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屋上の霊と視えない風水師  後編

 翌日、ふたりは不動産管理会社の小さな応接室に居た。

 古びたカーペットの上に置かれた、色褪せたファイル。佐久間は、ページをめくる手を止めたまま、黙り込んでいた。

 16階のフロアの一角、そこにあるはずの契約書類───18年前のフロア使用者の名前がどこにもなかった。

「……ここのフロアのこの期間だけ、書類が抜けてるんですか?」

 目の前で資料を説明している女性職員は、困ったように眉を寄せた。

「はい……不思議なんですが、当時の賃貸契約台帳にも記載がなくて。デジタル化された履歴にも空白期間としてしか残ってないんです」

「退去の記録も?」

「ありません。契約履歴そのものがなかったという扱いになっていて……」

「それ、どういう意味なんですか……最初からなかったことになってるってことですか?」

 佐久間の声が、わずかに震えた。

 職員は言葉を濁したまま、目を伏せた。

 ──まるで、存在自体を、誰かが塗りつぶしたみたいだった。

「……俺にしか見えなかったの、そういうこと」

 思わず漏れた言葉に、自分でも息を呑む。

 あの女の霊は、ただ忘れられたんじゃない。

 最初から「いなかったことにされた」

 その怒り、悲しみ、不在の記憶が、あの屋上に──残っている。

「ケイさん……」

 資料を睨むように見つめながら、佐久間はぽつりと言った。

「──これ、祀られなかったというより、祀らせてもらえなかったってやつですよね……」

 隣でスマホをいじっていたケイの指が、そこで止まった。

「……かもな。最悪な形の、無視だ」

 羅盤アプリのログには、日付ごとに点在する反応が残っている。

 毎日、ほぼ同じ時間、同じ場所で現れては消える痕跡。

 ケイが眉間を指で押さえるようにしながら言った。

「……記憶されなかった死者ってのは、祀りの対象になる前に誰のものでもなくなる」

 その言葉が、胸の奥に重く沈む。

 佐久間は拳を握った。

「……じゃあ、俺が視たってことは──少なくとも、あれは見つかったって思ってるってことですよね」

「ああ。お前のこと、目撃者に選んだんだ」

 その瞬間、佐久間の背筋がぞくりとした。


 午後の陽が傾きはじめた頃。

 ふたりは、銅鑼湾の市立資料館の一角にいた。

 ケイはスマホとタブレットを並べて操作しつつ、データベース端末を無言でいじっている。佐久間は傍らで、開架資料のファイルを手にめくっていた。

「……おい、これ見てみろ」

 ケイが指差したのは、数年前のローカル新聞の電子アーカイブだった。


《銅鑼湾再開発ビル、建設中に作業員の転落事故》

《遺族側、現場管理体制に抗議するも詳細は非公表のまま処理》


 その記事には、小さく添えられた追悼の花束の写真だけが残っていた。

 名前も、年齢も、勤務先も伏せられたまま。

「……非公表って……つまり誰かわからない扱いにされたってことですか」

「誰かはわかってたはずだよ。でも、名前を残したくなかった。それが誰の意志だったのかは知らないけどな」

 ケイの言葉に、佐久間は小さく息を呑む。

「それが、記憶されない死者の始まり……」

「そ。で、死者の方もそれを感じてる」

 ケイは画面をスクロールし、続けて別の資料を開いた。


《赤い服を着たままの転落──事故とされた遺体の扱いに不審の声》


「赤い服、着てたんだ」

 佐久間がぽつりと呟く。

 ケイは頷いた。

「事故死で赤い服ってのは、道教的にも風水的にも強く残る象徴なんだ」

 霊になっても赤く見えるのは──その印象が、誰かの記憶じゃなく、死者自身の執念から来ているせいかもしれない。

「……じゃあ、あの霊は、今でも……自分が死んだことすら納得できてないってことですか?」

 佐久間の問いに、ケイは視線を端末から外さずに答える。

「たぶんな。で──だから視られたいんだよ。自分がここにいたって、誰かに気づいてほしい」

 ケイの声は、静かだった。

「選ばれたってのはな……視えるからじゃねぇ。視てくれそうだったから、なんだよ」


 資料館を出る頃には、陽は落ち始め、街のネオンがちらほら灯りはじめていた。

 佐久間は、道すがらふと空を仰いだ。

 高層ビルの上、あの屋上が──闇に沈みつつあるのが、なぜか妙に気になった。

「……ケイさん」

「ん?」

「……あの霊、今日も出てきますよね」

「出るだろうな。だって……気づいた奴がいたからな」

 その言葉に、佐久間は自然と息を呑んだ。

「……あいつ、たぶん……喋ろうとするぞ」

 そして、いたって軽い口調で言った。

