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売られた喧嘩は倍額(以上)で返すの法則


ココに一人の究極の馬鹿が居る。


何度かパーティーに出席していて気が付いた。

必ず近寄って来る『奴等』に法則が有る事に。


わたしの父親は前にも言ったが高優良物件である。

地位も財産も文句無しピカイチな上に顔も良い。

年齢もまだ30前だから初婚の女性でも狙いやすいし。まだ年齢差が少ない分、社会的にも変な目で見られないからやはり安心なんだろう。


ただしそのガードは滅茶硬。

笑わない・喋らない・目を合わせないの三段活用。

それでも父親の周りには女性達が群がる。

大体が同じ面子で掛けて来る言葉まで一緒で、やはり無視一環決め込まれて追い払われて終わる所まで同じ。コントを見ているかの様だ。


強者だが馬鹿でも有る。

皆様、侯爵以上のご令嬢方なのだから教育はバッチリ施されている筈なんだけどなぁ……?


などと、何処をどう見てもコント劇場な光景をほぼ他人事で脇から見ていたわたし。場所はもちろん父親の横、ちょうど腰の辺りに顔がある。

片手はしっかり握られて捕獲状態な為動けないし。

なので静かにして傍観者に徹していたけれども。


ただ今、傍観者に徹してられない事態発生中!!


「我が儘なお子様のご機嫌取りの為に一緒に居るなど苦行でございましょうに?聞き及ぶ所では、癇癪を起こしてはメイドに八つ当たりをして怪我まで負わせるとか?あぁそれで今までにもう何人も退職者が出てるとまで。やはり子供は母親がキチンと躾なければ駄目なのでしょうねぇ……」


あからさまにその『お子様』がわたしだと言わんばかりの視線を向けて猫なで声で父親に話しかけて来た一人の令嬢、あるいは究極の馬鹿。


うん、問いたい部分が一つじゃ無いな。

ご機嫌取りをしているのはむしろわたしである。

癇癪を起こすのも父親であってわたしでは無い。

聞き及ぶ所とは一体何処からなのだろう?

ウチでわたしが生まれてから辞めた人居ないし逆に高給で働き易い職場だと評判だそうだし?


……うん、ホントにドコ情報なんだろうね?!


ちなみに偉そうに話を進めてるそこの貴女。

言いたい事は分かるがその前にちゃんと父親の顔を確認した方が宜しいですわよ、念のために。

一緒に居たお仲間も何歩か後退してらっしゃるし。


それに念のために擁護しておけば、わたしはキチンと公女としての教育と王族としての心得を学んでいる。順位は低いが王位継承権持ってますから。

叔父様とその子供がそれぞれ複数居る関係でね。


偉そうな説教はまだ続くようで、父親の横に並んで聞こえる言葉を無感動に受けて無表情を装いながらその無駄に張っている胸を見上げてふと気付いた。


あ、ズレてる……と。


下から見えるからよく分かる。

ナニを詰め込んでいるのかは知らないが、上から見るとどうなっているのかは不明だが、胸の一部が異様な形に歪んでいた。確かに思い出せる母親は細身の割に豊かなお胸はしてたけど、父親は別に胸にホレた訳では無いだろうに、多分……?


仕方ない。

いや、ズレてるお胸は放置しますけどね。

チラリと真横を見上げ周囲に視線を向け、溜め息を押し殺して顔を上げる。そろそろ色々限界だ。

我慢してたがそろそろ反撃のお時間で良いだろう。


キンキンと甲高い地声で猫なで口調にするだなんてある意味高等技術だが、同時に無駄でしか無いので止めた方が良いと思うの。需要も無いしね。


その声だと周りに響いて聞こえやすいんだわ。

お陰で凄い形相した国王陛下とオロオロな彼女の身内っぽい人達が視界に入って来た。騒ぎが倍増するより多少強引にでも終了させた方が得策。

その後は……うん大人に委ねよう、そうしよう。


「我が儘なお子様とは貴女の事ですの?」


「……なっ!?」


ズラズラ並べられていた悪口の羅列をぶった斬る。

しかし悪口の語彙力“だけ”は豊富だねー貴女。


可憐で儚げな容姿は母親譲り。

黙って立っていれば100人にそう思わせられるから最大限に黙ってろ!と助言された教育係の先生、ごめんなさい。今度は黙ってるとツケ上がる奴への有力な対処方法を伝授願いますね。


