第九章 レイロの刀、凝霜の剣
青い空、白い雲。
二本の巨大な蛇のような白雲が並行して渦を巻き、それによって形成された雲の輪が、鏡のように滑らかな海面に映り込んで、上下二つの巨大な同心円を描いていた。同心円の中は限りなく澄み切った青、その中心にはまるで宇宙の深淵に触れるような、言葉では言い表せない静寂があった。そう、音すらも消えるかのような無音の感覚だった。
もしこれが違う時間、違う場所、違う姿勢であれば、高通星のこの比類なき絶景、さらに二人の絶世の美女に囲まれていれば――それは間違いなく、荘莫言の十七年間の人生で最も輝かしい瞬間となったことだろう。だが現実は、彼の十七年の人生で最も暗い瞬間になるかもしれなかった。
レイロと冷凝霜がそれぞれ荘莫言の片脚をつかみ、三人は逆三角形の形で空中に浮かんでいた。荘莫言は、まるで母星の有名な絵画《吊られた男》のような姿で、気まずい笑みを浮かべていた。
荘莫言がハリケーン・ナイラの出現位置を測定した直後、わずか5分で、レイロはまっすぐ突進艦の甲板に飛び降りてきた。そう、飛んできたのだ。これはつまり、レイロは少なくとも「地位・上位」の達人であることを意味していた。
高通星では、人間は修行を必要とする。この星の大気には「元気」――母星でいうところの「霊気」に似た特殊なエネルギーが存在しており、人間はこれを吸収しなければ生きられない。吸収できない人間は、筋力低下から始まり、やがて内臓が衰え、最後には骨まで泥のように崩れ死に至る。しかもこの症状は不可逆で、治療法はない。
幸いにも人間は古武術やこの星の動植物から抽出した液体などで元気を吸収することができる。高通星で生まれた子どもは生まれながらに元気を備えており、修行次第では特異な能力を開花させることもある。
修行者の階層は「天位」「地位」「人位」の三つに分けられる。人位は母星の一流の修行者に相当し、浮遊はできない。地位は絶頂の修行者で、重力を無視して空を舞える。天位は肉体のみで蒼穹を飛び、嵐をも恐れぬ存在。
荘莫言は、レイロと冷凝霜が共に地位・上位の達人であるとは思いもしなかった。彼女たちは自分より7、8歳年上なだけなのに。天位の存在は伝説のようなもので、何人いるのかすら不明。彼と霜霜(冷凝霜)は、詐欺師の元天罡が天位かもしれないと疑っていた。元天罡は自称「十二城邦を巡り、万里を遊び、千の秘境を旅した」人物で、この星で知らないことなどないという。
だがその元天罡ですら、霜霜の出自を知らなかった。「どこから来たのかわからない、星の外かもしれない」と言い放ったのだ。
天位は謎に包まれており、地位・上位こそが十二城邦における最強の実力者。荘莫言は霜霜を自室に残しておいたことを幸運に思った。彼女の消耗は激しく、回復には丸一日かかるという。
「荘莫言、集中しなさい! ぼんやりしてる場合じゃない!」
レイロは彼の様子に不満をあらわにした。
「艦長、俺の仕事は終わったはずですよね? ナイラはあの同心円の中心に現れるはずです。あの海と空の交差点を見ておけば間違いない。でも、なぜ俺をここに連れてきたんです?」
「知らないわ。霜霜に言われたの。私は彼女の言うことを聞いて間違ったことなんて一度もない。」
「私もわからない。でも私の直感が言ってる。荘莫言、あなたが必要なの!」
会話の最中、漆黒の一点が虚空に現れた。
レイロは無表情で左手に雷刀を抜き、冷凝霜は右手で霜剣を抜いた。
雷刀と霜剣――九年の時を経て、ナイラに再び相まみえる!
