71話
「部員をよく見ているな。他の指導員たちの見本になってくれ」
シンの洞察力に瑠偉は感心した。
瑠偉は担任ゆえ、夏目祐乃とは多くの接点がある。
そして似たタイプの生徒を何人も対応してきた。
まずは祐乃がどんな子であるかをシンに伝えることに決める。
シンが『成長するキッカケ』を与えてくれると確信したからだ。
身内とは言え、本来はあまり喋ってよい内容でもないが…
「夏目のようなタイプは今まで見てきた。おそらく、あの子は自分が邪魔な存在になることを恐れている。自分に自信を持っていない子の典型的なパターンだ」
多くの子ども達と向き合ってきた教員ゆえ、瑠偉は夏目祐乃という人間を把握できていた。
シンは納得したらしく首を縦に振って頷くと、次は頭を掻き始める。
「俺は…祐乃に何をしてあげれるんだろうな?」
「難しいことを言うじゃないか」
瑠偉は腕を組んで目を瞑る。
シンへのアドバイスは1つしかないようだ。
「お前は、夏目のことをどのくらいわかっているんだ?」
「どのくらいか…?そう言われると俺、祐乃のこと全然知らねーな」
「なら簡単だ。もっと夏目と会話し、共に過ごす時間を作るんだ。シンが求める答えは、それで見つかるはずだ」
シンは難しそうな表情を浮かべ、頭を掻く。
――自分は何をすべきか。
それを必死に考えているのだ。
そして1つの案が思い浮かぶと同時にスマホを取り出し、LINEを起動する。
「よし思いついたぜ。俺が祐乃のためにやるべきことが!」
「頼もしいな」
「俺は俺を越えてくれるヤツを探してるんでね。部員のために全力くらい出すさ」
シンは腕を組み、ドヤ顔をする。
瑠偉は安心したようで、椅子に座るとリモコンのスイッチを押し、テレビをつけた。
「もう用は済んだだろ?せっかくの休日だ。ゆっくりさせてくれ」
「いや、もう1つあるんだけど?」
「まだあるのか?手短に済ませてくれよ」
「ああ、それは大丈夫だ。姉貴がうんと頷いてくれたら一瞬で終わる」
頷いたら一瞬で終わる。
その言葉に瑠偉の脳内に嫌な予感がよぎり、顔が歪む。
シンは両手を合わせて頬にあてると、可愛く―――
「―――金貸して♡」
「貴様と言うヤツはッ!カッコいい姿を見せた瞬間にこれかああああああああ――――ッ!!!」
「ちょ、ちょっと!暴力反対!暴力反対!話を聞いてくれええええええええ!!」