「ま、見届けるだけなら、簡単だ。問題は──お前が、どう祀るかを考えはじめた時だよ」

「どう祀るか……ですか?」

「そ、ただの傍観者でいるなら気楽だけど、この霊を救ってやりたいって思い始めたら、もう他人事じゃなくなるって事だ」

 その覚悟があるのか、そう問われたのだ――…。


 夜の銅鑼湾、風が高層ビルの谷間をすり抜ける。

 ふたりはエレベーターを降り、屋上へとつながる鉄の扉を開けた。

 ──時間は、まもなくそれが現れるはずの時刻。

 薄く湿った風が吹き込み、コンクリートの床には昨日と変わらぬ足跡が、淡く濡れたように浮かんでいる。

「……今日も、あるんですね……」

 佐久間の声は低かった。

 ケイは無言で頷き、スマホと電子符を手に取った。

 だが──その手が、一瞬止まる。

「……おかしいな」

 ケイは眉を寄せ、羅盤アプリを見つめた。

 ──針が、震えない。

 それどころか、画面上に表示されるはずの「霊的反応ログ」すら、消えていた。

「気が……流れてこねぇ。……見えない。いや、遮断されたって感じだな」

 自嘲気味に笑って、ケイは言う。

「……ここまで対象の執念が偏ってると、もう気の流れも封じられる。たぶん、俺じゃ何もできねぇかもしれねぇ」

 佐久間はその言葉を聞いて、改めて足元の足跡に目を落とす。

 ──そこに、視線がある。

 まるで目の前の空気が、じわじわと引き寄せられてくるような、そんな錯覚。

「……佐久間」

 ケイが静かに言った。

「たぶん──お前だけに語りかける。あいつの意志が強すぎるんだ。それってつまり、伝えたいことがあるってことだ」

「……俺が、聞くんですか?」

「……お前しかいねぇ」

 ケイの言葉には、覚悟と諦めが混じっていた。

 霊とかかわること、祀ること、それを生業にしてきたはずの彼が、今この瞬間だけ──本当に、何もできないかもしれないと口にしたのだった。


 そして──

 空気が変わった。

 ひと筋の風が、足跡の先から吹き込む。

佐久間の耳元に、かすかに──女の声が届いた。

それは声というには奇妙な響きだった。普通の話し声ではなく、まるで直接、脳の内側にノイズとして染み込んでくるような——そんな異質な感触。

それは確かに、伝えようとする意思。

 顔も、姿も、まだ見えない。

 けれど、そこにいるという気配が、痛いほどはっきりと、佐久間に向けられている。


 ──たすけて。

 ──わたしは……。


 目の前の空間が、ゆっくりと揺れた。

 天井の隅──また、あの女の姿が現れる。

 だが今度は、口が開きかけていた。

 視えている。語ろうとしている。

 ケイが焦ったように振り返る。

「おい、佐久間、何が見えて──」


 その瞬間、佐久間の意識に、ビルからの光景が流れ込んできた──。

 屋上。街。夕暮れ。泣いている誰か。  

 赤い服。指に握られた何か。ビルの縁。  

 背を向けた誰かの影。


 ──見なかったことにされた。


 その想いが、冷たい波のように胸にぶつかった……が、次の瞬間、わずかに空気が反転した。

 耳鳴りのような重低音。

 何重もの霊符が、光を放つのが見えたかと思った瞬間、目の前から、あの女の姿が何の予兆もなく、すっと消えていった。

 それは、何かが成仏したというよりも──強制的に消されたような、そんな感覚だった。


 ──声をかけようとしていた。

 ──何か、伝えようとしていた。

 ──でも、それは、届かなかった。


「……え?」

 その余韻に言葉を失ったまま、佐久間はただ立ち尽くした。

 霊がいたはずの場所には、もう何もいない。空気は無音で、どこまでも静かだった。

 そのとき、隣にいたケイがスマホを取り出し、羅盤アプリを起動する。

 画面の中心、黒点は──揺れていなかった。

 まるで、最初から何もなかったかのように。

「霊符!?……っ、何だこれ……」

 ケイの声に、微かな苛立ちがにじんでいた。

「反応が……ゼロ……? いや……これは……」

 彼の眉がぴくりと動いた。

「──誰か、先に手を打ったな」

 その瞬間、ビルの非常階段の奥から、規則正しい足音が響いた。

 硬く、重く、まっすぐな足取り。

 佐久間とケイが振り向いた先に現れたのは──黒のスリーピースのスーツに身を包んだ、長身の男だった。

 切れ長の黒い瞳は鋭く静かで、あらゆる感情を沈殿させたような無表情。

 黒い髪は後ろで端正に束ねられ、額にかかる前髪はぴたりと整えられている。

 その男の手には──黒檀こくたんのように深い艶を放つ、木簡もっかん

 それは数枚の薄い木札が黒革の紐で繋がれた巻物状になっており、所々に金の符文が浮かび上がっている。

