33話
愛那が風呂を利用している間に、瑠偉が持ってきたタオルを受け取ると、乱暴に頭部の水分を落とす。
ついでに、ずぶ濡れの上着も脱いで、脱衣所へと持っていく。
「さむっ! 男は不便だよな、同じ人間だってのに、レディーファーストとか、意味わからん理論で、男を差別するんだ。男女平等とか嘘じゃねーか。ぶつぶつ……」
愚痴を溢しながら、シンは、ガララララと音がなる引き戸の扉をあけて、衣類を洗濯機に投げ入れる。
一応、ズボンだけは履いているが、上半身は裸。
「水道水と雨水は、同じ水なのに、何故こんなにも違うんだ」
蛇口を捻り、バシャバシャと顔を洗うシンは、ふと、後ろが気になった。
浴室の扉から、スラッと伸びる肢体の影が映っている。
「シルエットだけだが……、意外といいボディラインしてるじゃねーか」
どうやらシャワーを浴びているようだ。
さっさと湯船に浸かればいいのに、と思ったシンだが、愛那の腕のことを思い出す。
(怪我が酷い場合、湯舟に入ること禁止されることあるもんな。傷跡から、バイ菌入るとかなんとかで)
納得しながら、シンは洗った顔をタオルで拭く。
そのとき――
「――えっ」
浴室の扉が開いた。
瑞々しくも艶やかな白肌。少女特有の整った身体のライン。
思わず、シンの喉がごくりとなる。
「な、な、な……」
「随分早いな。まあ、シャワーだけなら、こんなもんか」
「あ、あう、あう……」
「部室で、俺の前で惜しみなく着替えてたクセに、何を今更恥ずかしがってんだよ」
一瞬、とまどったが、シンは相変わらず、ふてぶてしかった。
頬を赤らめて、硬直する愛那に、デリカシーに欠けた発言を開始する。
「しかし、まあ……貧相な胸部だな。女は、中学生で成長が止まるんだってよ。今のうちに成長しとかねーと、一生ちっぱい――」
「うるさい、出て行って――ッ!」
ぱこーん
「ごは!」
洗面器が爽快な音をたてて、シンの額に衝突した。
~ ~ ~
「私、言ったよな? 生徒には手を出すなと。私が菅原のご両親に電話している間に、なんということを――ッ!」
「誤解だぜ、姉貴? 手は出してねえよ。若い女の肌を目に焼き付けただけだぜ」
リビングに連れて行かれ、瑠偉に正座させられるシン。
説教が始まったかと思えば、シンは当然のように開き直った。
「潔いところは、褒めてやる。さて、どう罰するか……。よし、包丁にしよう」
「だから冗談でもやめろって! 目がマジなんだよ!」
「冗談ではないから、目がマジになるんだ」
「すみませんでしたッ!」
見事な土下座が繰り広げられる。
「コーチの態度は、問題ありましたが……あれは、事故です……」
シンと瑠偉のやり取りを見た愛那が、割って入る。
まさかのフォローに、シンは頭をあげると、意気揚々と立ち上がる。
「ほーら、当人がそう言ってるんだぜ! 謝れよ! 怯えて縮こまった俺の息子に、ごめんなさいって謝れよ! なあ、姉貴ッ!」
自分の股間を指す下品な姿。
ドンッと、テーブルに瑠偉の拳が落とされた。
「……シンの息子が消えれば謝罪は不要だな。待ってろ、包丁を持ってくる」
「このままじゃ風邪ひいちまうぜ! 風呂入ってきまーす!」




