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第十六章 夏后星命(二)



夏后星命――青龍城・夏家の絶世の高手であり、高通星で唯一“純粋な精神力”のみで異化し、天位へ進階した「絶世法神」である。法の頂点はただ一人、夏后星命その人を指す。彼女は庄莫言チャン・モーイエンの母親でもある。


庄重ショウチョン――高通星で気血の力により天位へと昇った絶世の拳豪。「崩拳ほうけん絶世、重拳じゅうけん無双」の異名を持ち、拳の極みを体現した存在だ。法を超えたのは夏后星命、拳を極めたのは庄重。二人はまさに「法」と「拳」の頂点である。


奈落の心、奈落の山——山頂は風もなく、死の静寂だけが支配していた。


「先輩、どうか雷洛レイルオをお救いください」

冷凝霜レイ・ニンシュアンは嗚咽混じりに懇願した。


夏后星命は精神を整え、十年前に高通星星核の変を陰で操った黒幕が見つかるまでは、決して庄莫言を認めず、息子にいかなる危険も及ばせないと心に誓っていた。


小霜霜しょうそうそう、あわてることはない。私がいれば、あなたの友はきっと助かるわ」

そう言いながら夏后星命はゆったりと周囲を見渡し、奈落の心の空間を興味深げに眺めた後、片足で奈落の氷山を軽く蹴った。天柱のようにそびえる氷山の内部で無数の幽藍色の光点が、まるで海の魚群が巨大な鯨に驚かされて一斉に逃げ惑うように、きらめきながら乱れ飛んだ。


「小霜霜、あちらの大男、小弱鸡ジャオチーたちよ、奈落はどこへ行ったと思う? 奈落が死んでいるなら、奈落の心の空間がまだ存在している理由が説明つかないでしょう?」

「ざあざあ……小さな奈落め、生きているハリケーンにしては上手に死んだふりをするものね!」

夏后星命は笑いながら手を振り、雷鳴ライメイが地面に捨てた左目から細い封印の針を摘み上げた。その針こそが飓風奈落ハリケーン・ナラクの本源霊識を封じる封鎮針であり、地に落ちた雷鳴の眼球の残骸の中に隠されていたものだった。封鎮針が壊れない限り、奈落の本源霊識は消滅しない。


庄莫言が者字印をかろうじて維持し、雷洛の命をつなぎ止めようともがいていると、彼は内心で毒づいた。「何だこの小弱鸡め、自分で来てみろ!」

「いいわよ、すぐに行ってあげるから、あわてないで小弱鸡」

庄莫言は再び頭が真っ白になった。読心術か?それともテレパシーか?月夜無霜ユエヤウウーシュアンでさえ相互伝音しかできないのに、先輩の心はまるで筒抜けだった。


「先輩、ご容赦を……」

庄莫言は必死で謝りながら、「いい勉強料だった」と己を励ました。


すると目の前に慈愛と聖性を兼ね備え、七分の微笑と三分のいたずら心を浮かべた顔が現れた。その顔を見た瞬間、庄莫言は胸の奥から「好きだ」「敬愛する」「どうしようもない切なさ」と「言葉にならぬ感動」が同時に湧き上がった。


夏后星命は、長年思い続けた息子の面影と目の前の庄莫言の顔を見比べた。白く滑らかな肌は瑕一つなく、思わず触れたくなるほど。ほどよい濃淡の眉、長く豊かな睫毛、墨紫色の瞳、すっと通った鼻梁、そしてほんの少しの照れを含んだ唇の端……。母は満足げに頷き、「ああ、ロロに似ず、やはり私似ね」と心の中で微笑んだ。


好調な気分のまま、夏后星命は右手で封鎮針を握り、雷洛の七つの大脈輪を順に封印した。続いて左手で雷鳴を十丈以上先へと一撃で吹き飛ばした。さらに両手で封鎮針を捻ると、その細い針はたちまち成人の腕ほどの長さを持つ木杖となった。杖の先端には円形の孔が穿たれ、柄の根元には「≈」の形が刻まれている。それは「雲在水上」を象徴する紋様だった。


夏后星命は木杖を天へ一振りし、海中の鯨が天を裂くような轟音とともに一閃した――。

奈落の氷山内部の無数の幽藍色の光点が、一斉に木杖の根元へと吸い寄せられ、次いで杖の先端から純白の光点となって噴き出した。


その光点を、夏后星命はすべて雷洛の身体へと注ぎ込んだ。

白い光は溢れんばかりに増え、やがて一つの光の繭となって雷洛を包み込んだ。


──母の手による奇跡の光が、雷洛に新たな命を吹き込もうとしていた。

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