第27章 黒闇に潜む殺意(白虎六人衆)
雨玥は啓明塔学院三年生の先輩であり、試練地帯を密かに見守っている。今、地塔第一層のメビウスの環──黒き円舞の大広間に漂う空気は尋常ではない。試練設計ではこの黒き誘導術は学員を煽動するに留まるはずが、今は明らかな殺意を放っているのだ。
雨玥は何度も萧元聖との通信を試みたが繋がらず、光脳モイレ・パーティに介入を要請しても応答はない。為す術もなく、彼女は己の力を秘め、いつでも救援に駆けつけられるよう備えていた。
荘莫言は両手を拳にし、右手を上にして「陣」の印を結ぶ。その印は「意を守り、かつ通音すべし」の意味を持つ。彼の霊覚は絶え間なく警鐘を鳴らし、危機感は増す一方だ。
「まずは各自、自らの能力と番号を報告せよ」
「樊清雪──地階初位、強攻系能力、武器は“無念刀”。番号は記号のみ、刀と剣の交差図案だ」
樊清雪は自身の無念刀を抜き示す。それは片側が刃、片側が剣身という両刃の特異な刀剣である。
「司南──人階中位、補助系能力、“挽留弓”が武器。番号は666、縁起良し!」
「元艮──人階頂峰、強攻系能力、武器“手斧と銀盾”。番号404」
「元坎──人階頂峰、補助系能力、武器“手斧と銀盾”。番号444、縁起悪し、ははは……」
「高天──地階中位、全系能力、武器なし。番号999」
「承知。私、荘莫言──人階中位、補助系能力、両手印結術が武器。番号は空白。小球の中は文字通り何も入っていないんだ」
「まさか全員の番号が369以上ってことか?この隊の四名の番号、いずれも妙だぞ」
司南が眉をひそめる。
「肝心なのは、清雪のような“特殊記号”番号かもしれん。だから先ほど小球を換えた者が不満顔だったのだろう。注意せよ、今すべての隊が“特殊記号”か“空白”を集めようとしているかもしれぬ。足しても“何もなかった”ゼロに等しいのだから」
「でも莫言お兄ちゃん、番号が確定したら変えられないんだよ!」
司南が心配そうに言う。
高天は冷然と言い放った。
「この漆黒の大広間こそ、番号を奪うにはうってつけの場所ではないか?お前の番号に名前は書かれていない。どう証明するつもりだ?」
高天の言葉が終わるや否や、黒く細い矢が胸元へ向けて飛来した。同時にさらに二本、樊清雪と司南へ向けて放たれる。
荘莫言は断喝した──
「転!」
六名は瞬時に身を翻し、元艮と元坎の銀盾が樊清雪と司南へ向けられた矢を受け止め、樊清雪は無念刀で高天めがけられた矢をはじき飛ばす。矢と刀が「ポン」と響く衝突音の後、樊清雪は驚いて気づいた──放たれた黒矢は木製の矢だったのだ。
「気をつけて!あれは『白虎兵衆』だわ!」
樊清雪の声に、六人は瞬時に防御態勢を固めた。
荘莫言の「陣」字印は防御と通音を兼ねており、結印と同時に「敵到来。先に守り、後に攻撃」と隊員に伝達していたのだ。敵の正体は「六一」──六人隊の第一番、通称「白虎六人衆」である。構成員は葉軽雪と、彼女に従う五行の護衛──箫金、箫木、箫水、箫火、箫土だ。
大広間を覆う黒闇は、すでにその深淵より殺意を膨らませていた。