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第26章 黒闇の殺意



量子光脳モイレ・パーティ──巨大無比、全身が黄金に輝くクラゲのごときそれは、今も長大な金色の触手を運命の三女神へと変幻させていた。しかし月夜無霜ユエヤウーシュアンは、すでにその幻影空間を離れている。


過去を司る女神ウルードは言った。

「我、ウルードには、この小さき者の過去は見えぬ。その先は深遠なる闇のみ…」


続いて現在を司るヴィルダンディが告げる。

「我にはこの小さき者の“今”が見える。生死を超えた絆、その運命は決して人形のそれではない」


そして未来を司るスコルドは言った。

「我が見るこの者の未来は、地底の深淵より湧き出す血のごとし──え?あれは天演之球ティエンイェンのきゅうか?天演之球がこの小さき者に宿っておる!我、これを喰らわん…!」


その瞬間、スコルドの全身が金色から凄惨な深紅へと変貌した。伴う「パチッ」という音と共に、その姿はたちまち四本の血紅色の長い触手へと散じた。


「封!」──ほぼ同時にウルードとヴィルダンディの双声が断喝され、金色の八面体封印が虚空に出現し、四本の血紅の触手を包み込んだ。過去と現在の女神は協力し、スコルドを封じたのだ。その結果、二柱の金色の姿は八本の黄金吐息の触手に戻り、八面体を護持して殺意の拡大を阻止しつつも、円舞の大広間を監視する余力は失われた。


モイレ・パーティは高通ガオトン博士と共に希望星系を再調査した折、高通星上で地底深淵から浮上した巨型クラゲ状生命体に遭遇した。高通博士の助力を得て、モイレ・パーティはその巨クラゲと合一し、はじめての「生物量子光脳」となった。しかしその代償として、無差別にすべてを貪るクラゲの本質的意識を抑制するため、自らのエネルギーを一部捧げねばならなかったのである。


――そこへ、司南スー・ナンが静かに近づいてきた。司命城主司令公の愛娘にして「小公主」と呼ばれる彼女は、稀有なる補助能力──「回復」、しかも精神・身体両面のダメージを癒す全方位回復を備えている。


司南は、まるで十年前の司命城外、星光の海で命を共にしたかのように、荘莫言に寄り添う。あの短い十日――莫言お兄ちゃんと私は懸命に生き延びることだけを考えていたのに。彼はどうにも、その記憶をすっかり忘れてしまったらしい。


「皆、気をつけて。ここはまるで出口が見えない黒い大広間よ」樊清雪ファン・チンシュエが険しい表情で声をかける。


荘莫言は眉を寄せ、内なる霊覚の警鐘を聞いていた。正眼法蔵と精神力を封印された今、かつて気づかなかった霊感が著しく覚醒し、視覚とも思念感応とも異なる預知の感覚をもたらしているのだ。


「清雪、君の精神力で、この大広間の壁を感じ取れるか?」


「まったく無理!入ってから入口も壁も消えてしまったみたい」


「ほかはどう?高天、元艮ユェン・グン元坎ユェン・カン、感じ取れているか?」


「俺たち兄弟も何も──方向すらつかめない」元艮が答えた。


高天は冷然と沈黙していたが、ぽつりと銀の鎖が付いた単枠眼鏡を取り出し、右眼にかけた。


「これはメビウスの環だ。歩いては決して抜け出せない。空間の結節点を見つけるしかない」


「まず今はチームリーダーを決めよう。そして一丸となって結節点を探す。私は莫言お兄ちゃんをリーダーに推す。みんなはどう?」


司南は穏やかに、しかし揺るがぬ口調で続けた。


「反対意見はないわ」「異論なし」


「私はどちらでも」「賛成です!」


荘莫言は鼻をかき、「わかった、じゃあこの場で防御態勢を固めて、この殺意の波をしのいでから動こう」と提案した。


まさに――黒き闇の大広間に、殺意は静かに忍び寄っていた。









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