雷刀——それは九年前、啓明星で雷鳴が奈落のハリケーンによって命を落とした後、雷洛が自ら極夜区の極夜大陸に赴き、九死に一生を得て一頭の成体・暗羽雷豹を討ち取り、その体内にあった結晶状の器官——雷骨を取り出して鍛え上げた武器である。
霜剣もまた、当時の冷凝霜が単身で極夜大陸の荊棘平原に赴き、無数の荊棘の花の透明な花芯と樹芯を採取し、自らの想糸を用いて編み上げたものだ。
荊棘の花とは名ばかりで、実際には木の一種であり、希少にも二種類の結晶器官——「花芯」と「樹芯」を併せ持つ。星光の下、荊棘平原には数えきれぬほどの荊棘の木が直立し、花を咲かせる。その花はまるで白玉のように輝き、夜空の星明かりと共鳴する――これは玉堂城邦の名勝のひとつであり、花愛好家の間では「白玉堂」と呼ばれている。
白玉堂の花芯は玉のように滑らかで、樹芯は透明であり、いずれも元気を吸収する上級の結晶霊物である。
霜剣は、冷美人たる彼女が花芯を剣心に、樹芯を剣身にして交互に編み込んだものである。
結晶化――それは高通星における生命体の特異な特徴のひとつだ。外部の隕石帯から産出するエネルギー結晶に加え、この星のあらゆる動植物は、多少なりとも体内に結晶器官や結晶物を生成する。そしてそれこそが、彼らの致命的な弱点でもある。
詐欺師元天罡いわく、天位の高手とは結晶化した器官を修行の果てに得た者のことを指す。個人の修行資質によってその器官の形状は異なるが、いずれも本人の最大の秘密であり、最大の弱点でもあるという。
雷刀、霜剣――九年の時を越え、ついに奈落に相まみえる!
雷洛は一切の雑念を振り払った。雷鳴の死も、九年の流浪も、すべて過去のこととして捨て去った。
心と神、魂と意、己のすべてを一体とし、ただ一太刀にすべてを込めた。
それが「斬天」――漆黒の点をめがけて放つ、唯一無二の一撃。
冷凝霜――その冷艶さ、氷のような気質。
霜剣の寒気を一点に凝縮し、羚羊の角が枝を避けるように、痕跡を残さず、黒点を貫いた。
雷刀との以心伝心の連携、その一撃が「凍地」。
ハリケーン・奈落――千年にも渡って海陸を蹂躙し、未だ一度も傷ついたことがなかった。
だがこの時、覚醒したばかりの奈落は、まるで長い眠りから目覚めたばかりの者のように、何も準備ができていなかった。
そして、雷刀と霜剣の攻撃を受けた。
これは奈落にとって、かつてない「死の危機」だった。
だが奈落は、ただの暴風ではない――高通星そのものの意識の断片を宿した、気体生命体である。
不可能に思える場所から奇跡を起こす存在。
黒き点は突如として淡くなり、ぼんやりとした姿へと変わった。まるで次の瞬間には完全に消え去るかのように。
「荘莫言! 黒点を固定して! 奈落を逃がさないで、あなたならできるってわかってる!」
冷凝霜の冷徹な声が空気を裂いた。
荘莫言は驚いたように彼女を見つめた。
何度目だろうか――冷凝霜の予言めいた発言は、いつも驚くほど正確だった。
彼はすぐに白沢獣のボタンを押し、カチカチと音を立てながら、鏡羅盤は白黒両面の鏡へと戻った。
両手を翻して、黒面の「問心鏡」を黒点へ向ける。
九層の金線が次々と光り、中央の鏡面から黒い光線が放たれた。
その光は黒点をしっかりと固定し、ぼやけた点が再び明確になったその瞬間——
「斬天」「凍地」の連撃が、奈落を真正面から貫いた。
その時、雷洛、冷凝霜、荘莫言の三人の脳内に、同時に怒りと焦燥に満ちた凄まじい咆哮が響き渡った。
黒点が破裂寸前にまで膨張し、それはまるで漆黒の巨獣が巨大な口を開けて三人を丸呑みにしたかのようだった。
次の瞬間、黒点は忽然と消え失せ、空に散っていた白雲を吹き飛ばす海風だけが残された。
すべてが、まるで最初からなかったかのように、静寂の中に戻った。
同時刻、A—119号室。
精巧な九孔蓮花座の小さなベッドの上で眠っていた月夜無霜が、突然その目を見開いた。
彼女と荘莫言の間に存在していた脳波ロックが、かつてないほどに——断ち切られたのだった!
そしてそのころ――高通星の星核、内部の最深部。
そこには、物理法則を無視するような、微細ながらも明確に存在するブラックホールがあった。
それは巨大な結界に封じられていた。
結界の中枢で、夏后星命が怒りを込めて叫ぶ。
「荘重! うちの子の気配が感じられない! 莫言に何かあったのよ! 私、本気で怒るわよ! あんたなんかもう知らない! 荘重、あんたは本当にバカ! あの時なぜこんな奴を選んだのかって、私、今になって本気で後悔してる! 私の息子を守れないなんて、ウワァァァン……!」