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外見詐欺の生ける見本な我が一族


例外は母のみかぁ……とつい思うわたし。

父の数少ない交友先でも誰もが口を揃えて言う。

『彼女は外見も内面も最高の淑女だった』と。


だからこそ一層思う。

あらゆる意味で母スマン!と真摯に誠実に。

本来なら瓜二つだったかも知れない“自分”にも。

でも現実に生えてしまった『わたし』。

なっちまったモンはしゃあ無ぇべと開き直ったのはいつ頃だったか?……憶えて無ぇし!?


異世界転生を完全自覚したのは3歳の時。

それまでは薄らボンヤリと何となく夢の世界だと思っていた前世の科学に満ち溢れていた世界。

自分の知る毎日の生活からは考えも及ばない様な、便利で何でも直ぐ調べられて知れたり連絡したりする道具や、移動も簡単に遠方まで気軽に出来る乗り物が存在するなんて信じられなかったから。


だからこそ夢の世界だと思ってた、小さかったし。


ハッキリと明確になったのは3歳過ぎてから。

それまでの薄らボンヤリ感からいきなり覚醒した。

んで、ココはドコ?わたしは誰?!状態。

あの日は半日、怪しいダンスを踊ってた感じで。


3歳の奇行になんて慣れてたのか、周囲はわたしのアホさをあんま気にしてなかったけどね!?

あらまた新しい遊びですか?と聞かれたし!?


……あーでも一人だけ居たな、騒いだのが。


もうその頃には臥せていた母。

会えてもほとんどベッドの上に横たわる姿だった。

わたしと会う時には起き上がって撫でてくれたり、少しだけ話したりもしたけれど、やっぱりベッドから離れられない生活になってたっけ。


最愛の妻がベッドに臥せた生活。

その最愛の妻から産まれたそっくりなわたし。

それが急に変になった!とお嬢様付きメイドから報告入ればそりゃ取り乱すわな、何せ父だし。


仕事を放り出して速攻で駆けつけやがりました。

元気なトコ見せて、泣き喚く父をそのまま乗ってた馬車に押し込んで城へと送り返したっけ。

今ならイイ思い出……にはならんわな、やっぱ。


で、大公殿下たる父に見初められた母。

でも身分は?と聞かれれば、国の始まりからある旧い侯爵家の令嬢だったけれど、堅実な領地運営とは裏腹に運の無さが追い討ちを掛けての天災続きによる凶作でその内情はかなり悲惨だったそう。


領民に寄り添う運営方針を貫き、税は上げずに自身の財産を切り崩して何とか維持していた実家で、お嬢様ながらに質素倹約精神で幼少期から過ごした母は、やはりと言うべきか貴族の義務である王都の学園で同年代のお嬢様達とは馴染めず孤立。


たとえ礼儀作法や勉強は完璧に出来ても高位貴族のご令嬢はそれだけでは無いからね、やっぱり。

必要なのは流行を追い求める華やかさと社交界で生き抜く為の貪欲さ。母には両方無かったから。


でもだからこそ、肉食獣を徹底的に嫌悪していた大公殿下の心を射貫いた訳で。ある意味皮肉な話。

肉食獣女子もそれなりに自分を磨くのは、元はと言えば身分の高いハイスペックな旦那をゲットする為の努力みたいなモン。ただしほとんどの場合、他の女子を蹴り落とす手段も磨くからダメなんだろう。


ご多分に漏れず母も陰湿な虐めにあったそうで。

そんな学園でひっそりと耐えていた母だったがある日大公殿下と運命の出会いを果たす。で、見初められて付き合い始めてからは虐めは終了したそう。


………絶対にナニかヤったよね、父ー?!


