表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12

閑話2

 タブレットの画面に指を走らせながら、佐久間はため息をついた。

 エクセルに並ぶ文言が、まるで意味のない記号のように見えてくる。

 龍脈の封印をしたものの、まだ佐久間には報告書を上げるという課題が残っていた。

 ——ガラス破砕の状況、現場写真、気象情報、聞き取り内容……

「龍が出た……とは、どう報告すればいいんだよ……」

 こめかみを揉んでいると、

 カラン、と乾いた音とともに、隣の椅子が引かれる。

「ねーねー、佐久間、こんなとこで悩んでるの?」

 視線を向けると、サングラスを額に乗せたケイが、にこやかに頬杖をついていた。

 そして、おもむろに佐久間のタブレットをひょいと覗き込む。

「おぉ〜報告書!真面目!うわ、めっちゃ書いてるじゃん。外的要因による構造材破損……ねえ、それって龍って意味?」

「……さすがにそのまま書けるわけないでしょう」

「じゃあさ、それ書き終わったらさ」

 ケイがひょい、と自分のスマホを掲げる。

 画面には、「茶餐廳(近)・營業中」と地図アプリの検索結果。

「チャーチャンテン、行かない?」

「え、今からですか……?」

「今からじゃなきゃダメなの。報告書に魂抜かれてる顔してるよ。そういうときはね、バター付きパイナップルパンとミルクティーで脳に糖分ぶち込むに限るって相場が決まってる」

「相場……」

「しかも俺のお気に入りの店、今なら牛バラ煮込みメニューがあるんだって。冬瓜入り。佐久間、冬瓜好き?」

「……あ、まあ、どちらかというと」

「じゃ決まり!行こ。俺、先に席取っとくから!」

 言うが早いか、ケイは立ち上がって背中越しに手を振る。

 その軽快さに、佐久間は思わず笑ってしまった。

「……あの人、ほんと、自由すぎる」

 だが、不思議と心の奥の緊張がほどけていくのを感じていた。

 パチンとタブレットを閉じ、立ち上がる。

「ま、行っても……いいか」

 外は冬の風。だけど、ケイが指差す茶餐廳の店先からは、

 バターとスパイスの混ざった、どこか懐かしい香りが流れていた。

チャーチャンテンに行かないと私が落ち着かない感じなので……

ていうか、会社は佐久間に金一封でもだしてくれって感じですねw

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