 男は足を止めると、手元の木簡をひと撫でするように開き、一枚の札を静かに抜き取った。

 その瞬間、札に刻まれた印が淡く光を帯び、霧のような霊気を吸収していく。

 まるで、何もかもが「計算済み」だったかのような動きだった。

 彼はまっすぐ、佐久間とケイに視線を向けるとごく短く、しかし圧のある声で、こう告げた。

「──もうあれは消え去った」

 ケイは目を細め、サングラス越しにその姿を見やる。

 そして、ぎりっと奥歯を噛み締めた。

「誰かと思えば……兄貴かよ」

 ケイがぎり、と奥歯を噛んだまま、兄と呼んだ男に向かって睨むような視線を送る。

 しかし、そんなケイの視線を無視するように彼は佐久間を見た。

「……あなたが、視たのですね」

 その声は驚くほど穏やかで、けれど、逃れられない重みがあった。

 佐久間は反射的に一歩後ずさる。

「え……いや、あの……」

「安心してください。今はもう、その存在は完全に静められました。私は林 昊天リン・ハオティエンと申します」

 声は静かで低く、無機質なほどに落ち着いていた。だが、その中に奇妙な圧があった。

 まるで、こちらの思考をすべて読み取っているかのような──そんな無言の重圧。

 昊天は手に持っていた木簡を、ゆっくりと畳む。その動きは、まるで儀式の一環のように無駄がなく、美しかった。

 だが──佐久間の胸には、妙なざらつきが残っていた。

「あの……さっきの霊、彼女……何か、伝えようとしてたんじゃなかったんですか?」

 言葉を選ぶように、慎重に口を開く。

 ケイは一言も発さず、黙ってそのやりとりを見ていた。

「……伝える前に消えたんじゃ、ただの……消去じゃないですか……」

 佐久間のその言葉に、昊天はほんのわずか、まぶたを伏せた。

「視た者がそう思うのなら、それは否定しません。──ですが」

 すっと目を開く。その瞳はまっすぐ佐久間を射抜いていた。

「……あなたが視たということは──もう戻れないということです」

 佐久間の呼吸が浅くなる。

「今は人のままでいられても──これ以上、踏み込めば、もう二度と視えない側には戻れない」

 その言葉には、哀しみでも警告でもなく、ただ淡々とした真実の響きがあった。

「選んでください、佐久間遼さん。あなたは、これ以上視る者として生きますか。それとも──忘れる者として立ち去りますか」

 その言葉の向こうで、ケイがわずかに目を細めた。

「……なんだよ、相変わらず他人の人生を一刀両断するな、兄貴は」

 皮肉を込めて吐き捨てたその一言に、昊天は少しだけ眉を動かす。

「視えていないおまえには、背負えないものがある。それを自覚していれば、私も余計なことは言わない」

「……おいおい、それ、俺に言う?」

 ケイはふっと笑った。けれどその笑みは、どこか切なげだった。

 佐久間は、ふたりのやり取りを聞きながら、自分の胸に手を当てる。

 さっきまでそこにあった、冷たい視線。語りかけようとしていた声。

 それを──見てしまった。

 忘れようとしたって、きっと、もう忘れられない。

 ──俺は、もう……

 佐久間は、昊天の視線をまっすぐに受け止めた。

「……忘れられないと思います。……だったら、俺は……進みます」

 昊天はそれを聞いても、何も言わなかった。ただ、微かに目を細めた。

 その奥で、ほんの少しだけ、ケイに似た面影が揺れた気がした。

 昊天は一礼すると、静かにその場を後にした。彼の背中が非常階段の暗闇に溶けるように消えていく。

 ──そして、残されたのは、佐久間とケイのふたりきりだった。

 沈黙の屋上。

 霊の気配も、結界の余波もすでに失せていたが、どこかに名残のようなものが漂っている。

 その空気の中で、佐久間がぽつりと呟いた。

「お兄さん……いたんですね」

 佐久間の呟きに、ケイはふっと顔をしかめる。

「まぁな。……俺の実家、大陸で道教やってんだよ。いわゆる本家ってやつだ」

 口調は軽いが、その奥に微かに渋い感情が滲んでいた。

 何かを思い出しかけて、押し戻したような──そんな間があった。

「……でも、兄貴のやり方、俺は好きじゃねぇ」

 ケイがぽつりと続ける。

「霊ってのはさ、たしかに怖ぇし、害になることもある。けど、いきなり切って捨てるような真似、俺はしたくねぇんだ」

 佐久間が少し眉をひそめる。

「でも……今の見てると、依頼者側からすれば、一番ありがたいっていうか……安全ですよね」

「そりゃそうだよ。依頼人は被害出さないでほしいって望む。兄貴のやり方は、確実で綺麗だ。祀ることもする。けど、それは選ばれたものにだけだ。普通の霊は、ただ処理されるだけだ。忘れ去られたままな」

