12…眠りから目覚め
「ユーリさん。デザインできました。」
目覚めるとそこは、
カタカタカタカタ…と
ミシンの音が心地よく響く
小さな工房だった。
うん。素敵ね。
イメージに合ってるわ。
色とりどり、肌ざわりも様々
と一目で分かる布が
沢山ある。
では、裁断始めるわね。
と違和感を一握りも感じることなく、
ユーリの記憶が流れ込んできて、手が動く。
ハサミと
どこからともなく飛んできた布が
宙で踊りながら、
イメージ通りに切れていく。
私、ユーリは
「モノの形状や動きを変化させ、
その変化をモノに付与できる魔法」
を使って、
洋服の仕立て屋をしている。
ひとたびデザインが決まり、
依頼者を思い浮かべると、
必要な大きさ、必要な枚数の布
のイメージが湧いてくる。
今日は、水の精霊から依頼があり、
水を
薄い面状の形に変化させて
動きをその場に留めさせ、
布に仕立てた。
その布から
ワンピースを作っている。
精霊達はそもそも、
そのモノから生まれてくるので、
自分で思うがままに
体の一部として、
衣服のように纏わせることができる。
しかし、時に、
水の精霊は、
鏡のように映る自分の姿の一部に、
他の種族の姿を重ね見て、
自分にないモノを求めたくなったのだと言う。
そこで、
光の精霊にも許しをもらい、
水面に映った光の一部をそのまま貰い受けて、
スパンコールやビーズのように
キラキラ光るのが美しい
布に仕立てたのである。
…………
今までの水の精霊の服とは
イメージを変えることも大切なので、
首元までしっかり
人間で言う肌を隠せる
デザインにした。
袖、裾を長めにし、
ゆったり、かつ、ふんわり感を演出。
布の軽やかさが、
動くことで感じられることも重視した。
「さて、〇〇橋に行きましょう。シュザンヌさん。」
奥の部屋で、次の依頼のデザインをしてくれている
シュザンヌさんに声をかけた。
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