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落第生部活指導員と現代魔法スポーツ  作者: たなお
2章 タッグバトル編
65/74

65話

 シンの合図と共に愛那とカレンの魔力が散る。


「ほらお前ら、さっさと帰る準備するんだな。下校しやがれ」

「コーチ、もう少しだけ…」

「ダメなもんはダメだ。ガキはさっさと帰れ」


 シンに良い試合を中断され、愛那は泣きそうな顔になりながら両手を合わせて懇願する。

 しかし、シンは聞く耳を持たず却下した。

 

 中学生の安全のため、下校時間は帰さなければならないうえ――姉の瑠偉に怒られる。


「カレンだったか?今度はまた時間がある時に来るんだな」

「…ん。そうする」


 そう言ってカレンが気だるそうに腕を組むと――ドダドダドダッ!と騒がしく誰かがこちらへ向かってきた。


 カレンは誰が来たか察したらしく、わざとらしく「…げっ」と呟き嫌そうに顔を歪めた。


「カレン―――ッ!!探したぞおぉぉぉぉぉぉ―――ッ!!」

「ごふっ…」


 騒がしく向かってきた人物は勢いよくカレンの胸元に飛び込んだ。


「こんなところにいたんだな、カレンッ!オレと一緒に洛咲中に行く約束してたのにッ!1人で勝手に行くなよッ!寂しいだろッ!」


「…約束してないし。アンタが勝手に一緒行くって言ったんじゃん…」

「細かいこときにすんなよ。オレはカレンと一緒にいたいんだッ!」


 カレンに飛び込んだのは中肉中背の男の子。制服からして洛咲中の生徒ではない。

 おそらく雰囲気からしてカレンの同級生だろう。

 

「騒がしい野郎だな。いったいなんだよ?」

「おっす。オレ、(むらさき)ハヤトと言うっす。カレンの彼氏――うわああああああああ!!」


 言い終わる前にカレンのアッパーが決まり、ハヤトと名乗った人物は吹き飛んだ。

 カレンはマジックギアを装着しておらず、身体強化もされていないというのに、見事なアッパーである。

 

「この騒がしい野郎は誰だ?彼氏か?」

「…んなわけないじゃん。ただの幼馴染…いつも付きまとってくるメンドイやつ…」


「男女の幼馴染かよ。ひゅー青春だねー」


 シンは口笛を吹いてからかうが、カレンはただダルそうな表情をするだけだった。

 そんなカレンから目を逸らし、余所に視線を向けるとドダドダッと大きな足音がこちらに向かってきていた。

 凄い土煙である。 


「カレンんんんんんんんんんん―――ッ!!!!」


 騒がしい男ハヤトはカレンの腹部に抱き着く。

 カレンは「離せっ!」と言って抵抗するが全く離れない。


「すげーな。自分の恋心に正直すぎる野郎だぜ」


 シンは皮肉交じりにハヤトへ視線を向ける。

 そんなシンの言葉を聞いた騒がしい男は、カレンに抱き着きながら口を開いた。


「当然っすよ。こんな美人で強い幼馴染がいるんすよ。むしろ好きにならない方が異常者っす!」

「ふっ…なるほどな。けど、人前であまりするもんじゃねーぜ。ほらアイツら見てみろ」


 シンは親指で後ろにいる2人を指差した。

 愛那と祐乃はお互いとも顔を真っ赤にして両手で目を覆い「あわあわ…」言いながら、指の隙間からカレン達を見ていた。どうやらこういう場面に免疫がないようだ。

 中学生なら仕方ないことではあるが…


「…しゃーないっすね。オレも男っす。引き際はわきまえるよ」

「はあ…やっと離してくれた…熱っ…」


 ハヤトは名残惜しそうにカレンから離れると、シンの方を向いた。


「んでアンタ誰っすか?」

「俺は、この洛咲中学校のマジッカ―部の部活指導員をしてるナイスなイケメン日本男児だ。名前は二宮シンだぜ」


 シンは腕を組みながら、わざとらしいドヤ顔をする。

 普通の人なら呆れる態度であるが――ハヤトは普通ではなかった。


「コーチだったんすか!すげーッ!県代表戦を勝ち抜せた偉大な人じゃないっすかッ!!!!」

「はっはっはっ!もっと俺を褒めろ!!」

「いくらでも褒めるっすよ!ひゅー!ひゅー!」


 ハヤトは騒がしく両手をあげてシンを囃し立てる。

 そんな2人の姿を見て、カレンはため息をついた。


「はあ…相変わらずバカね…」

「そうね。あたしもそう思うわ」


 バカ丸出しの2人を見て、愛那とカレンが呆れたように肩を落とす。

 そんな冷たい様子を見て、ハヤトはシンの耳元に手のひらを近づけ、こそこそ話を始めた。


 しかし、声は大きくわざと聞こえるように喋る。


「見てくださいよ。いつもオレに対してツンケンしてんすよ?オレ、毎日カレンに大好きって言ってんのに冷たいと思わないっすか?たまにはお礼のキスくらい欲しいですよ」


「照れてんだよ。諦めずに一緒にいるんだ。いつかはお前のことを向いてくれるよ」


 シンはわざとらしく悲しむハヤトの肩をぽんと優しく叩き、励ます。

 背中を押され、ハヤトは両手の拳を握り締めて、感動の涙を流した。


「くぅぅぅぅ―――ッ‼ありがとうございます‼恋愛強者の方からそう言って頂けると自信持てるっす!!今度からアニキって呼んでいいっすかッ!?」

「どんどん呼べ‼こんなに俺を慕ってくれるヤツはお前が初めてだぜ‼」

「アニキッ!よろしくお願いしますッ!」


 ギュッ‼


 男同士の熱い抱擁が交わされる。

 すっかり蚊帳の外に追いやられた女3人は、あまりの仲の良さに呆れるしかなかった。


「だる…」

「あたし…男のノリがわかんないわ…」

「あはは…友情なのかもねー」

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