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落第生部活指導員と現代魔法スポーツ  作者: たなお
2章 タッグバトル編
84/93

84話

 祐乃の母親が部室を去り、シンは「ふーっ」と息を吐くと、パイプ椅子に勢いよく座りこんだ。


「…あのクソバアア…祐乃を連れていきやがった…今日が最後の練習日だってんのに…」


 シンはイライラを抑えようと腕を組む。

 これまで会ったことがない苦手なタイプとの会話に気疲れしてしまったようだ。


「コーチ、お疲れ様です」


 シンの疲労を察して、愛那が労いの言葉をかける。

 ただし、怒りを感じていたのはシンだけではなく、彼女も同じようだった。


「あたし知りませんでした…祐乃のお母さんがあんな酷い人だったなんて…」


 愛那は顔を歪ませると自分の片腕を掴む。

 自身の無知を恥じているようだった。


「あたし…きっと祐乃のために何かしてあげれたはずなのに…」


 愛那が歯をギッと鳴らす。前髪で顔が隠れて見えない。

 しかし、悔しさだけは顔を見なくても伝わった。


「明日…どうすっかな…」


 明日行われる明丘学園との試合。

 これで良い結果を出し、部活指導員の必要性を教育委員会に認めてもらう必要がある。


――もし惨めな結果に終われば、シンの部活指導員としての活動は終わるだろう。


「愛那、明日の試合はお前にかかってるぞ」

「は、はい…けれど…例え明日の試合に勝っても祐乃は…」


 愛那は口をつぐむ。

 部活指導員存続と祐乃の退部は別問題だ。

 母親の温情で明日の試合は出場できるだけである。


「…多分、祐乃は辞めさせられるだろうな」


「…祐乃もコーチもいなくなるかもしれないんですね…嫌ですよ、あたし…」

「愛那…」


 愛那から小さな涙が一粒落ちる。堪えようとしているのだろう。

 けれど感情は抑えきれず――


「あたし、楽しく魔法で戦いたいだけなんです…!なんでこんな苦しい思いをしなきゃいけないんですか…!あたしのせいなんでしょうか…」


 ぽたぽたと涙が零れ落ちた。

 シンには『あたしのせい』という言葉の意図は汲み取れない。

 部活崩壊のキッカケのことか、長い付き合いの祐乃の苦労に気付けなかったことか…わからない。

 しかし、どうであれシンの回答は変わらない。 


「はんっ!中二のガキが驕るんじゃねえよ」

「けど…あたしにできたことあると思うんです…友人として…責任を感じるんです…」


 腕を組みながら、足に力を入れてパイプ椅子を勢いでクルリと回す。

 キィと不快な音を鳴らし、愛那の方向を向き、じっと顔を見つめた。


「お前には何の責任もねーよ。ガキが責任感じるな。責任を感じるべきなのは、お前じゃなくて大人なんだよ」

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