66話
シンは女性陣に冷ややかな目で見られ、ハヤトとの抱擁を止めて、やれやれと首を横に振る。
「たく、女は俺達の友情を理解してくれなくて困るぜ。なあハヤト?」
「アニキ。流石のオレでもカレンをバカにしたらキレるっすよ」
「お前、手のひら返すの早すぎねーか?」
ハヤトに不機嫌そうな表情をされ、シンは呆れた。
どんな状況であれ、カレンの味方らしい。
そんなカレンは、隣の愛那と親しそうに会話を始める。
出会ったばかりというのに、もう友達になったようだ。
シンは2人の相性の良さに関心するしかなかった。
「…愛那。来週の日曜さ…うちの学校、明丘学院に来れる?」
「もしかして試合の件かしら?」
「ん…そう」
カレンは小さく首を縦に振り頷くと、少しダルそうに腕を組んだ。
「…ただ学校の意向で、タッグバトルしようってなってさ」
「タッグバトル? 」
聞き耳を立てていたシンは、『タッグバトル』というあまり聞かない単語にピクリと反応する。
状況が呑み込めてきた。
――なぜカレンとハヤトがこの学校に来たのか。
「タッグバトルって…2対2のマジッカ―よね?」
「…そ」
事情を詳しく聞きたくなり、シンは2人の会話に割り込む。
「タッグバトルはメジャーなルールじゃねーぞ。なんでやるんだ?」
「……センセー達が試合風景を撮影して明丘の宣伝に使いたいんだって…テーマは『友情』だとかなんとか…だからタッグバトルがいいって……あたしも詳しく知んないけど」
実に学校の教員達らしい理由に、シンは呆れつつも納得する。
少子高齢化のため、どの学校も新入生確保のために宣伝に力を入れているとシンも耳にしたことがある。
特に明丘は、受験が必要な私立の学校だ。
来年以降の受験生獲得のために、宣伝に力を入れたいのだろう。
「タッグバトルか…どうすっかな」
シンは「…くそっ」と声を漏らすとバリバリと頭を掻く。
タッグバトルは連携が大事となる。そのため、練習がものを言うが――1週間しかない。
これは非常にまずい。
「おい、宣伝に使うってことは…写真や動画を撮るってことだよな?」
「…ん。そう聞いてる」
「学校のエラいヤツも見に来るのか?」
「…明丘以外の人も来るっぽい。他校のマジッカ―部コーチや監督…結構来るっぽいよ…」
合同練習に大勢の人が来るという情報を得た愛那は、少し困惑する。
「そ、それは緊張するわね」
「愛那…あんた…結構注目されてるからね。県代表戦を勝ち抜いてるし」
シンはここで姉の瑠偉が必死になって試合を受けて欲しいと言ってきた理由が理解した。
…ただの練習試合だと思っていたが大事だったらしい。
「タッグバトルはお前ら2人が出るのか?」
「そっすね。オレとカレンの華麗なコンビネーション見せてやりますよ!」
カレンはダルそうにそっぽを向くと、ポツリと呟く。
「ホントは副部長と組むつもりだったけど…断られた…」
「副部長だ?」
シンは腕を組みながら尋ねると、カレンは小さく息を吐いた。
「…多分、副部長はあたしより強い。けど…よく知んないけど…この学校…メッチャ嫌ってて…頑なに『絶対出ない』って…」
「なんでだよ?」
「…さあ?副部長の事情とか興味ないし」
カレンを目を瞑り、どうでもよさげな表情をすると首を少し傾けた。
「コーチ…何かやったんですか?」
「今の明丘の副部長とは面識ねーよ」
シンはちらりと視線を動かし、祐乃の顔をうかがう。
――真っ青。顔は引きつり、固まっていた。
「…でも洛咲中のマジッカ―部で戦えるのは愛那ちゃんしか…」
祐乃は怯えるように口を開く。
事情を知らないカレンは腕を組んで首を傾げた。
「…ん?あんたマジッカ―部じゃないの?」
「…そ、そうだけど…」
「じゃあ、あんた出てよ。来週予定ある感じ?」
「えっと…それは…」
もごもごとしており、嘘をつきたそうな表情だった。
しかし、愛那の前だからか、俯きながら苦しそうな表情で正直に口を開いた。
「ない…けど…」
「…なら良かった。来週、よろ」




