第34章 空間ノード
啓明地塔、黒の円舞ホール、空間ノード付近。
青龍九衛、勾陳六星、そして啓明九相――この三つのチームが、最初に黒の円舞ホールに存在する空間ノードを発見した。青龍九衛と啓明九相は、今回の啓明塔入学試験において、唯一となる九人編成のチームである。勾陳六星は六人チームにおける第二グループ、すなわち“六二”小隊だ。
青龍九衛は、覇刀・冷戦が青龍城主の直属暗衛部隊「九暗衛」を模して編成した戦隊である。九人全員が共通して「饕餮戦甲」を身にまとっているが、冷戦のものだけは赤く燃え上がるような朱色で、他の八人の戦甲はすべて黒く重厚な「玄甲」で統一されている。冷戦の武器「覇刀」は、青龍会会長・樊勝の持つ「青龍刀」を模した赤色の大剣であり、他の八衛の武器はすべて同一仕様の黒色の蓄能兵器「玄刀」だ。
樊清雪が青龍城を出てニナ号に乗ったのも、冷戦の執拗な付きまといから逃れるためであった。冷戦は青龍城・冷家の次男坊の長子である。冷家の次家系は青龍城の城衛軍の中枢を長年にわたり掌握しており、そのため冷戦は青龍会とも関係が深く、会長・樊勝からも厚い信任を受けていた。樊勝は自らの最も得意とする「青龍刀法」を冷戦に伝授するほどであった。
啓明九相は、啓明城の地元九大家族が推薦した九名の若者から成る試験チームである。地元の九大家族に加え、啓明塔学院と城主を合わせた計十一勢力が、啓明城の政治を担う「城邦議会」を構成している。議会は一席一票制であり、城主の任期は三年、九大家族が輪番でその職を担う。城主を務める家は、通常の一票に加えて「城主票」を保有しており、実質的に二票を持つ強力な存在となる。
勾陳六星の実力は、まさに計り知れない。勾陳城は十二の城邦の中でも、最も神秘的な存在である。永夜区に最後に築かれた都市であり、その規模は最小ながら、極夜光耀谷という特殊地域に位置している。ここでは「光耀晶石」と呼ばれる特別な鉱石が産出され、これは高通星全域で照明のエネルギー源として広く用いられている。
勾陳城の民は常にこの極夜区に隠棲しており、外来者の立ち入りを極端に嫌う。勾陳人が外に出る必要がある場合、必ず「勾陳面具」と呼ばれる仮面で顔を覆う。これは全顔を隠すものもあれば、半顔を隠すものもあるが、いずれにせよ他者の前で仮面を外すことは絶対にしない。万が一、外部の者によって無理に仮面を剥がされた場合、その者は勾陳人にとって「不倶戴天の仇」となる。
それ以上に異様なのは、勾陳が光耀晶石を利用して開発した光エネルギー兵器の数々である。治癒に用いる「光耀の針」から、都市を滅ぼすほどの破壊力を持つ「光燿の砲」に至るまで、その詳細は一切外部に漏れていない。
もし勾陳城の少ない人口を考慮に入れるとすれば、人均資産の面で高通星の「最富裕城邦」の称号は、間違いなく勾陳城のものだろう。
勾陳六星は、六人全員が女性で構成されており、内五人が全顔を覆う勾陳面具を着け、隊長格と思われる一人だけが半顔面具を装着していた。彼女たちの実力は、全員が地階初位に達している。
青龍九衛、啓明九相、勾陳六星――三者はいずれも己の手段をもって、ほぼ同時に黒の円舞ホールに存在する空間ノードを発見した。
それは一人の人間ほどの高さを持つ金色の八面体水晶プリズムであり、それぞれの面には、上に一つ・下に二つのカード状のスロットが設けられていた。全体で24個のスロットが存在する構造となっている。
「さて、どうするかね? 先に一勝負するか、それとも一時協力でもしておくか? 最初に言っとくが、このおかしな空間に漂ってる“黒色誘導術”の殺気――あれはもう俺の玄甲八衛の“饕餮戦甲”が全て吸収しちまったからな。だから俺らが手を出すときは加減できねぇかもしれん。もし誰かが俺たちの手で死んでも、恨みっこなしで頼むぜ?」
覇刀・冷戦が、威圧的に最初の言葉を発した。
それに対して啓明九相の木星相・沐風が応じた。
「我々はまだ急ぐ気はない。様子を見てからでも遅くはないだろう。……フフ、冷兄は今すぐにでも、うちの九人チームと戦いたいとでも?」
そのとき、勾陳六星は一言も発せず、ただ静かに闇の中へと後退していった。その行動こそが、彼女たちの答えだった。