 ケイは、サングラスの奥で何かを睨むように目を細めた。

「俺は……忘れられた奴らを、祀り直すためにやってんだよ。いたことを思い出してやる。それだけで、救われる奴もいるんだ」

 それは強い感情ではなく、ただ静かに、深く沈んだ言葉だった。

 佐久間は少しだけ沈黙してから、ぽつりと返す。

「……ケイさんのやり方、俺は好きですよ」

 ケイは少しだけ驚いた顔をしたが、すぐにニヤリと笑った。

「やめとけよ、情に流されるとロクなことねぇぞ」

「でも、俺は……たぶん、放っとけないから」

 その言葉に、ケイは肩をすくめて、ぼやいた。

「……だからチョロいって言ってんだよ、お前は」

「でも結局、彼女が何を言いたかったか、俺にはわかりませんでした……」

 佐久間は彼女が伝えたかった最後の光景を思い出す。

 佐久間は、柵の傍に静かに立った。

 何もできなかった自分が、ただ情けなくて。

 それでも──

「……せめて、あなたがここにいたことだけは、俺が覚えておきます」

 そう言って、そっと手を合わせる。

 形はなくても、ここに確かにいた誰かに向けて。

 ケイは隣で黙ったまま、視線を落としていた。

「お前も、しんどいな……俺も、何もできなかった」

 風が吹いた。

 港の方から、潮の匂いを運ぶ風が撫でるように通り抜けていく。

 それは、まるで──去っていった何かが、名残惜しそうに振り返ったような、そんな感覚だった。



 ビクトリアピークの高台に建つ、高級レジデンスの一室。

 天井まで届くガラス窓の外には、宝石をちりばめたような香港の夜景が広がっていた。ネオンの川が湾をなぞり、更に向こうには九龍半島に立ち並ぶタワー群が幻想的に滲んでいる。

 部屋は静かだった。

 だがその静けさは、金と情報の音で満ちている。

 重厚な木の床にミニマルな空間、モダンな家具、そして壁には抽象画。

 その中心──ソファに無造作に腰を下ろしていたのは、ひとりの痩身の男だった。

 髪は白く、柔らかく流れるように整えられ、襟足は少し長めに首筋にかかる。

 細縁のメガネの奥、琥珀色の瞳が光の加減で金にも赤にも揺れて見えた。

 くたっとした白シャツに、上質なカシミアのカーディガン。どこか気だるげな装いは、リラックスして見えるのに、まるで、知性で編まれた日常をそのまままとっているかのようだった。

 男は眼鏡の奥から、笑みを浮かべる。

 その瞳は笑っていてもどこか、測れない深さを湛えていた。

「やーー、本依頼の前にくだらない雑件、お願いしちゃってすまないね」

 教授プロフェッサー──そう呼ばれるこの男は、飄々とした口調で言いながら、手に持っていたティーポットから、自分のカップに静かに烏龍茶を注いだ。

「屋上の幽霊だっけ?知り合いからね、どうしてもって頼まれてさぁ……ま、貸しを作っておくには悪くない相手だったし、君にも少しだけ時間あるって聞いてね。お願いしたんだよ、林 昊天くん」

 その言葉に、昊天は微かに眉を動かし、静かに一礼する。

「……いいえ。簡潔な処理でした。特に問題はありません」

「久々に会った弟くんはどうだった?まあ、本家に戻る気はさらさらないんだろう?」

 昊天の表情は変わらないが、かすかに息を吐く。

「……ケイは放浪癖があるだけです。あれは、道士としても風水師としても中途半端ですから」

 教授は悪びれもせず笑って、スマホを取り出しながらさらっと言った。

「──で、九龍の件。君に頼むよ。どうやら龍脈がまた、騒ぎ始めてるらしい」

 その声の調子は、何でもない世間話のようだったが、言葉の裏にあるものは──明らかに別格だった。

「政府経由では扱えない類の話でね。あのエリアは再開発が絡んでるし、表立って調査はできない……だからこそ、確実に静かに動ける人材が必要なんだよね」

 教授はスマホの画面をひと撫でし、そこに映る地図を昊天に見せる。

 九龍の地下を走る龍脈──風水的に都市の命脈ともいえるその流れに、微細な歪みが記録されていた。

「──これを見れば、君が必要なのは明白だろう? 今はさ、行政を通すと記録が残るから……ほら、いろいろとね。今回はそういう案件じゃないんだよ、私の名前が記録に残ったら、大陸あちらとの盟約に差し障りが出るしね」

 そう言うと教授は肩を竦めた。

 その画面に映った地図の端には幻影要塞九龍と小さく記載されている──……九龍、それは今は失われた魔窟の名前だった。

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