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落第生部活指導員と現代魔法スポーツ  作者: たなお
1章 マジッカーフロンティア県代表戦編
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6話 魔法が使えない魔法使いは役立たず

「今年で二十歳(はたち)になる男が、情けないことを言うな!」


「だって、だって! 働きたくないんだもん! 俺は引きこもって、アニメ観ながらゴロゴロする使命があるんだよ!」


穀潰(ごくつぶ)しが! 推薦(すいせん)してやった姉の顔に泥を塗るか!?」

「推薦しやがったせいで、面接が免除されちまったじゃねえか、クソ姉貴! 面接官の顔に屁をこいて、落ちる計画を台無しにしやがって!」

「我が弟ながら、救いようのないクズだな! 潔く働け!」


「大体、姉貴が金を恵んでくれさえすれば――」


 男女の珍妙(ちんみょう)なやり取りを傍観(ぼうかん)していた愛那(あいな)(ほお)がこわばる。

 ロクでなしの見知らない男はともかく、説教をしている女が、担任教師の二宮瑠偉(にのみやるい)となれば、さすがの愛那も反応に困る。


 可能ならば、知らない顔をして、目の前を過ぎ去りたい愛那だが、揉めている場所が厄介だった。


「部室前で揉めないでよ……」


 マジッカ―は、運動部。ユニフォームに着替えるために、部室は必要不可欠だ。


「面白そうなことが起きてる! ボク達も混ぜてもらおうよ!」

「やめなさいよ。明らかに、あの男は、人としてヤバいわよ」


 関わりたくないと思いつつも、愛那は時間が()しい。

 愛那は、苦々(にがにが)しい顔をしながらも、足を進めた。


「先生! なにをしてるの?」

夏目(なつめ)か。菅原(すがわら)もいるようだな。よかった、お前達に伝えることがある」


 部室前に見知らぬ男がいた時点で、愛那は嫌な予感がしていた。

 多分、この男は――だから、反対だったんだ。部活指導員なんて。


「ほら、この歳でメッシュを入れて、美人アピールしてる生徒が、変な顔してるぜ。姉貴が、ワガママ言うから、呆れてんじゃねーのか?」

「なんで、私が悪人になっている! シンが、だだをこねるのを止めないからだろッ!」

「痛い、痛いッ! アイアンクローは、頭蓋骨(ずがいこつ)陥没(かんぼつ)するッ!」


 不真面目な男の態度に、愛那は、深い溜息を吐いた。

 二宮瑠偉の説得?あって、珍妙な男の暴走は、収まりをつけた。

 愛那と祐乃は、無事に部室に入ることができたが、珍妙な男はと言うと――


「夏目と言ったか。スゲー、髪がサラサラだな。ほっぺたもプニプニ! これが中学生かよ! イケナイ趣味に目覚めそうだぜ!」


 頭二つぶんの背丈差がある祐乃をセクハラしていた。


「うにー」

「これがロリッ娘の魅力か。枯れる寸前の姉貴とは、大違い――ぐはっ!」

「それ以上、言ってみろ。チ○コを縦に裂くぞ」


「ひ、ひえええええええええ! 俺の息子を怖がらせるなッ!」

「どうせ、シンは童貞だろ。使い道のない棒は、今のうちに去勢しておいた方が、安全かもしれん」

「マジな目をして、こえーこと言うなッ! それに、童貞とは失礼だなッ!」


 シンが、両手で股間を押さえて怯える隙に、祐乃は愛那の隣に移動した。


「ねーねー。愛那ちゃん、童貞ってなに?」

「魔法が使えない魔法使いのことよ」

「役立たずってこと?」

「あー! 女子中学生に有ること無いこと言われたぜ。傷付いたから、精神療養のために早退しまーす」


 口を三角にしたシンは、わざとらしく両手で顔を押さえて、泣いたフリをすると、部室の扉に手をかけた。


「どこに行くつもりだ、シン?」

「姉貴、手を離せよ。魔法が使えない魔法使いなんて言われたせいで、俺のかよわい現代っ子メンタルが崩壊寸前なんだぜ。また明日から、引きこもり生活するから、宜し――」

 

 バーンッ!

 

 人の頭を叩いたと思えないような暴音が部室に響き渡る。

 頭を抑えながら床で悶絶する男を見て、埒が明かないと判断した愛那は、本題に入ることにした。


「先生。その不審者は、何者ですか?」

「説明が遅れたな。こいつは私の弟、二宮シンだ。今日から、マジッカ―部の部活指導員になるから、仲良くしてやってくれ」


「仲良くしなくていいぞ」

「話の腰を折るなッ!」


 痛みがひいて、颯爽と復活したシン。

 ウザい言動、鼻につく口調。


 ――この男は、愛那がもっとも苦手とするタイプだった。


「そんな顔をするな、菅原。普段のシンはダメ人間だが、マジッカ―の腕は、人一倍だ」

「……」


 信用できない。


 これが菅原愛那の率直な感想だ。まだまだ山のように言いたいことがある。

 しかし、担任の目もあるので、愛那はグッと堪えた。


(サイアク……)


 目標の足かせになりえる存在に、愛那は一抹の不安を覚えた。

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