表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏のアルタイル  作者: さっく
第一章 王立魔術学園編
9/10

第九話

 男子寮の廊下は、夜になると妙に静まり返っていた。

 昼間の喧騒が嘘のように、灯りだけが石壁を淡く照らしている。


 (……広いな)


 ノアは自分に割り当てられた部屋の番号を確認しながら、歩いていた。

 入学してから二日間で、頭に詰め込まれた情報は多すぎる。

 校舎。

 授業。

 実技演習。

 そして――“反応不能”。


 「はぁ……」


 小さく息を吐いた、その時だった。


 ――空気が、冷える。


 足音が一つ。

 それも、こちらに近づいてくる気配。

 不気味な雰囲気を感じ、ノアは立ち止まった。

 すると、先の廊下の曲がり角から出てきたのは、カイロス・フェルディナント・グレイヴだった。


 「やぁ、奇遇だね。ノア・ヴァリオン・リオナス君」


 楽しそうな笑みの奥に、得体の知れないものが滲んでいた。


 「……何の用だ」


 「なに、ただの興味さ」


 カイロスは一歩、こちらへ踏み出した。


 「測定晶は反応不能。なのに実技では、初級とは思えない火球」


 その視線が、鋭くノアを射抜く。


 「君はいったい、何者だ?」


 ノアは答えない。

 答えられるはずもなかった。


 「黙秘、か。まぁいい」


 カイロスの足元で、影が不自然に揺れた。


 「闇属性ってのはね。そういう“隠し事”を暴くのが得意なんだ」


 影が、床を這う。

 その瞬間――

 ノアの胸の奥で、何かが脈打った。


 (……まずい)


 反射的に魔力が流れる。

 ――空気が、震えた。

 魔術陣は出ていない。

 それでも、影は弾かれるように散った。


 「……っ」


 カイロスの表情が、わずかに歪む。


 「今のは……魔術じゃない?」


 その瞬間。


 「そこまでだ、カイロス」


 静かで、よく通る声。

 振り向くと、廊下の奥にレオニスが立っていた。

 夜でも変わらぬ落ち着いた佇まい。


 「寮内での魔術行使は規則違反だ。君の家名でも、見逃されない」


 カイロスは一瞬だけ舌打ちし、すぐに笑顔を作った。


 「冗談ですよ、殿下。ちょっとした確認です」


 ノアを見る。


 「君は一体どんな”隠し事”をしているのか、まぁいいさ。いつか暴いてやる」


 そう言い残し、影と共に去っていった。

 静寂が戻る。


 「……大丈夫か?」


 レオニスが近づいてくる。


 「ああ。問題ない」


 「無理はするな」


 レオニスは短く言って、肩を叩く。


 「君はもう俺の友達だ。困ったら声をかけろ。必ず助けになってやるさ」  


 その言葉に、ノアは少しだけ笑った。


 「最高の友達を持ったな、俺は」


 ふと、ルナの顔が脳裏に浮かぶ。

 今頃、女子寮でどんな部屋にいるのだろうか。


 ――ここでの学園生活は、思っていた以上に厄介なものになりそうだな。


 そして自分は、これからもこんな事件に巻き込まれるのか。

 そんなことを考えながら、自分の部屋へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