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サンタさんと母と鈴の音

作者: 木山花名美

 

 確か十一月の頭から中旬くらいだったと思う。

 クリスマスツリーを飾ったその日から、もうクリスマスは始まっていた。

 ギラギラのモールでも綿でもなく、白い宝石みたいなビーズが連なる飾り。シックなプレゼントの箱や、ヴァイオリンやホルンなどの楽器のオーナメント。天辺には星ではなく、赤いリボン。

 子供の時はよく分からなかったけど、母のお気に入りのツリーは、当時にしてはものすごくお洒落だった。


『飾りが片寄らないように、バランスよく付けてね』


 毎年同じことを言われ、子供なりに使命感を持って飾っていたように思う。特に三体しかいないお人形(リアルサンタ、起き上がり小法師風サンタ、天使)を飾る時が、一番緊張した記憶がある。


 そうして飾り付けたツリーの灯りを見つめながら、今年は何のプレゼントをお願いしようかな……お母さんからはこれで、サンタさんからはこれで……と、わくわく考える時間がとても楽しかった。



 クリスマスイブは、毎年大体同じご馳走だった。

 ポテトグラタン、唐揚げ、五目寿司、シチュー、それとケーキとシャンメリー。普段はほとんど炭酸飲料を飲まないけれど、このシャンメリーは大好きで、クリスマスの特別なグラスに注いでもらえば、何だか大人になった気分がした。

 お腹がいっぱいになると、サンタさんへの手紙を窓際の箪笥の上に置き、ドキドキしながらベッドへ潜る。



 一番最初にお手紙を書いたのは、保育園の年長さんの時。25日に保育園へ行くと、お友達がみんな、サンタさんからプレゼントをもらったという話で盛り上がっていた。

『お手紙を書かなきゃ、プレゼントはもらえないんだよ?』

 と教えてもらい……私は母に話しながら、慌ててお手紙を書いた。


『◯◯ちゃんのまほうのステッキをください』


 だけどもう25日の夕方。サンタさんが来るのは24~25日の夜。きっともう無理だろうなと諦めていたけれど……

 26日の朝、目を覚ますと、手紙を置いた箪笥の上に、細長いプレゼントの箱が置いてあった。


 興奮しながら開けた中身は、◯◯ちゃんのステッキではなく、☆☆ちゃんのステッキだった。キャラどころかアニメまで違うけれど、一日遅れでも届けてくれた、サンタさんの優しい気持ちが嬉しかった。

 電池を入れてボタンを押してみると、光るだけじゃなく、先端がくるくると回って楽しい。


『☆☆ちゃんので良かった! サンタさんありがとう! やっぱりお手紙が大事だったんだね~お手紙持って行ってくれて嬉しい!』


 と、行き場のないサンタさんへのお礼と想いを、何度も母に伝えた。


 その次の年は、仔猫のぬいぐるみをお願いした。お友達が持っていたコが可愛くて、一目惚れしたのだ。


『◯◯ちゃんとおなじ、こねこのぬいぐるみをください』


 たったそれだけの手紙で、サンタさんは同じぬいぐるみを届けてくれた。色は違うけれど、模様も形も大きさも、お友達のコと全く同じ。


『すごい! 何で分かったんだろうね? サンタさんはやっぱり魔法が使えるのかなあ』


 興奮しなかがらそう話す私を、母はにこにこと受け止めてくれた。


 その次の年からは、シルバニアファミリーかジェニーちゃん(年齢バレちゃう)だったと思う。

 少し大きくなると、手紙に去年のプレゼントのお礼や、『霜に気を付けて歩いてください』なんて気遣いの言葉も添えたり。サンタさんが好きらしい、牛乳とクッキーを、手紙の横に置いたりもした。



 あれは小学校中学年のクリスマスイブだったか。

 防犯カメラを付けてサンタさんの姿を捉えたいとか、網で捕まえたいとか、余計な知恵が回り出した頃。

 興奮しすぎてなかなか眠れなかった私は、ベッドの隙間から、窓や箪笥の上を何度も覗いていた。


『寝ないとサンタさんは来ないよ?』


 母にそんなことを言われ必死で目を閉じるが、眠れないものは眠れない。


 そうこうしている内にどんどん夜は更け、日付が変わり……二時とか三時とか、そのくらいだったと思う。

 突然、シャンシャンシャンと、どこからか鈴の音が聞こえてきた。

「あっ!!」と叫び、隣で寝ていた母を起こすと、一緒にパジャマのまま外へ飛び出した。


 真夜中の狭い道路に立ち、耳をすませれば、高い空の遥か向こうから、はっきりと鈴の音が聞こえてくる。

 眠そうだった母もパッと目を開き、「本当に聞こえる! すごいね!」と、空を見上げながら顔を輝かせていた。


 サンタさんに逢えたこと、その瞬間を母と共有出来たことで満足した私は、ベッドに戻るとすぐに眠りに就いた。

 目を覚ますともちろん、心ときめくプレゼントの箱が。


 冷たい夜の空気、暗い空に昇る真っ白な息。そして母の温もり。鈴の音を聞けたのはあの一度きりだったけど、絶対に夢でも幻でもなかった。



 幸せだったクリスマスの思い出は、あれから何十年経った今も、色褪せるどころか輝きを増しながら胸に甦る。


 さて、息子が手紙に書いた高額すぎるプレゼントを、果たしてサンタさんはどう処理するのだろうか──

 酒を飲みながら、今夜もわくわくと耳をすませている。



ありがとうございました。


息子が用意したサンタさんへの差し入れは、コーラとうまい棒とフーセンガムです。

ザ・男子(笑)

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