その後は大公家が母の実家の侯爵家を援助して立て直し、学園在学中は父が徹底的に母を守って卒業して無事に婚姻へと持ち込んだ。うん、稀にみるラブストーリーだあね、スゴいスゴい。


この辺りは父からよく聞かされはしたけれど、語ると長くなるので割愛。ついでに親の惚気を聞かされるって結構な拷問なんですよー……。


そして半年前にお星様になった母。


……その後、わたしの生活は一変しました。

それまでは、昼間に少しだけ淑女教育を受ける以外は然して忙しくもなく暇をもて余していたわたしだったが、母が亡くなってからは外出が増えた。

その原因は……言わずもがな父でございます。


母の葬儀の後、半死人と化した父。

前にも話したかもだが一週間引き籠った、寝室に。

引っ張り出したのはわたし。

正確に言えば、わたしをダシにして父の兄とその父が無理矢理強引に物理的に引っ張り出した。


父と25歳違いのわたしの叔父と、70過ぎても若々しい祖父に文字通り妻の思い出残る楽園から叩き出された父は、現役復帰の希望に何とわたしの身柄を要求したのだ。常に連れ歩く者として。


引っ張り出したダシなら何度でも!と思ったかどうかは不明だが、何度か会いはしてるがあまり付き合いは無い筈のこの薄情な叔父と祖父は、父可愛さにわたしを簡単に売り飛ばしやがりましたし?!

わたしもどうせ家で暇してるだけなので早々に諦めて同行する事を了承しましたけどさ。


朝に起きて身支度済ませたら、迎えに来た父の抱っこで一緒に食堂に向かいその膝の上で朝食を。

また今度は外出用のドレスに着替えさせられて馬車に乗り込み父の膝の上で一緒に城へと出勤し。

父の執務室では執務机の横のソファーで大人しく数時間を過ごし、昼食とお昼寝もそこでする。

帰りももちろん馬車の父の膝の上での帰宅である。


そりゃもぅキッついわぁ…………。


あー、一つ付け加えるならば、わたしにも一人の時間が欲しい!!と幼児相応の我が儘と愛らしい外見をフル行使しまして、父膝抱っこの夕食の後は自由時間を何とかゲット致しました。


まぁそもそも娘と言えども幼女と言えども、添い寝はともかく入浴を一緒になど破廉恥過ぎる言語道断な振る舞いな為、我が家の長年勤める執事長と侍女長が半日の話し合いの末に止めさせた経緯が有ったりする。父が迷惑掛けます、スミマセン。


添い寝に関しては父も粘り、何とか週に一度で妥協させたのだが、説得にプラス半日、合計丸1日を要した事だけは先に述べておく。

本っ当に重ね重ね父が以下同文……!!


無事にとは言い難いものの、表面上では大公殿下が公私共に復帰なされてやれメデタシ……とは残念ながらならなかった。困ったコトに。


どんな世界、どんな国でもやっぱり男尊女卑は存在する様で、基本的には直系長子が跡取りと決められては居てもそこは男子優先な爵位継承事情。

女子でも継げはするけど忌避される傾向が強い。


我が家には子供は一人でしかも娘。

やはり男子を!と遠い親類共が父に迫り、後妻の地位を狙う肉食獣共はこのチャンスにと再起し、その標的にされて付き纏われて再び引き籠りになりかけた父。……その結果、わたしのお出かけ回数も倍増しました。虫除けとしての社交界パートナーで。


どうしても必要で、わたしの出席出来ない夜会(だってわたしは5歳)に限っては王族席に、それ以外のパーティーなどの参加はわたし同伴でとの再条件を提示して認めさせて父は社交界復帰をようやっと果たした。それでも色々と揉め事多い。


そもそも5歳で社交界デビュー!?


まぁ大公息女なのだからいずれは……と覚悟はしていたがそれにしたって早過ぎるわっ!!

しかも初期段階の子供交流のお茶会スッ飛ばして大人なパーティーとはコレ如何にっ?!


中身が父親より歳上の、立ち直りと開き直りとが取り柄の『わたし』じゃ無きゃ過労死してるかもね、この子。繰り返すがまだ5歳なんだし。


既にマトモな人生を歩めないであろうイヤな予感に、父親に抱き振り回されながら遠い目をするしかないわたしでありましたよ全く……。


それとですね。

……叔父様、笑っとらんとナンとかせい!!


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