70話
――時間を少し遡る。
二宮家のリビングに設置された時計は8時を指していた。
シンは椅子に座り腕を組んで、姉の瑠偉の隣で、「うんうん」唸っていた。
姉が面倒臭そうな表情をする。
明らかに構って欲しいアピールだ。
無視を決め込めばいいものを、瑠偉は弟に誰よりもあまかった。
ため息こそ吐くが放置せず、話しかける。
「どうしたのだ?」
「困ってんだよ~、俺の悩みを聞いてくれよ姉貴~」
「金以外の悩みなら聞いてやる」
「なんだそりゃ?まるで俺がいつも金をせびってるみたいじゃねーか」
「せびってるだろがッ!」
瑠偉は噛みつかんと言わんばかりの勢いでシンを怒鳴る。
しかしシンは、その程度で怯むような神経は持ち合わせてはいない。
「――んで、ちょっと真面目な相談なんだけどよ」
ふざけた表情から一変。
シンが真面目な表情へ変わる。
「姉貴、祐乃の担任だろ。あいつのことで相談があってな」
「ほお…夏目か」
瑠偉の問いにシンは、わざとらしい困った顔をすると首を横に振った。
「祐乃のことで困ってんだよ。あいつさ、マジッカ―の練習をひたすら避けるんだよ。俺が誘っても『ボクより愛那ちゃんを優先してあげて』なんて言うんだぜー」
「やはりそうか…」
思い当たる節があるらしく、瑠偉はため息を吐いて腕を組む。
「次の試合はタッグバトルだ。祐乃の力が必要になる。休日が明けたら祐乃を鍛えたい」
――タッグバトル。
それは2対2で戦う特殊ルールである。
相手2人のHPを0にすれば勝利。
ルールは至ってシンプルだ。
しかし連携は必須。
息を合わせ連携を取ることができれば試合は優位になる。
――しかしその反面、連携が取れないと味方の魔法が当たり、敗北する。
マジッカ―部は2名。
祐乃以外の選択肢はない。
「土曜に試合だったな。そんな急ピッチで大丈夫か?」
「俺を誰だと思ってんだ?ザコを短期間で鍛え上げて、県代表戦を勝ち抜かせたんだぜ」
シンは腕を組み、にやりと笑う。
自信に満ちた表情を見て、瑠偉は安心するような表情を浮かべた。
「…流石だな、シン。だが言葉は選べ」
「わりーな。姉貴にセリフ選びの教育は受けてないんでね」
「そうだったな。近いうちに教育してやろう」
以前に比べ、前向きになった弟の姿をみて、瑠偉は安心した表情を浮かべる。
「なあ姉貴。祐乃は何か怖がってるよな?」
「やはりシンも気付いたか…」
「最初は『やる気がないから練習に参加しないのか?』と思ったが、最近違うと気付いたんだよな」




