93話 タッグバトル④
「地雷程度に怯えてる暇なんてないのよ!」
《アイアン・マイン》が発動され、移動にリスクが伴う状況にも関わらず、愛那はカレン目掛けて直進する。
「へえ…勇気あるじゃん」
「動かない方があなた達の思うつぼでしょ!」
「…さすが」
愛那の度胸ある行動に、カレンは少し嬉しそうに笑うと《バスターソード》を強く握りしめる。
ガキンッ!
《オメガ》と《バスターソード》が衝突する。
(愛那…どういうつもりだ?)
先ほどと同じ状況の再現にシンは困惑を隠さなかった。
今はなんとか競り合えているが、やはり大剣にショートソードで力比べは分が悪い。
確実にまた愛那が競り負ける。
さっきは《シャドーダーツ》からの不意打ちでカウンターしたが、カレンに同じ手が何度も通用するとは思えない。
シンが試合を見守っていると、愛那は祐乃にチラリと視線を送った。
「祐乃!準備してて!」
突然の指示に震えていた祐乃はハッと現実に引き戻される。
(そうか!愛那の狙いは―――)
愛那の指示を受けて祐乃が、魔力のチャージを開始する。
過度な魔力生成を行い、マジックギアからバリバリと音が鳴り始めた。
反動ダメージを受ける危険な行為だが、強力な魔法を放つための事前準備として必要なものである。
―――愛那の狙いは間違いなく合体技『シャドウ・エクスプロージョン』だ。
(愛那は魔力チャージをしている暇がない。なるほどな、祐乃に必要な魔力を準備させるつもりだな)
シンは愛那の思考を読み取り関心する。
合体技は魔力を一定数用意してから、お互いに手を合わせることで放つことができる大魔法だ。
理屈上、パートナーに魔力を肩代わりしてもらえば、問題ないのである。
しかしーー
「何を狙ってるか知らないけど妨害させてもらうっすよ!《超音速!ソニックブーム!》」
妨害するため、ハヤトは祐乃の前に立ち塞がると魔法陣を作り上げた。
ズウォンッ!
「うわあっ!」
激しい音とともに、空気の塊が衝撃波となり祐乃に襲いかかる。
しかし、《シールド》を展開すれば防御は可能な状況ではあった。
判断が遅れたのだ。
チャージをしていたから?
それも原因の一因だが、それだけではない。
(マズい…また母親の顔色をうかがって震えている…!)
自身の両腕を掴みガチガチと震えていた。
―――あまく見ていた。
祐乃が負っている心の傷はシンが想定していたより何倍も深かった。
まさか動けなくなるほどとは…
「もう一発、入れてやるっすよ―――」
ハヤトがもう一度、魔法陣を展開する。
しかし―――
「《唸れ、暗黒・ダーカー!》」
「ぐあっ!」
不意打ち。
突如、横からハヤトに闇の球体が襲いかかる。
なんとカレンと競り合って最中、右手を向けてハヤトに魔法を放ったのだ。
「よそ見とは余裕あんじゃん!」
「ぐっ!」
愛那の《オメガ》が弾き飛ばされる。
当然だった。
競り合いの途中に片手を離せば、誰であろうと力負けする。
丸腰となり、なんとか距離を取ろうと後方に飛ぶとーーー
カレンは《バスターソード》を地面に突き刺して両手を突き出した。
「《ぶっ飛べ、鋼の弾!アイアン・カノン》!」
「《シールド》!」
どーん!
完璧放たれた魔法を《シールド》で防御する。
完璧なタイミングだ。
もくもくと土煙が舞う中、愛那に少しだけ安堵の表情が浮かぶとーーカレンは突き刺した《バスターソード》を引き抜いた。
(マズいぞ…愛那…!)
―――土煙の中にカレンが駆け込んだ。
土煙で視界がわるくなっている愛那にカレンの姿は捉えられてない。
カレンも視界がわるくなるが、長い《バスターソード》であれば雑に振るだけでも命中する。
ベシンッ!
《バスターソード》の命中音が土煙の中から響き渡る。
スコアボードの数字が更新される。
【菅原愛那 HP15】
【夏目祐乃 HP65】
【✕✕カレン HP70】
【紫ハヤト HP60】
(愛那の負担がデカすぎる。ほとんど2対1だ)
愛那はたしかに強い。強くなった。
シンの自慢の弟子だ。
1対1ならカレンにも負けないだろうが、祐乃を守りながら2人を相手にするのは不可能だった。
ーーーしかし、愛那は諦めていない。
「もう十分よ…」
もくもくと舞っていた土煙が散ると、愛那は踵を返し、祐乃に駆け寄った。
「祐乃!行くわよ!」
「え…」
愛那が駆け寄ると同時ーーー魔力を貯めていた祐乃のマジックギアが『明るく』光り輝き始める。
「祐乃!手を伸ばして!」




