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ロマンも裸足で逃げ出すしょっぱい現実


本日はお泊まりなう。


我が家の築30年のお城では無く築ウン百年のお城ってぇのがミソです。いわば父親の実家だ。

我が家も新設とはいえ公国。

諸外国のお偉い様も来訪されるからとそれなりのモノを建てた(!)けど、やはり重ねた年月には勝てんモンもあるのよ、良さもそれぞれだけど。


威信かかってますもんねー。

改築・改装・増築を重ねに重ねた職人芸の極みよ。

時代も様式も異なるのにキチンと共栄共存が成されてるってスゴいとしか良い様がございません。


国の威信でシンポル、それが城!!

シンデレラ城のモデルって何処のだったか?

ドイツだかオーストリア辺りに有ったっけ?

こっちの方が豪華絢爛だけどね!?

世界遺産の建物の良いトコ採りってカンジで。


政治中枢と内政を司る外宮と、王族のプライベートが中心の内宮とに区画が分かれていて、わたしがお泊まりするのは内宮の一角に有る離宮の一つ。

祖父は父親と一緒に基本は公国で過ごすけど、招かれたり帰国した際にはこの離宮が生活の場となる。

っていうかその為に建てられた専用離宮なんだわ。


……帰省用に離宮建てるってセレブぅ!!

でも祖父も父親も思わず聞き返したけど驚いていなかった。つまり奴らには日常茶飯事なのだろう。

根っからの庶民気質な身にはちと荷が重い……。


んで此方では本日の反省会なう。


お題は『各々の対応力について』。

反省会というよりは、父親の「あまりに酷い対応についての反省を促す会」と言った方が正しいかも知れない。わたしは特に問題ナシだそうだし。


喧嘩を売って来たのは向こうだし、単品で考えてもわたしの方が馬鹿より身分は上。侯爵令嬢が大公息女に敵うわけ無いっての。わたしより身分が上なのは王族の皆様だが皆様大人で今現在王族に未成年の王女は居ない。つまりはこの国で一番身分の高い未成年女性はわたしなのである、エヘン。


口調にもキチンと気を付けたし。

ただ……5歳の言葉遣いでは無いとは言われた。

「小さな貴婦人だったぞ!」と帰り際に叔父様が褒めてくれたけど。あれ?褒め言葉だよね?


舐められたら終わるのが貴族。

子供だろうと未成年だろうとそこに変わりは無い。

まぁ程度とか限度とかは存在するだろうけど。

毅然と対応したし、最初から悪いのは全面的に彼方だからね~。とにかく問題ナシだ!!


「……にしても再婚しない!と明確にしたい」


「してもアレだからな、無理だろう」


父親の願いを木っ端微塵にしているのは祖父。

少し聞いていなかったが、説教中心だった反省会が段々と父親の愚痴会に変貌を遂げていた。


そう、この辺りが父親の一番の悩み所。

母親大好きなのは生前も死後も変わらず、持てる身分であっても側室も愛妾も要らん!と常日頃から明言していた。それでも自薦他薦がひっきりナシ。

母親が死んでからその動きは加速したみたいだし。

特に今ならより強力な後妻って枠が出来た訳だし。


どれだけ本人が不要を望もうと、大公夫人なんて魅力的な地位の前には令嬢方の欲望が増すらしい。

当人の意志を悉く無視する遣り方であの手この手で迫るんだから堪らないよね。むしろ悪手だと思うんだけど誰も気付かないのかな?不思議だ。


ちなみにだが、問題の原因となったお馬鹿令嬢は、表向きは公爵家主催のパーティーで騒動を起こした責任を追及する意味で、裏ではこの国の王族を激怒させた事に対する責任を取る形で隣国の貴族に人質を兼ねた嫁入りをさせるらしい。


