魔法の杖
魔法使いには必須のアイテムがある。
いわゆる「魔法の杖」ってやつだ。
肉体から魔力を引き出し、そして放出するには杖が必須だ。
だが杖の殆どは希少な神木から作られていて、今では殆ど作られていない。
ただでさえ作るのに時間と手間がかかるのに、肝心の魔法使いが殆どいないからだ。
俺はマリンからある人物の話を聞いた。
俺がバーテンをしている酒屋からそう離れていない所に魔法石の店があるんだが、そこの主人が昔、魔法使いの杖を作っていたという話だ。
早速俺は、店に向かうことにした。
マリンの研究室から店まではそこまで離れていない。
手術明けのリハビリには丁度いい距離だ。
すると「魔法石ショップ、オカジ」と書かれた看板が早速見え始める。
店のドアをノックすると、俺は店内に入った。
「おお、いらっしゃい。さて、どんな魔法石をお買いになるのかな?」
白髪に、小さな木の杖をついた老人が現れた。
この人が店の主人のオカジだろう。
店には大量の魔法石が置かれていて、中には抱えきれない位デカい石もある。
俺はさっそくオカジに例のことについて聞いてみた。
「早速だが、魔法使い用の杖を作ってほしい。アンタなら作れると聞いて来たんだが」
「魔法使い用の・・・杖じゃと!?」
一瞬、ギョッとした表情を浮かべるオカジ。
「いや、しかしあれは道楽用には与えられん。遊びで使うには危険すぎるものじゃ」
どうやら、俺が遊びで買いに来たと思っているらしい。
きっと、そういう目的で買いに来た奴らがたくさんいたんだろう。
「違う。俺は正真正銘の魔法使いだ。魔法を使うために、アンタの杖がいるんだよ」
フム・・・と頬髯を弄りながら俺の顔を見ている。
どうにも信じられない、という様子だ。
「頼むよ! 新しい杖がないと困るんだ!」
「そこまで言うのなら売ってやってもよいが・・・ただし、ワシの杖はもう何十年も前の型落ちものしかないぞ?」
杖に型落ちとかあるのか。
ついさっき魔力をゲットしたばかりの俺は魔法使いに関しては全くの無知だ。
「じゃが、そこまで言うのなら一つお前さんに試してもらいたい杖がある」
だが、オカジは何か試したいことがあるらしい。
そう言って何かを取りに店の奥へと向かった。
そして片手に大きな一本の杖を持ってくる。
「これはな・・・ワシが昔盗ん・・・ゲホッゲホッ! 人から貰ったものなんじゃが・・・」
おいジジイ。今何か言いかけたな。
「この杖の性能を一度試しておきたかったのじゃ。もし使えるなら、お前さんに貸してやっても良いぞ」
するとオカジは言った。
「もしかするとこの杖・・・伝説級の杖かもしれんぞ」
はい来ました。勝ち確定。
これで俺は最強、やっぱこれだよね鉄板パターンは。
「実はな、あまり声を大にしては言えんがこれはかなり昔にワシが人から貰った物・・・・というより勝手に持ってきてしまった物なんじゃが、この杖の性能が未だに良く分からんのじゃよ」
「え? オカジさん、杖を作れるなら見ただけで杖の性能とか分かるんじゃ?」
「普通なら分かるんじゃが、この杖は少々形状が変わっておってな。恐らくワシが生まれる遥か前に作られた、学術的にも貴重な杖と見て間違いないじゃろう。今時魔法使いなんぞもうおらんからな。出来れば、これを使ってもらってお前さんにこの杖の性能をある程度計ってもらいたいんじゃ」
確かによく見ると、杖の古びた感じは普通の杖とは違う気がする。
素人だから、それ以上のことは分からないが。
「もしお主がこれを使いこなせるのなら貸してやっても良い」
で、俺は強くなってドラゴンを倒すと。キタコレ。
やっぱりこれくらいテンポが良い方が話が早い・・・
「ではまずは、ギルドから支給されている魔法使いの認定証を出してみよ」
・・・・はい?
「魔法使いなら全員持ってるじゃろ? それともお主、無免許で魔法使いを名乗っておるのか?」
いやいやいやいや、そんなことないって旦那ア!
・・・はい、その通りです。というかまだ魔法を使えるかもよく分かりません。
もちろん、そんなことは絶対言えない。何故なら・・・・
「まさかお主・・・違法に魔力を増強したのではないだろうな!!」
途端にオカジの目が厳しくなった。
俺がこの質問だけはされたくなかった理由。
この世界では、手術で魔法を増強するのは大重罪だからだ。
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ケント・ゴールドレオン
年齢 20歳
性別 男
借金 10,000,000,000ゴールド
収入 なし
職業:剣士(無免許魔法使い)
職業ライセンス:荷物運び
所属ギルド:うさぎの小屋
所属クラン:なし
称号:なし
所持装備:錆びた剣(すぐ折れる)