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黄昏のアルタイル  作者: さっく
第一章 王立魔術学園編
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第三話

 「……諸君には日々の努力を怠らず、清く正しい学園生活を送ってくれることを期待する」


 長ったらしい学園の説明や規律などの話が終わり、息つく間もなく新入生代表挨拶が始まった。


 「新入生代表、レオニス・エルヴィス・リュミナ君、前へ」


 「はい」


 静かな講堂に響いた彼の声はとても落ち着いている。


 「新入生代表として、ご挨拶申し上げます。本日、私たちはそれぞれ異なる出自と才能を持って、この王立魔術学園に集いました。ですが、ここに立った今、その違いは意味を持ちません。この学園で学ぶ日々の中で、私たちは力を知り、同時にその重さも知ることになるでしょう。だからこそ互いを尊重し、学び合い、己の未熟さから目を逸らさぬことを誓います。この場に立てたことへの感謝を胸に、学園の名に恥じぬ生徒であるよう努めていきます。以上をもって、新入生代表の挨拶とさせていただきます。」


 大きな拍手と共に深々と礼をした。


___


 入学式が終わり、教室で一人ずつ自己紹介をすることになった。


 「ノアくんはなんて自己紹介するつもりなの?」


 「名前と出身だけ言おうと思ってる」


 「じゃあ私もそうしようかな」


 他になんか気の利いたことでも言ったほうがいいものなのか他の人の自己紹介を聞いていると、気づいたら自分の番になってしまった。


 「初めまして、ノア・ヴァリオン・リオナスです。南東に領地を持つリオナス子爵の次男です。これからよろしく」


 「はい、次は隣の、、」


 すると突然、老教師の声を大きな声が遮った。


 「おいおい、冗談だろう。そんな辺鄙なところに領地を持つ田舎子爵ごときがこの学園に入学できるとは、随分落ちぶれたものだなこの魔術学園は」


 威圧的な態度でそう発言した彼の名前はカイロス・フェルディナント・グレイヴ、侯爵家の嫡男らしい。

 この学園では平民出身の者も少なくはないのに、なぜ俺に難癖をつけてきたのかわからない。さてなんて返したらいいものか。


 「その発言は先の私の発言に反するものだが、覚悟の上での発言なのかな?」

 

 この落ち着いているが少し圧を含んだこの声の主は第二王子、レオニス・エルヴィス・リュミナだ。

 そしてルナも何か言おうと国を開いた瞬間


 「静粛にするのじゃ。」


 この声の主は老教師の名前はエルド・グラニス。かつて名のあるグラニス家に連なる者だったと聞く。だが今は、名よりも知を選んだ人間として有名だ。


 どうやら場を収めてくれたようだ。


 「最後はその隣じゃ」


 そしてルナは静かに席を立った。


 「初めまして、ルナ・ミレーヌと申します。ノアくんと同じく、南東のリオナス領の出身です。これからよろしくお願いします」


 カイロスはルナに対しては何も言わないようだ。


 「よし、では自己紹介も終わったので講義を始まるのじゃ」


___


 「ではこれから魔術適正と魔術による代償について話していくのじゃ。みんな知っているとは思うがおさらいだと思って聞くのじゃぞ。まず初めに魔術適正について説明するとするかのう。六属性の魔術は、火・水・風・土の基本四属性に、光と闇の特殊属性があるのじゃが、光と闇は希少で特別視される。人によって持つ属性の数は異なっており、二属性など複数の属性を持つ者は特別な魔術、融合魔術を使えるのじゃ。一属性持ちの人間はこの王国の7割を占める。そして稀に二属性や三属性の人間が生まれる。つまり融合魔術を扱うのはとても繊細な技術と才能が必要だということじゃぞ。この学園ではニ属性持ちが多い。三属性持ちは数年に一度生まれるかどうかと言ったところじゃのう。自慢じゃないが儂は三属性持ちじゃぞ」


