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第37章 万象物語


黒の舞踏ホール――空間ノード。

白虎六人組の出現は、庄莫言の予想の範囲内だった。何しろ葉軽雪と彼女率いる五行衛の実力は計り知れない。再登場した彼らは全員、白虎の虎柄模様が入った白い戦甲を身にまとっていた。関節や胸部、背中の要所には地下深淵の蓄能晶石がはめ込まれており、まさに白虎城が最新開発した蓄能戦甲――白虎甲である。もし先の交戦時に白虎甲を着用していれば、高天や樊清雪といった地階高位・地階中位の二大高手がいても、“六三”隊に勝ち目はなかっただろう。


白虎六人組が近づくと、葉軽雪は一瞬ためらい、庄莫言に言い訳した。

「箫木は空間に漂う敵意のエネルギーを吸収する能力があるため、先ほどあのような行動に至ってしまいました……ご容赦を」


一方で、啓明九相のひとり、啓明・青星相――藍霊霊ラン・リンリンは青い珠を抱え、葉軽雪を見つけるや否や手を振って声をかけた。

「軽雪、ここよ! どうして遅れたの? 早く来て!」

明らかに白虎六人組と啓明九相はあらかじめ盟約を結んでいた。


樊清雪はにっこり微笑んで答えた。

「葉姐さん、大丈夫です。これは試練ですもの。理解できます。でも、もし次があるのなら、私も倍返ししますから」

葉軽雪は頷き、静かに応じた。

「当然です。いつでもかかってきてください。次こそは白虎甲の全戦力をもって応じますから」

そう言うと、葉軽雪は五行衛を連れて啓明九相と合流した。瞬く間に、彼らが空間ノードにおいて最大の集団となった。


そのとき庄莫言は、月夜無霜ユエイエ・ウーシュアンに心の中で問いかけた。

「霜霜、空間ノードの通過方法はわかる?」

「莫莫、ちょっと待ってて。金色の小さな水母に聞いてくるから、すぐに教えてあげる」

そう言うと月夜無霜は自分の“霜霜空間”に戻っていった。小さな空間の中で、小さな金色の水母がのんびりと漂っている。


しばらくして息を切らしながら戻ってきた月夜無霜は、庄莫言に伝えた。

「もうすぐ零時よ。八面体の空間ノードが金色の牽引光線を放つはず。そのとき各面のカード差込口が光って開放されるから、隊員番号カードを差し込めばOK。あと、カードを差した後に消費ポイントを選べて、ポイント数で転送先が変わるわ。急いでね、ノードのエネルギーは有限だから」


庄莫言は考え込んだ。

「霜霜、八面体ノードには全部で24か所の差込口がある。でも俺たちは6人しかいない。ほかの隊と協力して24枚集めねば全員で転送されないのか? それとも、一面分の3か所だけ埋めればいいのか?」

「うーん……金色の水母情報だと、一面の3か所を埋めればその面だけ開通して、メンバーは第二関門に転送されるみたい。全部24か所を埋める必要はないって」


これは、いかに敵対する複数の隊が“協力”しうるかを試すための仕掛けのようだ。3か所だけを埋めるのと、全24か所を埋めるのとでは、次の関門の難易度に違いが出るのだろう。


庄莫言が思考に没頭するうち、知らずに零時が近づいていた。零時ちょうど、ノード表面の金色は瞬時に核の一粒の光点へと収束し、八面体の中心で輝いた。続いてその光点が光線を発し、頂点を突き抜けると――まばゆい金色の柱が舞踏ホールの天井へ向かい突き刺さった。


黒の舞踏ホール――八面体空間ノード。

金色の牽引光柱はまるで天空を切り裂く剣のように高くそびえ、ホール中を舞う光の粒子は集まって矢印形の光標となり、一斉にノードを指し示した。そこに居合わせた五つの隊は一斉に柱体の変化を見守り、ほかの三人・六人隊も倦鳥のごとく四方八方からノードへと押し寄せてきた。


啓明・木星相――沐風ム・フウ霸刀冷戦ハトウ レンセンに近づき言った。

「冷隊長、八面体の差込口が光りました。もう隊員番号カードを差し込めます。こちらは15名集まっていますから、冷隊長も加わるならちょうど24名になりますね。試してみませんか?」


冷戦は答えず、地面に突き立てられた“霸刀”を手に取り、振り返って静かに訊ねた。

「沐風、もしこのノードを一刀にして斬り裂いたら、どうなると思う?」


沐風は思わず身をひるがえした。冷戦の言葉には、すべてを破壊してしまいたいという狂気じみた欲望が含まれていた。自身をも巻き込む自滅の衝動……。木星相として、彼は自らの洞察力でそれを見抜き、冷戦から距離を置くべきだと悟った。

「はは、冗談です。沐隊長、私も加わります。では、さっそくやってみましょう!」


――そして“六三”隊の面前で、青龍九衛、啓明九相、白虎六人組の三勢力が、それぞれ八面体の各面に番号カードを放り込んだ。三枚ずつ、計24枚のカードが差し込まれると、差込口から紋様が龍のようにも古代文字のようにも翻り、たちまち八面体全体に広がった。次いで各面が三角形の光輪を現し、対応する隊員を包み込むと――青龍九衛、啓明九相、白虎六人組は一瞬にして姿を消した。金色の光柱も、その輝きを若干失った。


高天は終始「オーディンの眼」を稼働させ、この様子を記録・分析していた。面を覆う仮面の御紫芳ギョシホウが近づき告げる。

「高天、スペクトラムで観測したところでは、この転送のエネルギー量だと、ノードはあと四回は稼働できます。私たち二隊で一緒に転送したほうがいいでしょう」


高天は振り返り隊長・庄莫言に頷いた。庄莫言は樊清雪、司南、元艮ユエン・グン元坎ユエン・カンに声を掛け、言った。

「隊を二つに分けよう。いまのところ、ノードは三人ずつ、一面のカード差込口を使う単面転送らしい。だから24人集める必要はない。司南、元艮、元坎はそのまま一組で。高天、清雪、俺の三人で別の組をつくろう。もし転送後に離れ離れになったら、必ず月夜無霜に呼びかける。彼女をアンカーにして、すぐ再会できるはずだ」


司南は庄莫言と同じ組になりたかったが、元艮と元坎がそれを許さないことは承知のうえだった。なにしろ彼らは司南の父――司命城主が直々に命じて護衛につけた護り手なのだから。

その直後、「六三」隊と「六二」隊は光に包まれ、姿を消した。


---


透明な結晶でできた、七色に輝く橋。

長さは無限にも思えるほど果てしなく、橋頭も橋尻も視界に捉えられない。

静寂の中、ただ水晶の輝きだけが揺れ動いていた。



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