな風に考えながらリスタは2時間ほど歩き、ようやく目的地へと着くことができた。ジェーンの家がある貴族たちの屋敷がある地域から、冒険者ギルドがある平民たちが住む地域までかなりかかるというのに、さらにそこからかなりの時間を歩かないと森に着かない。そう考えると、ジェーンのような転移魔法を使える人がいないとこの帝都で冒険者などやっていけないのではないのではないかとリスタは思う。
「はぁ……とりあえず薬草は……ありそうですね。目的の量を持って帰りましょうか」
そうして黙々とリスタは薬草を探しては摘み取り、探しては摘み取りを繰り返す。
「こういう時ロマやメアがいてくれたら……いやいや、今回は私一人で来ると決めたんですから……」
時々少しだけ「もしも」の話をつぶやきながら薬草を摘んでいると、少し遠くの方から爆発音が響いた。静かに薬草集めでもしていないとわからないレベルの爆発音だ。
「遠い……魔獣討伐でしょうか?」
何が起きているのかはわからない。わからない。のだが……
(行かないと!)
そうしてリスタは歩き…いや、走り出す。
「フェレンダリオスの白槍!」
真っ白な槍がリスタの手元に現れ、リスタはそれを持ち全速力で森の中を走る。音はどんどんと近くなり、やがて、誰かの声も聞こえてきた。
—グルルルル!!
(魔獣の声!しかも大量に!それに追いかけられてる人影が一人!)
リスタはフェレンダリオスの白槍を構える。リスタが持っている心器では生物自身に物理的な影響を与えることはできない。よって、リスタが大量の魔獣を真正面から相手にできるわけがないのだ。ならばどうするか。選択肢はただ一つ。
(あの人を連れて逃げるしかない!!)
そうしてリスタは魔獣に追いかけられている人影の前に飛び出した。
「うわっ!!」
「逃げますよ!!」
それだけ言ってリスタはその人影の手を取り、逃げる。途中魔獣たちが迫ってきていたが、それに対してリスタは槍を投げつけた。心器は持ち主よりもある程度離れるとそこから消滅し、持ち主の手元に戻ってくるので拾いに行く必要はない。その特性を十分に使い、リスタは魔獣から逃げ回る。途中でリスタが抱えている人物が火属性魔法を使って魔獣に対処しようとしていたが、ほとんど効果はなかった。
(あの魔獣は火属性魔法に耐性がなかったはず……魔法の威力が低い……いや違いますね。向こうが異様に硬い……いや、まぁ、私の知識に誤りがあるだけかもしれませんが……)
これ以上時間はかけられない。しかし、リスタの今の走る速度では魔獣を引きはがすことができないのだ。ならばどうするか。
「魔獣を止めるしかありませんね。……シェリルオーラの黒鎌!」
影が震え、一つの大鎌と、無数の鎖の形を成す。リスタが大鎌を振るうと、無数の鎖は魔獣へと絡みつき、追いかけてきていたすべての魔獣をその場にとらえられる。それを見てリスタは魔獣に襲われていた人物を連れてその場から離脱し、帝都のある方角へと走っていった。
* * *
「ほんっとうに!ありがとうございます!!!これ、お礼です!!」
帝都の入り口辺りまで戻ってきたリスタは、魔獣に襲われていた人物にお金の入った袋を差し出されていた。
「いやいや、いりませんよ!これはあなたのお金ですので」
「い~や!貴女は命の恩人ですから!ぜひとも!」
「いやいや、だから要りませんって!」
「うぅ……じゃあ何か代わりに私が買ってあげますから!」
「いや、それもいいです」
「じゃあ……わ、私をあげます!」
「いや、それはなんか違いません?!」
しばらくそんな言い合いが続き、落ち着いた二人。落ち着いて初めて言葉を発したのはリスタのほうだった。
「名乗ってませんでしたよね。私はリスタ・ノート。あなたは?」
「あ、私は、レピファ・イータルです。よろしくお願いします!」
魔獣に襲われていた人物。もとい、レピファという少女はリスタの目をまっすぐと見て自己紹介をした。




