68話 ※祐乃視点
――それからだった。
愛那ちゃんは段々と病んでいった。
がむしゃらに魔法を打って、動画を見て強い選手の真似をしたり…色々やっていた。
何をすれば強くなれるかわからないのに、強さを求めて…心を壊してしまった。
「くぅぅぅぅッ! あたしは強くなるよッ! 強くならないと、あのお姉さんにもう一度会えないッ!」
裏庭の木に魔法を放つ愛那ちゃんは、毎日のように苦しそうな顔をしていた。
――正直、楽しくなさそうだった。
見ているボクがつらかった。
愛那ちゃんの心の余裕は日に日に消えていく。
前に比べて、性格が歪み始めた気がする。
日に日に強い言葉が増えていく。
練習をサボるボクも…何度か強い言葉を言われた。
けど…愛那ちゃんのことが好きだし…愛那ちゃんが苦しんでいることをボクは知っていた。
だからボクは何も気にしていなかった。
ある日、ボクは愛那ちゃんと一緒に部室に向かった。
「愛那ちゃん、今日も部活楽しみだね~えへへ」
「何笑ってんのよ? ちゃんと真面目にやりなさいよね」
そんな他愛のない会話をしながら、部室のドアを開けた時だった――
部員の1人が不良グループに袋叩きにあっていた。
原因はなんとなく、気に入らないことがあったらしい。
いわゆる八つ当たりである。
そんな現場を目撃した愛那ちゃんは当然、激怒した。
「何やってんのよッ!そんなこと止めなさいッ!」
「なにキレてんの?キショ」
「いじめなんてバカなことしないでッ!」
どれだけ病んでも、愛那ちゃんは心に正義を持っている。
いじめの現場なんて見逃すはずがない。
取り押さえようとして、部室内は乱闘になった。
「はぁ…はぁ…」
愛那ちゃんは全身アザだらけになり、不良連中を全員部室から追い出した。
いじめの被害者は乱闘騒動の最中に逃げ出しており、部室内はボクと愛那ちゃん――そして伊織ちゃん含めた部員が大勢いた。
「愛那ちゃん、怪我してるよ…大丈夫」
「気にしないで…はぁ…はぁ…」
荒れる息。
疲弊した愛那ちゃんは鋭い目で乱闘を傍観していた部員達を睨みつける。
「なんであたしが来るまでにイジメを止めなかったのよ!手遅れになった可能性だってあるのよッ‼」
愛那ちゃんは怒り、部員達は萎縮する。
伊織ちゃんは「ごめんなさい…怖くて…」と謝罪して泣き始めた。
他の部員達は「だって関係ないし…」「うちら悪くないし…」と言い訳を初めて――
――遂に愛那ちゃんは爆発した。
愛那ちゃんが説教をすると、部員達は言い返す。
言葉は徐々にエスカレートしていき、耳を塞ぎたくなるような暴言が飛び交う。
ボクと伊織ちゃんは部室の隅で震えて傍観するしかなかった。
この騒動が原因で洛咲中学校のマジッカ―部は崩壊した。
愛那ちゃんとボク以外は全員辞めた。
そこそこ仲良しだった伊織ちゃんも辞めちゃって…転校して…ボクは凹んだ。
マジッカ―部が崩壊してから、愛那ちゃんが病んでいくスピードが加速した。
なのに…ボクは何もしてあげれない…ただ隣にいてあげることしかできなかった。
苦しんでいるのはわかっている――けど、何もしてあげれない。
そんな時、コーチがやってきた。




