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落第生部活指導員と現代魔法スポーツ  作者: たなお
2章 タッグバトル編
83/93

83話

「あなたは…?」

「祐乃の友達をしてます。菅原愛那です!」

「そう」


 そっけない返事。

 祐乃の母親は、自己紹介をした愛那を下目に見るような態度だった。

 尋ねられたから名前を名乗ったのに、興味なさそうな返事をされ、愛那はムッとする。


(だいの大人が中学生になんて態度取ってんだッ!?)


 失礼極まりない大人の姿にシンは驚愕する。

 これまでの人生で、これほど横柄な大人を見たことがなかったからだ。

 こんなヤツが親なのかと、シンはただ驚くしかなかった。 

 

「あなたがこの部活の顧問の方?」

「はい、そうですね」


 尋ねられ、シンは礼儀として返事をする。

 祐乃の母親は、何故かさげすんだような眼でシンを見ていた。


「先ほど申した通りです。祐乃の将来を想い、退部させたいと」

「それは祐乃の意思ですか?」

「そうです」


 キッパリと言い切られ、シンは祐乃の顔を伺った。


「・・・・・」


 無言だった。

 俯き震えており、母親に怯えているのがシンにも伝わる。

 シンにはわからないが、おそらく今まで母親に何かされたのだろう。


 暴言か、暴力か…それはシンにはわからない。

 けれど無言を貫くのは、祐乃なりの抵抗なのだとシンは感じ取った。


「部活より勉強を頑張りなさい。いいわね、祐乃」

「・・・・・」


 苦しそうに無言を貫く祐乃の姿を見た瑠偉は、視線を下に動かし、苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。

 教員として祐乃を守りたいが、どう動けばよいのかわからないようだった。

 勝手な発言をすれば、祐乃をさらに苦しませる結果に繋がるからだ。


 シンや瑠偉。

 成人した大人が対応に悩み、口籠っている中、愛那が話を切り出した。


「今、祐乃に抜けられると困ります。明日、試合があるんです!」


 愛那は焦り、早口で事情を話す。

 事実、マジッカ―部には部員が2人しかおらず、替えが効かない。

 祐乃に抜けられるとタッグバトルは行えなかった。


「お母様、先方にご迷惑がかかりますので…いきなり部活を辞めるというのは、考え直されませんか?」

「…わかりました」


 瑠偉の言葉に、祐乃の母親も納得したらしい。

 しかし諦めきれていないのか、祐乃をギッと鋭く睨む。


「自分の将来のためにも、ちゃんと考えるのよ。いいわね、祐乃」

「・・・・・」


 またも無言。

 祐乃の痛々しい姿に、見ているこちらが苦しくなる。

 

「あなたッ!ちゃんと人の話を聞いてるのッ!」

「ご、ごめんなさい…」


 祐乃の態度に腹を立て、母親が怒鳴りつける。

 あまりの怒声に部室にいる全員が、驚き肩を震わせた。

 恐怖のせいか、祐乃の瞳に大粒の涙が零れ落ちた。


――ダメだ、見てられない!


「愛那、明日は明丘学院にどうやって行くよ?」

「…え?どうしたんですか…突然?」


 唐突過ぎる話題に切り替えに愛那は、一瞬ぽかんとするが、すぐにシンの意図を汲み取り、話題に乗っかった。

 場の空気を変えるため、シンはわざと全く関係ない話を始めたのだ。


「あたしはバスで向かう予定です」

「なら俺もそうすっかな。一緒に行こうぜ」

「はい、よろしくお願いします」 


「祐乃、お前はどうやって行く?」

「ボ、ボクは…」


 シンの問いに祐乃は言葉を詰まらせ―――


「祐乃の送り迎えは、私が車でします」


 正直、目障りだった。

 シンは来ないで欲しいと思ったが…

 

 部活ために、親が子どもを現地まで運ぶのは、よくあることである。

 そのため、シンは「そうですか」と答えるしかなかった。


「試合が終わったらすぐ帰るわ、いいわね祐乃」


 母親の発言に祐乃がガチリと固まった。

――母親が明丘学院まで送り迎えをする。


 それはつまり『試合を母親が見に来る』ということだったからだ。

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