にっこり笑顔で表現方法は素。

でも口調にさえ気を付ければ成りが子供だから毒を籠めても馬鹿にした感は減る、ちょっぴりだけど。

ついでにちょっと小首を傾げる演出付きで。


後は淑女の必須アイテム『扇子』の出番でしょう。

キチンとわたしに合わせたお子様サイズの特注品。

要らんだろ!と思ってたけどお役立ち品ですね。

オススメしてくれた店の方、済まんかった!!

半分程に広げて口元を隠せばハイ準備完了。


「『噂を真実として捉えるのは愚か者』。わたくし、教師からそう習いましたけどまさか王族専任の先生方が嘘を王族に吹き込む筈はございませんわよねぇ?あぁそう、『噂とはただの情報に過ぎない。キチンと精査して真実を自分で見極めよ』とも伺いましたわ。そしてその教えは王族に限らず高位貴族であれば男女問わずに子供の頃から教わるとも」


王族専任の教師からの教育を受けている。

その言葉に周囲はもちろん、目の前の愚か者も目を見開いて息を呑む。でも逃す気はないので。


「創作を事実の如く語るのもまた才能。ですがそれは演じる事が役割の役者の才能であって貴族令嬢の誇るモノでもございませんわよねぇ?」


たとえ継承順位は低くとも所有していれば王族。

その上でちゃんと王族教育も受けている。しかも国王陛下直々に任命された教師達によって、だ。

そんな人間が愚かな真似をするとすればその教師が間違った事を教えているって事になる、かも?

う~ん、ギリアウトな王族批判だよね、コレ。


ついでに付け加えたのは、だ。

実際にそう教わった際に教師達から聞いた事だ。

高位貴族の子息は将来国の根幹に携わる職に就きやすく、そしてそれを支える伴侶となるのも高位貴族の令嬢が殆ど。だから必須要項なんですとさ。


んでこの愚か者は、世間の噂を信じてそのまま人前で公言断言してくれた訳だよ、わたしの事を。

高位貴族しか参加出来ない筈のこのパーティーに居るって事は高位貴族の令嬢の筈なのに、高位貴族必須要項の教育とは正反対な事を仕出かしてくれた。


……さて、他の参加者の皆様はどう思うかね?


このお馬鹿お嬢様はわたしの父親が狙いだろうけど相手にもされておらず、尚且つご自分からその立場を手離した。本人気付いてないみたいだけど。

何せ彼の逆鱗に触れたのだ。

愛娘批判は一番しちゃいけないコトだってのに。


んで周囲にいらっしゃる方々もお気付きだろう。

若い男女の参加者が多いこのパーティー、婚活の出逢いの場であると同時に親も一緒に参加して相手を見極める場にもなってるのよ、実は。


つまりコレって、この本人が馬鹿で価値無しと完全な認定された瞬間だったりする訳だ。この国の大公令嬢を怒らせた上に大公に喧嘩を売ったヤツと。

そんな女性を家に迎えたいと思う親はまず居ない。

息子としてもんな女と添い遂げたいとは思わない。

少なくともこの国の高位貴族の家にはもう嫁げない事が確定致しました、御愁傷様ですね。


まぁ同時に自業自得なんだけど。


ようやく自身のやらかしに気付いたのだろう。

言葉を止め、真っ白な顔で震えだした馬鹿だがもう遅い。向けられるのは侮蔑の視線のみだ。


だからといってわたしは追及の言葉を緩める気は無く、重ねて周囲への牽制も兼ねて言い放つ。

今後に向けての自身の行動安寧の為にも大事。


「あぁ前に読んだ書物にもございましたわ。向けられる善意に対しては2倍に、悪意にはそれ以上のモノを返すのが将来の平穏に繋がると。わたくし、倍率を如何ほどにすべきか模索中ですの」


にっこり笑顔でトドメに太い釘を刺しておく。

これで少しは馬鹿は減るだろう。……多分。


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