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落第生部活指導員と現代魔法スポーツ  作者: たなお
1章 マジッカーフロンティア県代表戦編
39/73

39話 

「改善箇所は見つかったか?」

「顔から火が出そう……。あたしって、ここまで酷かったんですね……」


「随分と凹んでいるな。今日の部活は終了か?」

「そんなわけないですッ! あたしは、追いつきたい人がいるんですッ!」

「気合いバッチリだな。さあ、休憩は終わりだ。練習に戻るぜ」



 ◆ ◆ ◆



 ――翌日。


「やった! 背後から攻撃を防げたわ――」

「その代わり、正面が甘くなってるぜ。《ソード》をくらえ」



 ビーッ


「あうッ! またHPが尽きたわ! もう一度!」

「まずは休憩だ。祐乃に撮影してもらった映像を確認するぞ」



 ◆ ◆ ◆



 ――その次の日。


「《唸れ、暗黒ダーカー》」

「前よりは、速くなってるな。けど、当たらないと意味はないぜ」


 そう言って、シンは一気に接近すると、愛那の手首を掴んで空に向ける。放たれた魔法は、虚しく空中で弾けた。


「はい、隙まみれ。《ソード》をくらえ」

「あうッ!」


 ビーッ


「くぅぅぅぅぅッ! また負けた!」

「全てがうまくいくことはない。失敗した場合のリカバリープランも練っておくんだな。さっきの正解の動きは――」


 シンのアドバイスを一語一句聞き逃したくない愛那は、聞き入りながら力強く頷くのだった。



 ◆ ◆ ◆



 ――そして、次の日。


「くぅぅぅぅぅぅぅッ!  悔しいわッ! 今日こそは、コーチのHPを削れると思ったのにッ!」

「俺は強いぜ。そう易々と、ヘマはしない」


 悔しそうに顔を歪めていた愛那は、ふーっと息を吐くと、口元に手を当てた。


「……コーチの《ソード》が怖くて、ずっと《シールド》を張ってしまったわ……。防戦では勝てるわけない……。それなら……。でも、今日、撮影した映像の改善箇所は……。ぶつぶつ……」

「熱心なことで」


 小声で呟きながら、自身を見返す愛那を見て、シンは、どこか安心感を覚える。

 すぐに良い方向へと舵を切れた愛那が、羨ましくて、少し嫉ましかった。しかし、不快ではない。

 むしろ、誇らしかった。


「隙は少なくなった。お前は成長している」

「そ、そうですか。えへへ」


 シンに褒められ、愛那は照れくさそうに頬を掻く。

 不覚にも可愛いと思えてしまい、余計な考えを払うために、シンは首を振った。


「だが、それは《ソード》による攻撃においてだ。次は、魔法の頻度を上げて、攻撃する」

「は、はいッ!」


「それと、今から俺は、戦い方も変えるぜ。マジッカ―フロンティアは、多くのヤツを相手にするからな。俺が今まで戦ってきたヤツの動きを真似をしてやる。大会前の参考にしておけ」

「わかりました!」


 疲労が溜まっているというのに、愛那は立ち上がる。目は輝いており、一心にシンを見つめていた。


(燃えすぎだぜ)


 眩しすぎる。シンの瞳が焼けるほどに、今の愛那は眩しすぎた。

 しかし、沸き立つ。

 シンは、口元を緩めて、フッと笑った。


(面白いッ! これが教えるということかッ!)


 14という若さ故か。ここ数日、愛那の成長は著しい。

 注意した箇所の改善、伸ばす箇所の指摘と様々なことを教えてきた。その結果、今の愛那は先日とは、まるで別人だ。

 だが、当の本人は、強敵のシンしか相手にしてないせいで、自身の実力に無自覚である。


(何故、俺は一年も気付かなかったんだろうな。俺を倒せるヤツがいないなら、そんなのは、自分で育てればよかったんだ)


 聖華に負けたかった願いも、今では叶うことがない。

 しかし、聖華を追う愛那にならば、負けることも可能だ。

 愛那とのマジッカ―で全てを出し切って、悔いがないほど、楽しんだその先で負ける。


 ――わるくない。


 愛那には才能がある。

 才能と言っても、腕のことではない。

 愛那は格段に強くなったとはいえ、まだまだ素人に毛が生えたレベルである。


 しかし、愛那は、誰よりも優れている箇所があった。

 それが熱意だ。


 真っ直ぐだ。ただひたすらに前を見ている。

 この調子で、毎日教えていけば、きっと誰よりも強くなれる――と思ったとき、シンは、あることに気付いた。


「そういや、明日は土曜か」

「そうですね。部活も休みになってしまいます……」


 肩をガクッと落として落ち込む愛那を見て、シンは顎に手を当てる。


「ちょっとトイレに行ってくるぜ。大きい方だから遅くなるぜ」

「まったくもう…品がないんだから」

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