 生徒たちから感嘆の声が上がる。


 三属性持ちの人間は確かに珍しく、尊敬の対象ではあるが魔術の申し子だのもてはやされて面倒くさくなるので属性の数を隠す人もいたそうだ。

 魔術の才能とは、いくつの属性を持つかで測られる。だが、それは祝福であると同時に、選別でもある。


 「では続けて魔術の代償について話していこうかのう。先ほど話した六属性の魔術は魔力と呼ばれる力を消費することによって発動することができる。そして魔術にも初級、中級、上級、高位、超級、神話級の6つの階級の魔術があるのじゃ。この国の宮廷魔術師になるためには高位魔術を使える必要がある。そして最高位宮廷魔術師、つまりこのリュミナ王国最高の魔術師は超級魔術を使えるらしいのう。超級魔術を使うということは人間の域を超えた化け物ということじゃ。莫大な魔力量と制御技術があってこそのものじゃな。そして最後に神話級魔術についてじゃ。現存する文献の中で唯一使っていたとされる人物がおる。誰かわかるものはおるかのう」


 すると第二王子が手を挙げた。


 「ではレオニス君答えてください」


 「はい!」


  はっきりとした声と共に席を立った。


 「それは2000年前魔術を極め人々から恐れられていた『魔王』と呼ばれた人間のことだと思います。『魔王』は全属性を持っていて、禁忌とされる魔術をも使ったという言い伝えもあると言われています」


 「その通り。『魔王』についてはまだ知られていないことがたくさんあるのじゃ。ということで座学もここまでにしてこれから魔導測定晶で実際に個々の測定に移ろうと思っておる。皆、儂についてくるのじゃ」


___


 魔導測定晶とは、触れたものの魔術適正と魔力量を色と光の量によって表してくれる便利なものだ。火属性なら赤色に、水属性なら青、風属性なら緑など水晶球の中で光をもつ。魔力量が多くなるにつれ光が大きくなる。


 「では次、ノア・ヴァリオン・リオナス」


 エルド先生に名前を呼ばれ、前へ出る。

 周囲の視線を感じながら、水晶球の前に立った。


 「利き手を測定晶に。魔力を自然に流すだけでいい」


 言われた通り、そっと手を添える。

 ――その瞬間だった。

 測定晶が淡く光を放つ。だが次の瞬間、光は揺らぎ、色が定まらなくなった。

 青にも、赤にも、白にも見える。教室のざわめきが耳に届くが、何か遠い世界を見ているような感覚に、ノアは手を添えたまま動けなかった。


 「……?」


 ざわ、と教室が小さく騒めく。

 すると測定晶は完全に沈黙した。


 「……反応が、止まった?」


 エルド先生が眉をひそめる。

 測定晶は壊れていない。

 だが、どの属性反応も示さず、魔力量を示す光も失っている。


 「魔力量……測定不能。魔術適正……反応不能かのう?」


 教室中が一斉にざわめいた。


 「反応不能って……」

 「それって、才能がないってこと?」

 「いや、測定器の故障じゃ……」


 そんな声が飛び交う中――

 エルド先生はゆっくりと顔を上げ、ノアを見る。


 「まぁたまに測定晶がうまく起動しないこともあるからのう。また放課後儂の部屋に来てくれ」

 

 なぜか、視線だけが長く感じられた。

 ざわめきが、やっと収まったところで


 「……反応不能、ね」


 低く響く声。振り返ると、腕を組んだカイロスが、ノアを見下ろすように笑っていた。

「測定不能だの、反応不能だの……便利な言葉だな。

才能がないと言い切れない代わりに、“よくわからない”で済ませられる。田舎貴族の次男には、ちょうどいい評価じゃないか?」


 エルド先生が制止しようとしたが、間髪入れずに


 「失礼。ちょっとした感想ですよ、エルド先生」


 その挑発的な笑みを残して、カイロスは口を閉ざした。


 「次、ルナ・ミレーヌ」


 やっとルナの番が回ってきたようだ。

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