89話
タッグバトル。
お互いに二人一組で戦う魔法戦闘である。
1人に用意されたHPは100。
魔法や剣でダメージを負い、HPが0になったプレイヤーは『脱落』となり、マジックギアの《ホールドモード》が起動し、魔法で生成された縄が手足を拘束する。
当然、魔法も剣も使用不可となり、試合に復帰することはできない。
相手チーム2人のHPを0にすれば勝利。
実にシンプルなルールだ。
「頑張ってこいよ!お前ら!」
シンの声援と共に、愛那達はグラウンドの中心へと移動しようとした時だ――
「おい、審判はどこだよ」
HPを表示するスコアボードは置かれているが、肝心な審判がいない。
練習試合とはいえ、これでは怪我等やルール違反などの事態に対応ができない。
「…? あなたがやるんじゃないの?」
カレンは気だるそうに首を傾げる。
シンは周りを見渡すが、観客以外大人はいなかった。
「俺が審判やんの? まあ、いいけどよ。いつも、どうしてたんだ?」
「…生徒がやってる。顧問は忙しいとかで、ほぼ部活来ないし…」
「人手不足の波が、こんなところまで来てんのか」
シンはため息を吐き、頭を掻くとしぶしぶグラウンドの中央へ移動する。
2人組が対戦相手と対峙するように立つと、シンは腕を組んだ。
「洛咲中学と明丘学院の試合を始める。ルールはタッグバトル。相手2人のHPを0にしたら勝利だ。あとは――」
シンの試合前のルール説明、スコアボードに不具合がないかの確認を行う。
愛那、カレン、ハヤトの3人はやる気に満ちているが――ただ1人、祐乃は不安げな表情を浮かべていた。
しかし、ここまで来たら、もう誰にも止められない。
「――試合開始だ」
わー!わー!
わー!わー!
シンの合図と共に観客たちの声援が、学校中に響き渡った。




