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カオス

俺とお前

作者: 寿々喜 節句

 俺 ((※1))とお前 ((※2))の距離が縮まったのはハリコー ((※3))の元祭 ((※4))のあの時 ((※5))だった。

 そんなお前がF ((※6))と一緒になるなんて、千福 ((※7))もなかなかやるじゃんって思った。そんなことを考えてたら二人でカミナリ ((※8))に怒られた、空き缶事件 ((※9))のことも思い出して、自然に笑っちまった。

 当時 ((※10))は俺も若かったけれど、今はもう立派な大人だ。

 心から素直に「おめでとう」と言える。でもお前には「コング ((※11))」のほうがお似合いか。俺にしか通じない言葉 ((※12))だな。久しぶりに使った。

 Fがジック ((※13))と別れたと聞いたとき、俺も本当は心が動いた。

 でも一番Fを思い続けていた ((※14))のはお前だったんだな。

 お前とFはジョウ ((※15))に行くんだろ?

 俺は変わらずトコ ((※16))にいると思う。

 たまには顔見せに来てくれよ。その時はドーダン ((※17))持ってこいよ!

 それじゃあ末永く幸せにな。

※1 “俺”

 長谷川はせがわ太一たいち。三十歳。男性。小さい頃の夢はラーメン屋だったが、今は福祉施設職員をしている。好きな食べ物はハンバーグで。びっくりドンキーでは“おろしそバーグディッシュ”をよく注文する。少しバカっぽいけれど、運動神経が良く、爽やかな感じが憎らしい。


※2 “お前”

 杉浦すぎうら浩紀ひろき。三十歳。男性。ずっと車が好きで、今はバスの運転手 ((※18))をしている。チョコレートが大好き。おとなしい性格だけれど、お笑いが好き。


※3 “ハリコー”

 張本高校の略称。太一と浩紀はこの高校出身で、二人のような地元民はハリコーと略している。最近校舎が新しくなった。二人が通っていたのは旧校舎は新校舎の裏にまだ建っていて、お化け屋敷同然の扱いを受けている。


※4 “元祭”

 ハリコーの文化祭、元気祭の略称。田舎町の高校なので、地元の人たちも毎年楽しみにしている。


※5 “あの時”

 にぎわう元祭の中、一人で本を読んでいた浩紀に太一がなんとなく声をかけた。

「一人でしてんの?」

「本読んでる」

「面白いの?」

「元祭よりは」

 この何気ない会話から二人は友情を育てていった。


※6 “F”

 中川なかがわ文子ふみこのあだ名。太一と浩紀と同級生の女性。顔も頭もいいが、口うるさく、二人にとってはお母さんみたいなやつ。小さい頃の夢はお花屋さんで、その夢を一度は叶えた。 ((※19))


※7 “千副”

 地元のお寺、千副せんぷくのこと。古びたお寺で、地元民しか知らない。子供たちはよくここで遊んだりしている。


※8 “カミナリ”

 お寺の住職のこと。すぐにかっとなる性格から、地元の子供たちからカミナリと呼ばれている。本名は田中たなかじん。趣味は演歌を聴くことと、吉永小百合の作品を観ること。


※9 “空き缶事件”

 太一と浩紀の二人が千副寺のお賽銭箱に空き缶を並べ、石を投げて遊んでいたところ、それを見つけたカミナリにこっぴどく叱られた、という二人の思い出。


※10 “当時”

 高校二年生の夏。どんな大人になるかなんて考えもしていなかった、そんな頃。


※11 “コング”

 コングラチュレーションの略。おめでたいと感じたときに、太一と浩紀は使っていた。


※12 “俺らにしか通じない言葉”

 コングもそうだが、太一と浩紀は二人だけの暗号みたいなものを作って遊んでいた。中二病みたいなもの。他にはインタレ ((※20))、ディフィ ((※21))、デリシャ ((※22))、など。とにかく英語の最初の部分だけを言う遊び。


※13 “ジック”

 はやしじくのあだ名。男性。太一たちの同級生。高校の頃からモテる男で、彼女をとっかえひっかえしていた。しかし大学を出るころ、文子と付き合い始め、おとなしくなった。


※14 “思い続けていた”

 太一も浩紀も実はずっと文子のことを好きだった。だけれどそれを二人は打ち明けられずにいた。しかし太一と浩紀と二人で千福寺に行ったとき、浩紀はお賽銭を投げると「文子と結ばれますように」と声に出して手を合わせた。太一は「千福じゃむりだろ」と言ったが、内心驚いていた。そしてその時、太一は文子を諦めた。


※15 “ジョウ”

 太一たちの住む市内の大きい駅のあるあたりの、栄えたところの愛称。上等な場所という意味で“上”とよばれるようになったという説が有力候補。


※16 “トコ”

 太一の住んでいる地域の愛称。この愛称については説はなくだれがいつ頃呼び始めたのかも不明。


※17 “ドーダン”

 市の名物“どんぐり団子”の略称。トコには売っているところはなく、ジョウまで行かないと買えない。どんぐりとあんこを混ぜた人気の一品。


※18 “バスの運転手”

 路線バス。ジョウの駅からトコの営業所までをつなぐ、地元民に愛され続けているバス会社。


※19 “その夢を一度は叶えた”

 憧れの花屋で働き始めた文子だったが軸と結婚をすると、「働くな。家にいろ」と軸から言われ、泣く泣く退職した。それから軸に対して文子は不信感や不満を持つようになり、結局は離婚した。


※20 “インタレ”

 インタレスティングの略。面白いと感じたときに、太一と浩紀は使っていた。


※21 “ディフィ”

 ディフィカルトの略。難しいと感じたときに、太一と浩紀は使っていた。


※22 “デリシャ”

 デリシャスの略。美味しいと感じたときに、太一と浩紀は使っていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 何これ面白いのです~(´艸`*) よく思い付きましたね!! そして実行しようとしたのがもっとすごいのです(*´▽`*) 一度注釈を見ずに読んで答え合わせをしましたが、全然駄目でした(笑)…
[良い点] なんだこれ。(笑) 久しぶりに見ました、こういう小説。 話の内容よりも、そのスタイルを評価すべき小説ですね。 [一言] 古文の注釈みたいに同ページに書けたらいいのに、とも思いましたが、上か…
[良い点] さすがカオスの神様な節句さまです( *´艸`) ツッコミどころ満載でどうしていいか分かりません笑
2022/04/17 07:26 退会済み
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