7…森の中②
「ユーキさん、今日の衣装は、今までの雰囲気とはまた違いますね?」
とハナラさんは、
疑問を持ったようで聞いてきた。
それはねー。
この前のバズり動画を意識したんだもの。
心の声がそう言っている。
(心の声?)
協力者さん達の前で、
呼びかける。
寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。
今までどこでも見たことがない、
ファイヤーモンキーの
〇〇〇が見られるよ。
そうは言ってるもの、
ファイヤーモンキーの姿はなく、
現段階では気配すら感じられていない。
「ファイヤーモンキーいないよね。」
と、子ども達からの声が聞こえてくる。
トーン トントン…♪
太鼓をリズミカルに叩き続ける。
トーン トントン…♪
そしてその時、
何故だか確信かのように、
協力者さんの前で、
大袈裟に、
元勇者のユーキは すっ転んでみた!!
「わぁー。ユーキさん大丈夫ですか?」
慌てたハナラさんが、急に立ちあがろうとしたものだから、
体勢を崩しかけている。
次の瞬間、
木陰から、
大型のファイヤーモンキーが
飛び出してきた。
こんなにも近くに隠れていたのか。
なんと恐ろしい警戒能力!!
あと少しで元勇者のユーキに
ファイヤーモンキーが届こう…という瞬間、
私は
大きな声で叫び、
同時に悩んでいるような、考えているような
表情とポーズをとった。
「反省!」
その言葉と動作に、
ファイヤーモンキーも直ぐに反応し、
何と!襲いくるのを止めて、
元勇者の私の頭に、
ポン!と、
手をついて、頭を下げた
「ペコリ」のポーズをとりながら…!!
やった。成功した。
これが、ファイヤーモンキーとの
信頼の証し!
主従契約等いらない、
ファイヤーモンキーの〇〇〇
(=猿回しなのよー!!)
協力者と子ども達は、大笑いと拍手喝采。
ハナラさんは慌てつつ、
見たことも想像すらもしなかった結果に、
口が開いてしまっていた。
全く新しい、
主従契約の完成形となった。
それから、記憶を辿り、いくつかの芸を
ファイヤーモンキーと披露し、
このファイヤーモンキーと元勇者ユーキの関係は確かなものとなった。
………実は、森に住んでいるファイヤーモンキーは、
お笑いが大好きだったのである。
襲われた街の民は、
果実を
街に帰るまでの道中で食べていて、
その皮を踏ん付けて転び、
気にも留めていなかったが、
警戒しつつ様子を見ている
ファイヤーモンキー達は、
「オチ」がない事に、
本能的に憤慨し、襲いかかっていなかったのである。
その後、協力者と子ども達、ハナラさんも含めて、
全員ですっ転び、
「反省」とポーズをとると、70匹の
ファイヤーモンキーと
「ともだち」になれたのだった。
初めての連載中です。
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