候補の選別に難航していたそうなので有難い事だと叔父が満面の笑みを浮かべていた。当初、令嬢の家族はこの提案に激怒し反対したそうだが、では王族に対する不敬罪の適用とどちらが良いか?と聞かれてあっさりと娘を売ったそうな。見事な掌返しというヤツですね、御愁傷様です。


まぁ、王族への不敬罪は最悪一家丸ごとの罪に問われて処刑もあり得る訳だから無理も無いけど。

そりゃスパーンっと切り棄てるわ。死なば諸とも!って訳にはいかないからねぇ、当たり前か。

出されたお菓子をモグモグしながら話を聞き納得。


今回のコレが良い材料になって被害が減ると少しは安心出来るんですがもうちょっと無理かなぁ?

派閥が違うからと出席控えた候補者が数名居るし。

身分では一番上にあたる公爵令嬢は居なかったし。

今回の最高身分出席者はあの侯爵令嬢だったな。


で、悪知恵回る分アッチの方がややタチが悪い。

パーティーなどでは自分アピールに徹し、陰で家の力を使ってライバル令嬢達を蹴落としてるそう。

ちなみにわたしは完無視されてます。

その時点でもう父親が自分を嫌っているのだと気付かない辺りが御目出度いご令嬢ですけど。


何度目だったか、その場に立ち会った祖父が気付いてそのご令嬢の執念の割の空回りに半ば呆れていたけれど、問題になりそうでならないその微妙なバランス具合には変な感心も同時にしてたね。

またどっかで顔会わせるんだろーなー、それ考えるとちょっと憂鬱になりそーだなー……。


ところで同席中の叔父様。

こっそりと「後2、3人引っ掛からないかな?」って呟くのはヤメて貰えませんかね?

わたしの席が隣なのでバッチリ聞こえてますよ。


可愛がる弟をも釣りの材料にする冷血具合は君主らしくて頼もしいですけど、一緒に聞こえたらしい父親と祖父の顔がスゴい事になっているのにまず気付いてほしいです。怖いですよぉ!?


あ、背後から二連発で殴られましたね。

バキッドゴッと物凄い音がしましたけど叔父様の頭は無事なのかが少し気になります。

どうやらわたしの心情を覚った父親と祖父が制裁を加えた模様。でも怖いのは貴殿方も一緒なのでどうせなら纏めて反省して下さい!!


どうしてここまでグダ化してるんでしょうか?


……と、半分関係者半分部外者思考だったわたしはココで別の人物に救出されました。

相手は叔父様の奥さん、つまりこの国の王妃様。

父親も祖父ももちろん叔父様も頭が上がらないある意味ではこの国最強の人物なのでアル。


家族としての交流が盛んな為によく会う一人。

身内グダな男連中も、この人が現れると途端に背筋が伸びる。今回は気付かずに自爆したが。


幾度かその場面を目撃し、疑問に思って城を取り仕切る執事長に聞いてみた所、静かな声で『逆らってはなりませんよ』と諭されたのみ、だが。

その後に『女性は怒らせると怖い……』との小さな呟きを拾った。……ナニしたのさ叔母様?!


「5歳の幼子を前に揃いも揃って見苦しい事。そもそも貴殿方がもっとしっかりしていればこの子がいちいち出て来る事態にもならず煩わせずに済んだのですよ?そして度々頑張ってくれてもいるのに事態は一向に好転しないし。不甲斐ないにも程がございませんこと?皆様」


「「「………………」」」


更に項垂れる男性3名。

その言葉に、あの時感じた疑問が一層高まる。

にっこり笑顔で諭しているのに、暖房で暖められて快適な筈の城の部屋で冷水浴びせられた気分に陥るなんて普通じゃあり得ないんですがね?


3人は既に元の勢いはすっかりと失せて萎びた菜っ葉状態。見ているだけで可哀想だと思えます。なので叔母様、お手柔らかにとは思います。

でも口には出しません。

だってわたしだって自分が一番可愛いもの!!


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