第28章 白虎六人衆(後編)
白虎城は極夜区六城中、最大の勢力を誇り、唯一青龍城と対等に渡り合える城邦である。青龍城が高通星の流星帯資源を独占して覇を唱える一方、白虎城は地底深淵のクリスタルを独占し、一般民の生活を陰から支配している。
深淵クリスタルは白虎城外の「白虎深淵」で産出され、硬度と耐摩耗性に優れる。さらに蓄エネルギー特性を持ち、一度エネルギーを注入すれば必要時に放出できる。流星由来のエネルギークリスタルは巨大船舶や大型機器、城邦の盾に最適だが、日常生活用には過剰である。そこで地淵クリスタルを蓄エネカードに加工し、一般市民へ販売することで、エネルギー消費を無駄なく調整している。
地淵クリスタル製の蓄エネカードは、流星クリスタルの一部エネルギーを地淵クリスタルに注入し、それを市民が購入して使用する仕組みだ。硬度を活かした通貨用途も兼ね、白虎城は高通星随一の財力を蓄えている。
葉辰心は白虎城の支援を受けて白虎社を立ち上げた。青龍会会長・樊勝とは地下世界で双璧をなし、廃棄流星の処理権30%を強奪した。興味深いのは、葉辰心と樊勝がそれぞれ一人娘を持つ点だ──葉軽雪と樊清雪。生まれながらにして宿敵となった「双雪の争い」は、両姫の人生を幾度も彩ってきた。三年前、葉辰心は葉軽雪を伴い白虎城に還り、白虎兵衆を統帥して「双雪の争い」は休止となった。
今、啓明塔地塔第一層「黒き円舞の大広間」で、樊清雪は葉軽雪とその護衛「五行衆」を直感した。箫木が放つ漆黒の木矢を見て、彼女は間違いなく敵対者「白虎六人衆」であると確信する。
高天は未だ動かず、右眼に掛けたオーディンの眼鏡──探知器「オーディンの眼」で周囲を観察していた。黒闇の大広間には漆黒の中を、無数の光絮が舞い、様々な燦めく図案を織り成す。時折それらが流れ集まり、まるで銀花火のように美しく輝く。
高天は最も単純な白黒映像モードを呼び出し、自らの左前方に「水幕」を検出した。その内部に五つの人影が漂い、さらにわずかに銀白の点滅する場所に、第六の影が、彼らの背後で動かず潜んでいるのを見逃さなかった。
荘莫言もまた正眼法蔵を展開した。銀光を放つ六芒星封印は依然として煌めきつつ、内側へと収斂し、やがて透明な六芒星印へと変化した。その印は左前方の水幕内に五体の人影を示すと同時に、後方の潜伏者をあぶり出していたのだ。
こうして、白虎六人衆との対峙が避けられぬことを、荘莫言たちは知るに至った。